政府「骨太の方針2023」策定に向けた検討が大詰めを迎えている。6月16日の閣議決定を前に、来週中頃に開く経済財政諮問会議で、政府が原案を示す見込みだ。自民党厚生労働族からはどんな意見が出ているのか。【本根優】
5月29日の自民党政調全体会議。厚労部会長の田畑裕明氏は診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の24年度トリプル改定で「人材確保やサービスの質確保の観点から大幅な増額が必要」と訴えた。
骨太の骨子案には「持続可能な社会保障制度の構築」と明記されたことを受け「国民皆保険の堅持、健康寿命延伸のため、社会保障制度を前に進める改革になるようお願いしたい」とも要望した。
一方で「持続可能な社会保障制度とあるが、持続可能になっていない」と訴えたのは、複数回大臣経験のある幹部議員だ。
「上市されない新薬が増えている。日本で売っても損をするから。結果として患者が使えない。薬価を抑えてきた結果だ」と指摘。「後発品中心に欠品が相次ぎ、1100品目も不採算品再算定で値段を上げざるをえない状況だ」と説明した。
さらに「大学病院が大変で、団体の試算では働き方改革を前に950億円足りない。文部科学省にも知恵を出してもらわないといけない。今まで勤務医の献身的な働きに頼って、給料を払ってなかったことが問題」と主張した。
参院のベテラン議員は「医療DXのイニシャルコストは投資と考えてほしい」と求めた。このほか、参院の中堅議員は「診療報酬を上げることが必要。薬価や医療機器も危機的。画期的な技術を正当に評価できない国はイノベーションを語る資格がない」と持論を述べた。
厚労族以外からも「診療報酬の外枠でカットするようなことがないように、きちんと別枠で措置を」とクギを刺す声も上がった。
もっとも、政府は予算編成の最大の目玉である少子化対策に関する財源確保策を「年末までに結論を出す」と先送りしたばかり。社会保障費の削減も視野に入れており、骨太の段階で、トリプル改定での「増額」を確約するような具体的な文言が入る可能性はきわめて低い。
.