身寄りのない患者への対応、「相談窓口などの仕組みづくりを」 日病の相澤会長

相澤孝夫会長_20190702日病会見

 日本病院会(日病)の相澤孝夫会長は7月2日の定例記者会見で、身寄りのない患者について「個々の病院が個々に対応する困難さというのは非常にある」との認識を示した上で、「相談窓口や機関、仕組みなどをつくっていくことが極めて大事」と述べた。【新井裕充】

 この日の会見で示されたのは、「神奈川県内の病院における身元保証人等の状況」と題する調査結果。それによると、「身元保証人をつけることが出来ない人について、どのような対応をしていますか」との問いに対し、身元保証人がいない場合でも入院などを認めるとした回答が最も多かった。自由記載の回答欄には、未収金の発生リスクを懸念する声が多く寄せられている。

 日病によると、今回の調査は今年2月20日から3月末にかけて実施された。厚生労働省が2018年4月27日付で発出した「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」の通知を受け、病院が身元保証人等を求めている実態を把握することを目的に実施したという。

善意だけでは守れない人が増えている

20190702日病会見

 調査報告書の冒頭では、「身元保証のない入院で発生した様々なトラブルも増加が見込まれる」とした上で、「これまで以上に行政関係方面のフォローが求められている」と主張。「善意だけでは守れない人が増えているので、支え合う意味でも身元保証人等の関与や補完する仕組みは必要不可欠」と訴えている。

 本調査結果より、回答のあった病院の97%で身元保証人等を求めています。また、その理由は「支払の保証」だけではなく、「医療行為の同意」や「急変時の入退院手続」、「遺体遺品の引取」、「入院中の規則厳守の為」など様々な理由であることが分かりました。
 裏を返せば、それだけ身元保証人等がいない場合は、病院経営及び医療行為に関してリスクが大きいといえます。

 一方、身元保証人等をつけることが出来ない場合でも、後見人等の検討や福祉事務所に相談するなどの最大限の努力をして入院を認めている病院が大多数となっています。
 今後、独居の高齢者が増加するに従って、身元保証のない入院で発生した様々なトラブルも増加が見込まれます。これまで以上に行政関係方面のフォローが求められていると考えます。

 考察として、日本の医療制度は性善説を基に組み立てられていますが、少子高齢化が進む現在では認知症などの疾患により、悪意がなくても、善意だけでは守れない人が増えているので、支え合う意味でも身元保証人等の関与や補完する仕組みは必要不可欠だと考えます。

システムとして対応できるような仕組みが構築できればいい

相澤孝夫会長2_20190702日病会見

 会見で、相澤会長は「高齢化が進行し、社会のコミュニティーがどんどん壊れていく中で、日本全体が今どうなっているのかを実態調査しつつ、できればシステムとして対応をできるような仕組みをつくり、個々の病院や個々の担当者ではなくて対応できるようなことが構築できればいい」との意向を示した。

 相澤会長の説明は以下のとおり。

[相澤孝夫会長]
 今日は主に2つ、お話をしたいと思います。1つは、「全国医学部長病院長会議」、AJMCから(日本)病院会で検討してほしいということがございまして、検討したということ。

 それからもう1つは、身元保証人をどうするかという問題と、それに関して、いま病院で問題になってるのは・・・、

 身元保証を取っているもともとの始まった原因は何かということと、それが今、なかなか原因が、大変困ってることが解決できてないということについてお話をさせていただきたいと思います。

(中略)

 神奈川県病院協会が調査をしてくださいました。

 それは、身元保証人等の状況調査というものでございます。神奈川県の病院で調査をしますと、身元保証人を求めている病院は97%の病院が身元保証人を求めているということでございます。

 ただし、「なぜ身元保証人を求めているか」ということになりますと、「支払の保証」だとか「医療行為の同意」、「遺体・遺品の引き取り」、「急変時の入退院手続き」等でありまして、

 やはり患者さんご本人ではできなかったり、あるいは不可能だったりすることを代わりにやってくださる方ということを入院の際にお願いをしているということでございます。

 ただ、一番困るのは、しっかりとそれに対応できない場合(身元保証人を付けることができない人がいる場合)というときに、病院側が病院単体として(身元保証人がいない場合でも入院を認める)、

 あるいは、担当になった事務の方、あるいはMSWの方が「後見人等の検討・活用」、「保証会社があるから、そちらを使ったらどうか」(保証会社の紹介)とか、あるいは「高齢者サポートサービス等々を紹介する」というような、個々ばらばらの対応をしているわけであります。

 身元保証人が付いているのにもかかわらず、対応してくれず困ったということも69の病院(74%)が「ある」という具合に答えておりまして、病院の現場で大変困っているという状況があるかと思います。

 今、高齢社会がどんどん進行し、一人暮らしのお年寄りも増えていると。

 あるいは認知症のあるご家族と暮らしていて、ご本人、認知症のない方が入院してしまいますと、認知症のおありになる方がうまく対応できない等々の社会的問題も非常にあるわけでございまして、

 これに対して、個々の病院が個々に対応する困難さというのは非常にあるわけでございまして、ここに関して、何かこう、一定の、そういう相談に乗るところの窓口、あるいはそういう機関、あるいは仕組みというものをつくっていくということが極めて大事ではないかなという具合に思います。

 非常に困った例として、「連絡が全く取れない」(複数回答で51病院)。保証人がいるのにもかかわらず連絡取れないというのは、どういうことなのか分かりませんが、そういうようなこと。

 あるいは、「医療費の不払い」(同63病院)、それから、おそらく一番困るんでしょうけど、「遺品とか遺体のお引き取りをお願いしてもいないということがある」(同13病院)ということで、大変困っているという現状が分かりましたので、できれば神奈川県だけではなくて、日本全体、今どうなっているのか。

 高齢化の進行の中で、それから社会の中で、コミュニティーがどんどん壊れていく中で、どうなっているのかという、ちょっと実態調査もしつつ、

 できればシステムとして対応をできるような仕組みをつくり、個々の病院や個々の担当者ではなくて対応できるようなことが構築できれば、こんないいことはないという具合に思っております。以上です。

[日本病院会・遠山明広事務局長]
 はい。それでは、各社からのご質問をお願いいたします。

 (後略)

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