厚生労働省は8月3日の中医協総会に「入院患者の家族等による付添いに関する実態調査概要について」と題する資料を示し、委員の意見を聴いた。【新井裕充】
質疑で、患者の立場を代表する委員が「付き添いたくても付き添えない場合がある」「付添いになると『個室になります』と言われて非常にお金がかかっちゃう」と不満を漏らした。
患者の家族が病室で身の回りの世話などをする「付添い」は、医師の許可があれば認められているが実態はどうか。厚労省は昨年10月から11月にかけて業務委託の形式で調査を実施した。
それによると、「病院側から家族等に付添いを依頼することがある」との回答は33%。付添いに関する病院からの説明が十分かどうかについては、「非常にそう思う」と「ややそう思う」を合わせて89.5%が十分であると回答していた。
一方、患者家族等へのヒアリング結果では、3歳未満の患者の母親から「1年間入院付添いを行ったが、事前に入院期間は言われなかった」との声があった。病院側に求める説明については、「説明の有無というより、事前に辛さを教えてほしかった。説明を聞いて想像していた状況と現実にギャップがあり、さらに長期間だったため辛かった」との回答もあった。
質疑で、支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は「入院患者の年齢やその症状によって付添いの希望や負担もさまざまだということがわかった」と今回の調査を評価した上で、「入院は患者本人だけでなく家族も負担が大きい。事前に病院からどの程度の説明があるかがポイントになると感じた」と述べた。
同じく支払側で患者を代表する立場の間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は次のように述べ、さらなる調査や対応を求めた。
「付添いということになると個室になりますって言って短期の入院だったらまだいいんですけど、長くかかる場合なんかは非常にお金がかかっちゃうわけですね。そこで看護か付添いかっていうところになるんですけども、日頃からやっているケアっていうのが看護にあたってしまうようなこともあるんですけども、それを看護師に任せるのも、また、それもいろいろかぶれとかそういうのがいつもやっている方式ができなかったりとかする場合があって、それが難しいというようなこともあるというようなことがあります」
会議終了後の記者ブリーフィングで、厚労省保険局医療課の金光一瑛課長補佐はこのように述べた。
「今回、この調査について医療課で実施をして報告をさせていただきました。『総-5』の資料の中にもありますように、2ページになりますが、調査の目的、それから対象方法を記載のとおり、調査期間は昨年3年の10月1日から11月30日まで実施をしたということになります。
委託業者にやっていただいた調査でもあるので、年度の区切りでいったん、その報告を受けておりますので、その内容について中医協でご報告をしました。
中医協の委員から、両側からたくさんのご意見を頂きました。この調査の解釈については、単に『調査の結果がこうでした』ということが、てくてく歩いていくというよりかは、今日、頂いたようなご意見、また、ご指摘というものをちゃんと加味した上で解釈をしないと、非常に調査の目的であるとか内容から外れた解釈になってしまうのではないかということもわかったところであります。そういったことも踏まえて今回、お出しをさせていただいたということになります」
今回の調査結果は、最後の議題「その他」で示された。この日の中医協は看護の処遇改善や医療DXが中心テーマだった。記者から「付き添いに関する総5について、この目的といいますか、『なぜ今この議論を』というところが理解できていません。背景などを簡単に教えていただけませんでしょうか?」との質問があり、これに答えた。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
それでは、次に「その他」を議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
資料説明
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〇厚労省保険局医療課・眞鍋馨課長
はい。それでは、「総-5」でございます。「入院患者の家族等による付添いに関する実態調査概要」について、ご報告をさせていただきます。時間を超過しておりますので、コンパクトな説明に努めたいというふうに思います。
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いきなり最後のページに飛びまして恐縮でございますけれども、16ページをご覧いただけますでしょうか。これは付添いに関する現行の規定をお示ししたものでございます。
丸が2つございまして上の丸。これはいわゆる療担規則でございますけれども、その中で看護に関する規定でございます。
「保険医療機関は、その入院患者に対して、患者の負担により、当該保険医療機関の従業者以外の者による看護を受けさせてはならない」
という規定がございます。
また、その解釈通知の中で、その下に書いてございますけれども、
「看護は、当該保険医療機関の看護要員のみによって行われるものであり、当該保険医療機関において患者の負担による付添看護が行われてはならない」
というふうな規定がございます。
ただし、患者さんの状態によっては、ということでございますけれども、「医師の許可を得て家族等患者の負担によらない者が付き添うことは差し支えない」と、こういった規定もあるところでございます。
ですので、付添い看護は行われてはならない。一方で、付添いに関しましてはですね、それは医師の許可を得て行うぶんには構わないというふうな規定になっているところでございます。
それでは、ページをお戻りいただきまして2ページでございます。
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2ページが調査概要でございますけれども、ここの点線の中でお示ししてございます。
付添いによる取組等、家族の意識等を把握する目的でございまして、300の施設でそれぞれに10人の患者さん家族などを対象としてアンケート調査を行いました。
そして、4にございますように、昨年の10月から11月にかけて、この調査内容にあるような調査を行いまして、回収率は高いとは言えない結果となってございます。
病院調査で回収率が3割、患者さんの家族等の調査に関しましては、1.37%ということでございます。
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その結果が次のページ以降でございますけれども、3から8ページは、病院への調査の結果概要でございます。
3ページが、家族等による付添いの状況。
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4ページが、家族等の付添いを認めない理由でございます。
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5ページに進めていただきまして、5ページが、これは家族等がですね、付添いを希望し、医師の許可を得て家族が付き添う状況でございます。
いずれも「容態の急変が考えられる場合」というのが最も多いという結果でございました。
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6ページでございますけれども、こちらは病院側から家族等に付添いを依頼する状況でございます。
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年齢層別でやや状況が異なるところではございますが、いずれも「患者の精神的な不安が強い場合」や「容態の急変が考えられる場合」が多いという結果でございました。
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7ページ目でございます。こちらは家族等から付添いを希望するも医師が許可しないという状況でございまして、コロナ禍ということもあったのだと思いますけれども、「感染症対策を行っている場合」が最も多いという結果でございました。
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8ページは、付添いについて家族等に対して行う説明のタイミング、方法、内容をまとめております。
9ページ以降、13ページまでが患者家族等への調査の結果概要でございます。
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9ページでございますけれども、こちらは回答者、付添い者と、それから患者の属性であります。
付き添っている方の患者さんの年代は「1歳未満」が最も多いということでございます。
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10ページは現在、入院中の病院での付添い状況でございます。
入院している診療科は小児科が最も多いということでございます。
その必要な理由は、「乳幼児または小学生以下だから」というのが最も多いということでございました。
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11ページは、付添いに関する病院からの説明についてであります。
この説明につきまして十分かどうかについて、こちら「非常にそう思う」「ややそう思う」を合わせて9割の方が十分であるというふうに回答していらっしゃいました。
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12ページでございますけれども、付添いにおける心配事や困っていること、「十分な睡眠が取れない」ということが最も多いということでございます。
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13ページは、これまで入院したことがある全ての病院での付添い状況についてでございます。
患者の付添いをしたいと思う場合は「容態の急変が考えられる場合」が最も多く、次いで患者さんの精神的不安が強い場合という結果でありました。
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14ページがこれ、病院へのヒアリングの結果概要を示してございます。
例えば、家族等から入院付添いを希望する状況としては、患者さんの症状が重症であったり認知症の場合。
病院側から入院付添いを依頼する場合のうち、病状により付添いを依頼するものとしては、こちら、患者さんの病状によって命にかかわるような急変が考えられる場合、一度家族に来ていただき、患者さんの様子を見た家族が希望すれば付添いを許可している。
病院側から入院付添いを依頼する状況のうち、小児等であって付添いを依頼するものとしては、患者さんが、お子さんがですね、親と離れることで精神的不安がある場合には、病院から家族に付添いを依頼することがある。
そして、また医師が許可しない状況としては、子どもに危害を加える可能性がある患者家族については付添いを許可しないというふうなこともコメントがあったところでございます。
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15ページでございますけれども、こちらは家族等へのヒアリングの結果概要を示してございます。
入院付添いの状況としては、例えば患者さんの着替えなどは付添い者が行いましたが、検温などは看護師が行った。
患者さんに薬を飲ませることや食事等は自宅に帰ってから困らないように練習として始まり、実施していた。などが挙げておられました。
「病院からどのような説明があればよかったか」につきましては、例えば、説明の有無というより、事前につらさを教えてほしかった。説明を聞いて想像していた状況と現実にギャップがあり、さらに長期間だったため、つらかった。などが挙げられていたところでございます。
早口で失礼いたしました。ご説明は以上でございます。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、どうもありがとうございました。
質疑応答
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
それでは、ただいまの説明につきまして、ご質問等ございましたらよろしくお願いいたします。城守委員、お願いいたします。
〇城守国斗委員(日本医師会常任理事)
はい、ありがとうございます。まず今回の調査結果は、患者さんや、そのご家族からの回答率が1.37%と、残念ながら非常に少ない数となっておりますので、この調査結果で全ての病院に当てはまるような議論ができないのではないかというふうに考えているところでございます。
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また、9ページの右のですね、円グラフに示されているように、今回の調査の対象の患者さんはですね、3分の2以上が小学生以下のお子様であるということも踏まえる必要があろうというふうに思います。
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そうした意味で、今回の調査結果はあくまでも参考として受け止めるのがいいのではないかなあというふうに思いますが、
もっとも、今回の調査でも示されておりますが、付添いをされるご家族の方々に対して丁寧な説明をしていくということが重要であるという方向性については十分に理解できますし、しなければならないものであるというふうに考えておりますが、私から2点ほど述べさせていただきたいというふうに思います。
まず1点目ですが、「総-5」のですね、6ページの「病院調査の結果概要」の③におきまして、「病院側から家族等による付添いを依頼する状況」として、「患者の精神的な不安が強い場合」や「容態の急変が考えられる場合」が挙げられております。
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これらの状況におきましては、ご家族が付添いを希望されることが多いということがありますので、患者さんの病状等を踏まえて、病院側から先回りしてお声掛けをしているということも考えられると理解をしております。
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2点目ですが、10ページの「患者家族等調査の結果概要」の②におきまして、患者の入院の付添いが必要な理由として、「乳幼児または小学生以下だから」が挙げられておりますが、
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小児の場合、特にですね、このヒアリングの回答にもこれ、ございますが、単に患者さんのそばにいるのではなくて、退院後を見据えて食事や服薬等、病状に合わせたお子さんの世話をご自宅でも行えるような練習をするために付き添っているということも考えられるというふうに理解をわれわれはしております。私のほうからは以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございました。佐保委員、お願いいたします。
〇佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)
はい、ありがとうございます。今、城守委員も回答数について発言されていましたが、私も同様に少ないというふうに思いました。
そういった中で、患者・家族等へのヒアリング結果を見ると、入院患者の年齢やその症状によっても、付添いの希望や負担もさまざまだということがわかりました。
入院という、患者本人だけでなく家族も負担が大きい中、事前に病院からどの程度、説明があるかがポイントとなってくるというふうに感じました。私からは以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、ありがとうございました。間宮委員、お願いいたします。
間宮委員、ミュートになってますが、よろしいですか?
間宮委員、よろしくお願いいたします。
<音声トラブル>
間宮委員、いかがでしょうか。ちょっと、音声が聞こえないんですが。
どうしようか・・・。
はい。間宮委員、大丈夫でしょうか。はい、わかりました。
はい。ほかの委員の方々で、この件につきまして、ご質問等はございますでしょうか。
消えちゃった。すいません。しばらくお待ちください。恐縮です。
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
聞こえますか?
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、聞こえます。
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
すいません。ごめんなさい。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
お願いします。
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
はい。申し訳ありません。
いろんな実態があってですね、付き添いたくても付き添えないっていう場合もあったり、重度、例えばですね、重度の障害ある方なんかで、「付き添ってください」っていうことではなくて、「付き添いますよね?」っていうふうに言われて付き添うことになるんですけども。
その時に、「付添いということになると個室になります」って言って短期の入院だったらまだいいんですけど、長くかかる場合なんかは非常にお金がかかっちゃうわけですね。そこで看護か付添いかっていうところになるんですけども、日頃からやっているケアっていうのが看護にあたってしまうようなこともあるんですけども、それを看護師に任せるのも、また、それもいろいろかぶれとかそういうのがいつもやっている方式ができなかったりとかする場合があって、それが難しいというようなこともあるというようなことがあります。
逆に、付添いしたいんだけどできなかった例としては、知的の障害があるお子さんが入院するときに個室しか空いてなくて、個室に入ってもらうっていうふうに言われたんですけど、そこで1人だとやっぱり、ひとりぼっちにいつもならない状態にいるので、1人になっちゃうとパニックを起こしちゃう可能性もあるので付添いさせてほしいというふうに言ったときに、付添いはできませんというふうに言われたりして、ナースコールなんかも自分では押せないような状況なので非常に心配だというようなこともありますんで。
これぜひ、この調査、1回しているわけですけども、実態調査をもっと詳しくやっていただいて、実態に即したケア、対策っていうのをとっていただきたいというふうに思います。以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございました。この調査につきましても委員の方々から貴重なご意見をいただきました。最後に事務局からコメントをお願いいたします。
〇厚労省保険局医療課・眞鍋馨課長
はい。医療課長でございます。各側からまた、ご意見いただきましてありがとうございました。
医療機関側からは、その患者さんへの説明で解決できる部分が多いですとか、そういった余地があるのではないかというご指摘もございまして、また、さらなる実態をというふうなご指摘もございました。事務局として受け止めさせていただいて検討させていただきたいと思います。以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい。ほか、よろしいでしょうか。はい。じゃ、ほかにご質問等ないようですので、本件に係る質疑はこのあたりとしたいと思います。
本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
本日の総会はこれにて閉会といたします。長時間どうもありがとうございました。
(配信終了)