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療養病床から地域包括ケアへの転換、「けしからんとは言ってない」と全日病の神野副会長

神野正博委員(全日本病院協会副会長、恵寿総合病院理事長)_20190703入院分科会

 急性期医療を担う中小病院が多く加入している全日本病院協会(全日病)副会長の神野正博氏(恵寿総合病院理事長)は7月3日、療養病床からの転換先が議論となった厚生労働省の会議で、療養病床から地域包括ケア病床への転換について「(療養病床には)これだけ長くて、亡くなる方がいる。重症化している療養病床から介護医療院へ行くときに、医師定数はこれでいいのか」と発言し、慢性期病院の団体幹部と口論になった。神野氏は「(地域包括への転換が)けしからんとは言ってない」と反論した。【新井裕充】

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の2019年度第4回会合を開き、療養病棟入院基本料などを主なテーマに挙げた。

 厚労省はこの日の分科会に、入院医療に関する18年度調査の結果を分析した資料を提示。それによると、療養病床の中で最も看護師の配置が手厚い「療養病棟入院料1」の転換先として、最も希望が多かったのが「地域包括ケア病棟」だった。

20190703入院分科会2

 神野氏は、医師の働き方改革に触れながら、「これだけ忙しい中で、質を保つという意味に関しては、医師の基準というのが今まで全然議論されていなかった。その分析がなされていなかったことは、ちょっと1回考える必要がある」と問題提起した。

 これに対し、日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦氏は「この場(分科会)は、その議論をする場ではない」などと反論した。

 議論の模様は以下のとおり。

[厚労省保険局医療課・木下栄作課長補佐]
 事務局でございます。お手元の資料、「診調組 入ー1」をお開きください。まず、こちらの資料におきまして、療養病棟入院基本料の

 ・施設の現況
 ・入院患者の現況(医療区分等)
 ・在宅復帰機能強化加算等
 ・その他

 2つ目としまして、障害者施設等入院基本料につきまして、
 先般の(平成30年度)入院(医療等の)調査等の概況からまとめた結果につきましてご報告いたします。

 (中略)

 今、ご説明してまいりましたそれぞれの現状と課題というのを64枚目にまとめておりまして、論点、2つ挙げさせていただいております。

064_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

 医療区分につきましては、各項目の該当割合や、医療区分のこれまでの見直しによる変化等を踏まえて、さらなる分析を進めてはどうか。2つ目といたしまして、療養病棟の在宅の復帰機能について、復帰率の分布、患者の在院日数等を踏まえ、どのように考えるか、

 ということを論点として挙げさせていただいております。説明は以上になります。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 はい、ありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして、一括してご議論いただきたいと思います。ご質問、ご意見等がございましたら、お願いいたします。

 松本委員、どうぞ。
.
[松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)]
 ありがとうございます。健保連の松本です。

 論点からはちょっとずれるかもしれませんけれども、「療養病棟入院料1」の関係でございますけれども、スライドの14(療養病棟入院料経過措置1を届出ている病棟の今後の届出の意向)で示されておりますけれども、

014_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

 「経過措置1」を届けている病棟のうち、約5割が介護医療院等への転換等に(意向を)お示しされている。一方、現状維持も3割強という状況でございます。

松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)_20190703入院分科会 医療療養病床から介護医療院への転換に総量規制があるとは聞いておりませんし、また、介護医療院への転換の際は、転換前後におけるサービスの変更内容を利用者やその家族、地域住民等に丁寧に説明する等の取り組みについて、1年間に限りですけれども、算定可能な加算ということも32年度末まで設けられていますので、

 このような加算も活用しながら、経過措置を届けている病棟におきましては、転換を進めていただければというのが保険者の切なる願いでございます。

 この部分につきましては、(療養病床の削減が)かなり延長、延長ということで来ている部分がありますので、今回の経過措置のところで踏ん切ってほしいということで、(委員ら、苦笑)

 (論点に示された)「さらなる分析(を進めてはどうか)」というよりかは、現場も大変ご苦労なさってると思いますけど、その方々に医療保険でなくて、介護保険のほうからお支払いしますという制度へ移っていただければという、そういう切なる決断を、お願いでございます。決断を促していただきたいというのが一番でございます。以上です。ありがとうございます。

 (中略)
.
[神野正博委員(全日本病院協会副会長)]
 (前略)ちょっと医師の働き方みたいな話になりますけども、療養で、やっぱり非常に亡くなる方がたくさんいらっしゃる。これは事実として出てきました。それから、もう1つ、ですから死亡が非常に多いということ。

 そして、20ページ(入院料毎の患者の在院期間別割合の分布)を見ますと、実際に(在院期間が)長い方がたくさんいらして、そして亡くなってる方がたくさんいらっしゃるということになると思います。

020_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

 そして12ページ(療養病棟入院料1を届出ている病棟の今後の届出の意向)を見てみます。今度は、今後の届出に関する問題ですけれども、

012_2019年7月3日の入院分科会資料「入─1」

 もちろん、nが少ないのは理解しますけども、(療養病棟入院料)1に関しては地域包括、それから2あるいは経過措置に関しては介護医療院という、なんとなく方向性がある。

神野正博委員(全日本病院協会副会長、恵寿総合病院理事長)_20190703入院分科会 先ほどの(議論で)介護医療院に行くことに関しては、松本委員、おっしゃったとおりなんだと思いますけども、

 今度、地域包括に行くことを考えたら、これだけ長くて、亡くなる方がいる。いわゆる重症化している療養病床から介護医療院へ行くときに、さあ、医師定数、これでいいんですか。

 おそらく看護師に関しては、地域包括の13対1とか、回復期の13対1、15対1があります。

 それから療養の1に関しては、20対1であると。

 それを地域包括に行くときには、13対1にしなきゃいけないということになると思いますけども、医師は一般から地域包括に行った場合は16対1、それから療養から地域包括に行ったときには48対1。

 これだけ忙しい中で、質を保つという意味に関しては、医師の基準というのが今まで全然議論されていなかった。その分析がなされていなかったことは、ちょっと1回考える必要があるのかなというふうに思います。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 はい。ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 すいません、ちょっと今の神野委員にご質問を。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 池端委員、どうぞ。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 地域包括ケア病棟、今日は療養病床なので、

 地域包括ケア病棟全体で、療養から行く場合は、もう一般にそろえろということをおっしゃるんですか?
.
[神野正博委員(全日本病院協会副会長)]
 そろえたほうがいいんじゃないですか。もし必要……。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 地域包括ケア病棟は、療養から行くことを全部否定するということですね。
.
[神野正博委員(全日本病院協会副会長)]
 いや、そうじゃないです。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 現状、今あるわけです。それを全部、医師を16対1にしろということですね。そうしなきゃいけないということですね。
.
[神野正博委員(全日本病院協会副会長)]
 か、それとも地域包括ケア病棟に……。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 を、やめろということ?.
.
[神野正博委員(全日本病院協会副会長)]
 2種類あってもよろしいんじゃないですか。医師が多い地域包括ケア病棟と、医師が少ない地域包括ケア病棟。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 分かりました。療養、これだけ長い人が多いのに、地域包括ケアに行くのはけしからんというのは私、違うんじゃないか。あのね、
.
[神野正博委員(全日本病院協会副会長)]
 けしからんと言ってるんじゃなくて、
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 療養病床には、長期療養の枠と在宅復帰やっている、その2種類の病床があるわけですよ。2種類の機能を同時に果たしてるんです。老健とか、老健もそうですよね。ある程度、長期療養と在宅復帰と、看取りもしなさいという。

 同じように、療養病床は今、2種類の患者さんを診なきゃいけない状況にある。だから、そこの割合が多いところに地域包括が行きやすいし、療養が多いところは療養に止まっている。

 いずれにしても、急性期からそういう方を受けている、あるいは在宅から受けているというのが現状の療養ということをぜひご理解いただいて、長期療養から地域包括ケアはけしからんって、それはちょっと違うんじゃないかと思います。
.
[神野正博委員(全日本病院協会副会長)]
 繰り返します。「けしからん」とは言ってません。

 ただ、これだけ忙しい、医師の働き方の問題があって、これだけ大変な、特に今で言ったら地域包括に行く療養の方々というのは、それなりの患者さんがいて、ぐるぐる在宅に回さなきゃいけないし、医療的措置が必要になったところで、2つの医師の基準があるということがおかしいのではないかと。

 とするならば、ちょっと今日は地域包括の話じゃないですけども、そこは医師の基準上、分けてもよろしいのか、それともストラクチャーでないとするならば、一般から地域包括に行くときに、16対1を外すべきであると、逆にね。というふうにも思います。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 池端委員。
.
[池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)]
 ただ、私は先生と別にけんかするつもりはないですけど、ただ、この場って、そこの議論をする場ではないじゃないかというところがあるんですね。

 これは、やっぱり中医協の基本問題小委とか、上でやるべきで、ここはあくまでもデータをどう読むかというところで、感想としておっしゃるのは結構ですけども、そうすべきだということを議論すると、話がちょっとずれてしまうような気がするので、ここはここまでにしておきたいと。

 それを言いだしたら療養だって、20対1じゃ、とてもみれないです。15対1、13対1の看護配置基準をぜひ欲しいんです。それを言いだしたら、私だって本当に言いたいこと、山ほどあります。(委員ら、笑い)

 よろしくお願いします。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 石川委員、どうぞ。
.
[石川広己委員(日本医師会常任理事)]
石川広己委員(日本医師会常任理事)_20190703入院分科会 僕は、ここで議論する場ではないと思うんですけどね。

 ただ、全体で働き方改革ということで進めてるところでは、やっぱり神野委員が言うようなことが分かるデータも出なきゃいけないということなんですよ。それが出てないんですよ。

 だから、なんか想像で言ったりですね、それから、経験ある先生ですから、経験ある中でこう、感じたものを言ってて、あまりこれは、ここでの議論では正しくないと思います。ぜひ、出るんであれば、そういうデータも出していただきたいと思いますけど。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。

 (後略)

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