介護医療院への転換、「保険者の切なる願い」 健保連の松本氏

松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)_20190703入院分科会

 健康保険組合連合会(健保連)参与の松本義幸氏は7月3日、長期入院の患者が多い療養病棟について「転換を進めていただければというのが保険者の切なる願い」と述べ、看護師らの配置数が少ない療養病棟は介護医療院に早く移行すべきだと主張した。調査によると、介護医療院への転換を希望している施設は約6割だったが、「現状維持」も4割近くに上った。【新井裕充】

 厚生労働省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の2019年度第4回会合を開き、療養病棟入院基本料などを主なテーマに挙げた。

 厚労省は同日の分科会に、入院医療に関する18年度調査の結果を分析した資料を提示。医療処置などで分類された「医療区分」について「更なる分析を進めてはどうか」などと意見を求めたが、「『更なる分析』というよりも決断を促していただきたい」と述べた。

20190703入院分科会2

 これに対し、療養病床を持つ病院が会員の多くを占める団体の幹部は、自治体の対応などを問題視。医療療養病床から介護医療院への転換によって、自治体の介護保険財政が圧迫されるために「制限かけられている。『ちょっと待て』と言っている行政が多い」と反論した。

 質疑の模様は以下のとおり。

[厚労省保険局医療課・木下栄作課長補佐]
 事務局でございます。お手元の資料、「診調組 入ー1」をお開きください。まず、こちらの資料におきまして、療養病棟入院基本料の

 ・施設の現況
 ・入院患者の現況(医療区分等)
 ・在宅復帰機能強化加算等
 ・その他

 2つ目としまして、障害者施設等入院基本料につきまして、
 先般の(平成30年度)入院(医療等の)調査等の概況からまとめた結果につきましてご報告いたします。

 (中略)

 今、ご説明してまいりましたそれぞれの現状と課題というのを64枚目にまとめておりまして、論点、2つ挙げさせていただいております。

064_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

 医療区分につきましては、各項目の該当割合や、医療区分のこれまでの見直しによる変化等を踏まえて、さらなる分析を進めてはどうか。2つ目といたしまして、療養病棟の在宅の復帰機能について、復帰率の分布、患者の在院日数等を踏まえ、どのように考えるか、

 ということを論点として挙げさせていただいております。説明は以上になります。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 はい、ありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして、一括してご議論いただきたいと思います。ご質問、ご意見等がございましたら、お願いいたします。

 松本委員、どうぞ。
.
[松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)]
 ありがとうございます。健保連の松本です。

 論点からはちょっとずれるかもしれませんけれども、「療養病棟入院料1」の関係でございますけれども、スライドの14(療養病棟入院料経過措置1を届出ている病棟の今後の届出の意向)で示されておりますけれども、

014_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

 「経過措置1」を届けている病棟のうち、約5割が介護医療院等への転換等に(意向を)お示しされている。一方、現状維持も3割強という状況でございます。

 医療療養病床から介護医療院への転換に総量規制があるとは聞いておりませんし、また、介護医療院への転換の際は、転換前後におけるサービスの変更内容を利用者やその家族、地域住民等に丁寧に説明する等の取り組みについて、1年間に限りですけれども、算定可能な加算ということも32年度末まで設けられていますので、

 このような加算も活用しながら、経過措置を届けている病棟におきましては、転換を進めていただければというのが保険者の切なる願いでございます。

 この部分につきましては、(療養病床の削減が)かなり延長、延長ということで来ている部分がありますので、今回の経過措置のところで踏ん切ってほしいということで、(委員ら、苦笑)

 (論点に示された)「さらなる分析(を進めてはどうか)」というよりかは、現場も大変ご苦労なさってると思いますけど、その方々に医療保険でなくて、介護保険のほうからお支払いしますという制度へ移っていただければという、そういう切なる決断を、お願いでございます。決断を促していただきたいというのが一番でございます。以上です。ありがとうございます。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 はい、ありがとうございました。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 ちょっとそれについて。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 はい、池端委員。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_20190703入院分科会 その点について、ちょっと、私なりの協会の議論を含めてお話ししたいと思います。

 松本委員おっしゃるとおりで、ただ、これまでの経過を見ると、まだ延びるんじゃないかと思っている節もあるというやに聞いてはいます。

 ただ、今回はもう、「たぶん5年後はもうないよ」ということは、盛んに、私たち協会としてもアナウンスさせてもらっているんですけども。

 だから、そうはいっても、少しずつこれから転換、最近ちょっとこう、スピードアップしている感はありますので、引き続き促していきたいと思います。

 ただ一方で、このことにちょっと制限かけられてるので、いわゆる行政側が、とりあえず介護療養型医療施設の転換を優先して、医療から来るっていうのが、行政の介護保険財政からすると、その分、持ち出しになって介護保険料が上がるということをかなり意識していて、そこを制限を、あるいは、「ちょっと待て」と言っている行政が多いということを聞いている。

 老人保健課でも、その話をさせていただいたんですけども、そこはもう少し高い目で見て、介護保険、医療保険、両方併せて見れば、当然、転換のほうがコストダウンになるはずなので、そこを見てほしいということを、やっぱり行政側も一体的に考えなきゃいけないんじゃないかということで、

 介護医療院のそういうセミナー等で、行政側に対しても、そういうセミナーをしなきゃいけないんじゃないかということを考えていますし、そういう流れもありますので、ぜひ、そのへんは共有してやっていければと思っています。

 (後略)

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