令和6年度の介護報酬改定では、「主な柱」にどのような項目を掲げるのでしょうか。前回は5項目でした。現時点では4項目が候補に挙げられています。【新井裕充】
厚生労働省は5月24日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第217回会合をオンライン形式で開催しました。
主な議題は1つ。「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について」です。
「次期改定に向けた議論スタート」と言いたいところですが、既に同時改定の意見交換会が3月から5月にかけて開催済みですし、調査結果の議論もしていますので、今回は「キックオフのようなもの」と言うべきでしょうか。
今回の資料は、①最近の動向、②意見交換会、③進め方──の3つです。①②を踏まえて③という構成です。
①では、認知症高齢者が増えていることや、介護費が多くかかっているサービスなどを紹介。人材確保については既に施策を打ってきたことを説明した上で、介護保険法の改正や前回改定の審議報告、介護保険部会の意見書などを踏まえて検討していく方針を伝えました。
②は、意見交換会の議題を紹介する程度で、議論の内容には触れず。厚労省の担当者は「次回以降の給付費分科会に資料として、ご提出させていただいて、ご報告を申し上げたい」と述べました。
③では、前回改定の主な柱である5項目を示した上で、次回改定に向けて4項目を挙げました。前回改定は次の5項目です。
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次回はどうするか。この日の会合では、4項目を候補に挙げています。ただし、「主な柱」とは言っていません。「例えば以下のような分野横断的なテーマ」としています。
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次回も5項目だとすれば、1項目を余白にしていると考えられます。では、何を入れたらいいでしょうか。
この点、保険者の立場から「医療・介護の連携強化」を加えるよう求める意見が出ました。「できるだけ医療保険から介護保険に移行させるべき」とか、「医療と介護で重複する部分は報酬を減らせ」という意味でしょうか。
一方、日本看護協会の委員が「同時改定なので、医療と介護の連携強化についても明示してはどうか」と提案しましたので、この「医療・介護の連携強化」は立場によって異なる内容を指すのかもしれません。
「医療と介護をシームレスに」という意味であれば、1番目に掲げている「地域包括ケアシステムの深化・推進」に含めて解釈できるので、加筆の必要性はないように思います。
私の勝手な予想ですが、地域包括ケアシステムの上位概念とされている「地域共生社会の実現」をトップに掲げるように思いますが、皆さんはどう予想しますか?
前回の5項目のトップに挙げられた「感染症や災害への対応力強化」のような内容も含むようにするなら、「地域共生社会の実現」だけではちょっと足りないかもしれません。難しいですね。
以下は厚労省担当者の説明です。冒頭、配信ミスがあったようですので、 YouTube のアドレス修正により復旧するまでの発言を掲載します。
〇田辺国昭分科会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
はい。それでは早速でございますけれども、議事次第に沿って進めさせていただきます。
本日は、「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について」の議論を行いたいと思います。
事務局におかれましては資料説明を簡潔に行っていただくとともに、各委員におかれましても、ご発言は論点に沿って簡潔に行っていただくよう、ご協力のほうをお願い申し上げます。
それでは、まず事務局のほうより資料説明のほうをお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
〇厚労省老健局老人保健課・古元重和課長
はい。それでは、老人保健課長でございます。資料1、資料2および資料3に基づきまして、ご説明を申し上げたいと思います。
まず資料の1でございます。1ページ目に目次を記載しております。
この内容に沿って簡潔に、ご説明を申し上げたいと思います。
資料の3ページ以降ですね、これまで22年間、介護保険制度の中で利用者が増加をしてきて、
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また認定者数、
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給付費・事業費および保険料が増加してきたと、こういったことをお示ししております。
スライドの8ページ目でございます。
介護給付に係る総費用のサービス種類別の内訳を申し上げますと、
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まず居宅サービスでは最も大きなシェアを占めるのが通所介護、次いで訪問介護といった状況でございます。
また、施設系サービスでは特養および老健、こちらが大きなシェアを占めているということ。
また、地域密着型サービスでは、認知症グループホームが最も大きなシェアを占めている、こういった状況でございます。
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続きまして、スライドの12ページ。
こうしたニーズが高まる中でですね、介護職員の確保、これが大きな課題であるといったことをお示しした資料でございます。
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15ページをご覧ください。
保険者別の介護サービス利用者数の見込みになります。
これから先、ニーズが増加する地域も多い一方でですね、既にピークを迎えた地域もあると、こういったことをご覧いただけると思います。
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こうした中でですね、地域ごとに必要な対策が必要になるということでございます。
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18ページ目。介護保険制度改正の主な経緯。
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および、19ページ目の、これまでの介護報酬改定の改定率等について、おまとめしておりますので、こちらはご参考まで、ご覧ください。
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続きまして2つ目。20ページでございますが、「令和3年度介護報酬改定について」でございます。
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21ページ。こちらは皆さま何度もご覧いただいております前回の介護報酬改定の概要でございます。
感染症や災害への対応力強化
2つ目に、地域包括ケアシステムの推進
3つ目に、自立支援・重度化防止の取組の推進
4つ目に、介護人材の確保・介護現場の革新、そして、
5つ目に、制度の安定性・持続可能性の確保
その他(の事項)
こういった柱の中でですね、前回の改定が行われたということでございます。
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次ページ以降はそれぞれの詳細でございますので、ご説明は本日は割愛させていただきます。
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27ページ。「令和4年度介護報酬改定による処遇改善について」でございます。
こちらの分科会におきましてもですね、幾度となく、ご審議をいただきまして、昨年の10月に改定を行いました。
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28ページ。こちらが一昨年の11月の閣議決定でございますが、この中でですね、
「収入を3%程度引き上げるための措置」を実施すると、こういった方針が出されました。
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そうした中、29ページにございます「公的価格評価検討委員会」の中間整理におきましてですね、
「現場で働く方々に広く行き渡るようになっているかどうか、費用の使途の見える化を通じた透明性の向上」
こういったことも、おまとめをいただいているところでございます。
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こうした中、30ページにございます補助金。こちらは令和4年の2月から。
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そして、31ページの介護報酬改定による処遇改善を昨年の10月から開始をいたしております。
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現在、32ページにございますとおり、3つの種類の処遇改善に係る加算を各事業所においてですね、ご算定いただいていると、こういった状況でございます。
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続きまして、34ページ。介護保険法の改正について、ご報告を申し上げたいと思います。
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35ページ。こちらが全体像になりますが、現在、開催されております令和5年度の通常国会におきまして、
「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」
こういった改正案が審議をなされまして、去る5月12日に成立をいたしました。
そのご報告でございます。
この中でですね、医療、
幅広く医療・介護の関係の見直しが行われたわけでございますけれども、
介護関係は35ページの、この赤色の枠で囲った部分でございます。
詳細は36ページをご覧ください。
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大きく5点ございまして、
介護情報基盤の整備
介護サービス事業者の財務状況等の見える化
そして3つ目に、介護サービス事業所等における生産性の向上に資する取組に係る努力義務
そして、看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容の明確化
そして、地域包括支援センターの体制整備等
こういった改正の内容でですね、法案が成立したといったことで、ご報告でございます。
今後、詳細につきましてはですね、皆さまともご相談をさせていただきながら進めてまいりたいと思います。
詳しくは、それ以降のページをまたご参照いただければと思います。
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続きまして、43ページ。ここからが「新型コロナウイルス感染症への対応について」でございます。
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44ページに一覧としております。
こちらが「新型コロナウイルス感染症に関する高齢者施設に対する支援等」でございます。
今月5月の8日以降ですね、類型の見直しが行われて以降、現在の段階におきましてもですね、こういった支援策については継続をしていると、こういった内容でございます。
平時からの感染対策。
そして2つ目に、感染者が発生した場合の支援・対応。
3つ目に、退院患者の受け入れにかかる対応。
ここは介護報酬上の特例的な評価でございますとか、退院患者の受け入れに協力する老健施設に関する情報の医療機関への提供など。
その他。助成金の活用などですね、こういった取組を現在も実施しているといったところでございます。
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45ページはご参考でございます。
前回の介護給付費分科会でご意見をいただきまして、継続する取組、そして見直す内容、
こういったことに基づいて取組を進めさせていただいているところでございます。
46ページをご覧ください。
最後となりますが、これは「指摘事項等について」ということでございます。
これは本日以降ですね、来年の春に向けて介護報酬改定を検討していくにあたりまして、さまざまなかたちでの指摘を受けております。
その内容をですね、サマライズした資料になります。
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まず47ページ目からが、「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」ということでございます。
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3年前の改定の際にですね、おまとめをいただきました今後の課題というものが、
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48ページ、49ページから52ページまで、5ページにわたり記載をしております。
今回の改定の個別項目などの検討に当たりましてはですね、この課題をもとに議論を進めていくと、こういった立て付けになると思います。
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また53ページ。
こちらは「令和4年社会保障審議会介護保険部会意見書」ということで、昨年の12月に取りまとまりました意見書でございます。
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それが54ページから55ページ。こちらが全体像となります。
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そのうちですね、特に給付費分科会で議論が必要となるもの、これについて、最後の56ページに抜粋した内容になります。
こちらはですね、給付費分科会での議論に付すなど、制度見直しのために必要な対応を速やかに講じられることを求めたいとされている内容でございます。
特に、この56ページに記載された内容につきましてはですね、
今年の給付費分科会の中でですね、皆さまともご議論をさせていただきたいと考えてございます。
以上、資料1でございます。
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続きまして、資料の2に移りたいと思います。こちらもご報告でございます。
「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会について」ということで、本分科会におきましてもですね、この意見交換会を開催すると、こういったご報告を申し上げたところでございます。
ご報告申し上げましたとおり、開催をいたしました。
議題としては、2ページ目の2に書いてございます。
1から9に「その他」までございますけれども、
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それぞれの項目についてですね、「開催実績」にございますとおり、3回にわたり会議を開催し、実施をしたところでございます。
なお、それぞれの会でですね、さまざま委員の皆さまからご意見をいただいた内容については現在、取りまとめを行っておりまして、
次回以降の給付費分科会に資料として、ご提出させていただいて、ご報告を申し上げたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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続きまして、資料の3でございます。
こちら、案としてお示しする内容でございます。本日、ご意見をいただければと思っております。
「令和6年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について」でございます。
まず、令和3年度介護報酬改定におきましては、新型コロナウイルス感染症への対応の必要性を踏まえまして、
そちら記載の5つの項目を柱といたしまして、改定を行いました。
令和6年度介護報酬改定に向けましては、診療報酬との同時改定であること、
また新型コロナウイルス感染症への対応の経験などを踏まえまして、
・令和3年度介護報酬改定に関する審議報告、および、
・令和4年社会保障審議会介護保険部会意見書における指摘などに基づき、
各サービス種類ごとの論点とあわせ、例えば以下のような分野横断的なテーマを念頭に置き、議論してはどうかと、こういったご提案でございます。
分野横断的なテーマといたしましては、
1つに、地域包括ケアシステムの深化・推進
自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
そして、介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
さらには、制度の安定性・持続可能性の確保
こういったテーマをですね、念頭に置きながら、皆さまとご議論をさせていただけないかと、こういった、ご相談でございます。
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なお、スケジュール案でございますが、6月以降、夏頃までですね、主な論点について、ご議論をさせていただきたいと思います。
その後、9月頃に事業者団体などの皆さまからヒアリングを行いまして、
その結果をまた踏まえましてですね、年内、具体的な方向性について議論をしてまいりたいと思います。
12月中に「報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ」を行った上で、
予算編成を経まして、来年の1月頃に介護報酬の改定案の諮問・答申。
こういったかたちで約半年にわたりですね、皆さまとご議論を積み重ねてまいりたいと、こういったご提案でございます。
資料の説明は以上となります。どうぞよろしくお願いいたします。
〇田辺国昭分科会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
はい、ご説明どうもありがとうございました。
それでは、ただいま説明のありました事項に関して、ご意見、ご質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。それでは長内委員、よろしくお願いいたします。
〇長内繁樹委員(全国市長会、豊中市長)
はい、分科会長ありがとうございます。意見のほうが主になるんですけれども。
まず、「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方」については、まず報酬改定という点につきましては、全国市長会を代表しまして、それぞれ自治体の意見を踏まえ、保険料が急激に引き上げることがないよう、そして、その水準に留意しながらも、併せて簡素で保険者にとってわかりやすい報酬体系とすることについて配慮して見直しを行っていただきたいということをまず申し伝えたいと思います。
それと、豊中市、40万の市民を抱える保険者として、その中で事業者から多いのが、やはり診療報酬と介護報酬の両方を請求する事業者にとってなかなか区分の線引きが難しいという点もあります。わかりやすい報酬体系となることを期待しております。
2点目です。地域や、あるいはサービス等の実態に即した適切な報酬の評価や設定を行っていただくとともに、特に人への投資が求められるところでもあります。
介護人材確保のため処遇改善加算の対象を拡充するなど、介護職員全体の賃金水準の底上げをぜひとも行っていただきたいということを全国市長会を代表して申し上げたいと思います。
あわせまして、本市の事業者からは、介護職員だけじゃなしに、最近ではケアマネージャーの人材確保も難しいといった声も多々出ております。
この点も踏まえた議論を進めていただきたく、意見として述べさせていただきたいと思います。以上でございます。ありがとうございました。
〇田辺国昭分科会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
ありがとうございました。それでは次、鎌田委員、よろしくお願いいたします。
(後略)