誰もが直面するであろう認知症。厳しい財政状況のなか、認知症への対応に多額の費用を掛けていては破綻する。そんな思惑が込められた政府の「認知症施策推進大綱」。地域のボランティアなどを活用し(共生)、自己責任(予防)で解決すべきという施策だが、医療・介護関係者は「専門職の役割を重視すべき」と危機感を募らせる。【新井裕充】
長生きするほど確率が高まる認知症。有病率は85~89歳で44.3%、90歳以上では64.2%という推計もある。増え続ける医療・介護費を抑制するため、「いずれ認知症の大部分が保険から外されて、『自助』や『共助』の役割が重視されていくのではないか」との声もある。こうしたなか、政府は6月18日の関係閣僚会議で「認知症施策推進大綱」を決定した。
冒頭の「基本的考え方」では、「認知症はだれもがなりうる」「多くの人にとって身近なもの」とし、「『共生』と『予防』を車の両輪として施策を推進していく」と宣言している。
大綱が発表された2日後、介護保険制度の見直しに向けて審議している厚生労働省の社会保障審議会(社保審)の介護保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)が開かれ、今回の大綱がテーマに挙がった。
「支援チームの有効な活用は難しい」「見直すべき」の声
この会議でやり玉に上がったのは、認知症が疑われる人を医療や介護サービスにつなげる「認知症初期集中支援チーム」。すでに多くの自治体に設置されているようだが、その存在感は薄いらしい。
介護関係者は「(認知症の)早期診断のために、この支援チームの有効な活用は難しい」と述べ、かかりつけ医の役割に期待を込めた。
これに日本医師会の幹部は「支援チームの真の対象者や役割など、アウトカム評価を行って見直しすることが必要」と同調。介護関係者からも「専門職の認知症ケアの質を高めることが大変重要」との声が上がり、専門職の役割を強調する大合唱となった。
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