厚生労働省は9月8日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」の令和3年度第7回会合をオンライン形式で開催し、救急医療管理加算について前回8月27日の会合に続いて意見を聴いた。【新井裕充】
厚労省はこの日の会合に、これまでの議論を踏まえた「中間とりまとめ(案)」を提示。救急医療管理加算について出された意見として、「臨床現場での算定が簡便となるよう基準の定量化に努めた方がよい、との指摘もあった」と記載した。
質疑で、山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)は「年間1,000件クラスの救急車の受け入れを行っている中小病院にとって、1つは医師の働き方改革がダメージになるだろうし、もう1つ、この救急医療管理加算2がかなり大きな見直しがされると、かなり強いダメージになるのではないか」と危惧した。
都道府県ごとの審査基準のばらつき是正を求める意見に対しては、次のように述べた。
「全国統一の指標と言うと、『はいはいはい』って、一番厳しい所にポーンと合わさるというのが世の通例であるので、軽い救急患者も診ている中小病院もあるということもちゃんと視野に入れて、何でもいいから乱暴に、この厳しい所にドーンと一本化するのではないという配慮も必要ではないか」と指摘した。
この日の議論に先立つ前回8月27日の会合で厚労省は、救急患者の状態を判断するために用いられる指標に基づくデータを紹介した上で論点を提示。「救急医療管理加算は緊急入院が必要な重篤な状態の患者に対する医療の評価であることを前提として、患者の状態を適正に評価していくための判断基準等について、どのように考えるか」と意見を求めた。
この論点について牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)は「今回、定量化ということを意識されて、こういうデータが出てきたと思っている」との認識を示した上で、「意識障害でありながら、Japan Coma Scale が『 0 』というのは確かに普通に考えると違和感を覚えるが、例えば脳出血の直後に入院した場合、その時には『 0 』でも、30分後には『300』になっていることもないわけではない」と指摘。「時々刻々と変化をするのが救急患者の状態だから、入院時の一時点の数値、スコアのみで評価するのは無理がある。疾患や病態なども考慮しながら評価指標を考えていくことが重要」と述べている。
一方で、都道府県ごとの審査基準のばらつきを是正するよう求める意見もあり、牧野委員もこの考え方には賛同。「今後、基準を揃えるということは間違いなく必要になってくるということは思う」と述べた。
同じく8月27日の会合で、猪口雄二委員(日本医師会副会長)は「救急医療管理加算の『アからケ』が妥当な分類なのかどうかは少し検討する価値がある。特に救急の現場はさまざまな疾患が入ってくるので、それに対応するために、この『アからケ』で、うまく本当に振り分けられているかは少し検討してみてはいかがか」と提案した。
こうした議論を踏まえ、厚労省は今回9月8日の会合に「中間とりまとめ(案)」を提示。救急医療管理加算について「救急患者は刻一刻と状態が変化するため、入院時の状態指標のみで評価することは難しい、との指摘があった一方、臨床現場での算定が簡便となるよう基準の定量化に努めた方がよい、との指摘もあった」とまとめている。
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【説明1】「中間とりまとめ(案)」の概要について
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
それでは、次に行きたいと思います。次は「中間とりまとめ(案)について」でございますが、最初に事務局から資料の、これ、全体の説明をいただきまして、そのあとにパーツを区切って議論をしたいと思います。
まず事務局から資料の説明をお願いいたします。
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
事務局でございます。資料2つ、ご用意ください。「入-2-1」、こちらは文章編でございます。「入-2-2」で「別添 資料編」というふうになってございます。
行ったり来たりすることになって恐縮でございますが、両方を用いながらご説明をさせていただければというふうに思います。
では、まず「入-2-1」、文章編でご確認をいただければと思います。「入院医療等の調査・評価分科会におけるこれまでの検討状況について検討結果(中間とりまとめ)(案)」ということで、 まとめてございます。
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Ⅰの概要、これは定例的でございますが、診療報酬調査専門組織の1つである「入院医療等の調査・評価分科会」は、令和2年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見のうち、入院医療に関連する事項について、令和2年度診療報酬改定後の状況の調査・検証を行い、
令和4年度診療報酬改定に向けた評価・検討に資することを目的として「令和2年度入院医療等における実態調査」を実施し、調査結果の分析および技術的課題に関する検討を行った。
として、1番から11番までの項目でまとめているものでございます。
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2ページ以降、「検討結果の概要」ということで、まとめてございます。
2つの丸で前提条件を書かせていただいております。
「日本の人口は近年減少局面を迎えている中」から始まる文章でございます。
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高齢化率、2065年には約38%となる。入院医療においては、今後も高齢者向けの医療ニーズが増加することが予想される一方で、医療・介護の支え手の減少が見込まれる。
限られた医療資源に配慮しつつ、より質の高い入院医療を提供でき、医療ニーズの変化にも対応しうるような効果的・効率的なサービス提供や、患者の状態に応じた入院医療の提供といった視点について、調査結果の評価・検討を行う前提として認識を共有したこと。
またもう1つ。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、入院医療等における実態調査の評価項目に新型コロナウイルス感染症に係る項目を含め、結果の評価・検討を行った。
ということでございます。
(中略)
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【説明2】救急医療管理加算について
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「入-2-2」の246ページにお戻りください。「救急医療管理加算について」でございます。
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247ページに概要。
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248ページには、算定状況。
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それから、249ページには状態の内訳でお示しをしてございます。
救急医療管理加算2の状態の内訳は今改定、令和2年の改定から取れるようになったということでその内訳がお示しされたものでございます。
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250ページ以降、救急医療管理加算の算定要件になっております各種の状態に着目をして分析を加えております。
まずは「意識障害又は昏睡」ということで、特にJCSを今回記入していただくことになってございますので、JCS「0」、意識清明というスケールでございますが、こちらに着目をして、いくつか分析を入れてございます。
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251ページでは、JCS「0」の患者が占める割合を医療機関ごとに見ていったというものでございます。
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また252ページ、253ページでは、心不全について New York Heart Association の心機能分類Ⅰに着目をした分析も加えてございます。
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254ページと255ページでは、呼吸不全の患者さんについて、P/F比 400以上というものに着目をしたりですとか、
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256ページ、257ページでは「広範囲熱傷」の患者さんについての Burn Index、こちらに着目をした分析というものもしてございます。
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258ページでは、救急医療管理加算2の算定患者のうち、「コ その他重症な状態」の患者さんについて、最も多く見られた入院時の状態というものが脳梗塞であったという結果。
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また、その患者さんへの介入状況ということで、入院後3日以内に行われた処置・手術で多いものも列挙し、分析を加えたところでございます。
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文章編にお戻りいただきますと、13ページ。冒頭から救急医療管理加算の内容についてまとめてございます。その項の下2つのポツでございます。
救急患者は刻一刻と状態が変化するため、入院時の状態指標のみで評価することは難しい、との指摘があった一方、臨床現場での算定が簡便となるよう基準の定量化に努めた方がよい、との指摘もあった。
また、次のポツ。熱中症や感染症等においては輸液治療が行われる実態を踏まえ、入院後3日以内に行われた検査等に「注射」も含めると、より実態の把握に役立つのではないか、との指摘があったということでございます。
(中略)
長くなって恐縮ですが、「入-2-1」と「入-2-2」の資料、事務局からのご説明は以上です。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。
【質疑】救急医療管理加算について
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
それでは、この議題につきまして検討したいと思いますが、非常に膨大ですので、1から11まで11項目ありますけれども、これを5つの部分に分けて、それぞれご検討いただきたいと思います。
まずはじめに、この「入-2-1」の資料で言うと、2ページから6ページまでの所。項目で言いますと、1番の「一般病棟入院基本料について」、それから2番の「特定集中治療室管理料等について」。
(中略)
最後の部分でございますが、12ページから16ページまで。項目で言いますと、3項目です。
9の「救急医療管理加算について」、10の「医療資源の少ない地域に配慮した評価について」、それから11の「横断的個別事項について」、この部分につきまして、ご意見、ご質問等がございましたら、お願いをいたします。
はい、津留委員、どうぞ。
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〇津留英智委員(全日本病院協会常任理事)
はい、ありがとうございます。12ページの9ポツ、救急医療管理加算ですね。別添資料246ページ以降ということになりますけれども、12ページから13ページにかけてですが。
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これは前回、牧野委員からもご発言があったかと思いますけれども、この救急医療管理加算に関しましては、医療現場で最も問題になっているのは、この救急医療管理加算1ないしは2をですね、保険請求した場合に、この保険審査において各都道府県で審査基準が大きく異なっておりまして、まさにダブルスタンダードの状態という、そういう算定基準の曖昧さが残っているということかなと。これは私はファクトじゃないかなと思っているわけですけれども。
ただ、今回の調査では、そういったことを調査しているわけじゃございませんので。
各医療機関、救急医療管理加算の1で請求しても査定されるので、これは2で請求するとか、2で請求してもこれは無理そうだから、これはもう請求しないとかですね、そういったものが、この248ページ以降のデータに最もバイアスがかかってるんじゃないかなあというふうに思っているところです。
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同じ救急でも、県をまたいで隣の病院にもし搬送されたら異なる算定が行われてしまってるというのはいかがなものかと思いますので、これらを是正できるような2022年改定にできたらよいのではないかというふうに思っているところです。これは意見でございます。以上です。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。
(中略)
ほかはいかがでしょうか。はい、山本委員、どうぞ。
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〇山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)
はい。これも分科会の時に発言いたしましたけども、救急入院加算(ママ)の2のほうですね。
救急医療の実態からすると、年間何千件という救急車を受け入れている基幹的な救命救急センターがある一方で、この加算の2に、すれすれ引っかかるか引っかからないかぐらいのですね、「軽症の救急患者」って言うのは変ですけれども、そういう患者を年間1,000件、そういう患者を年間1,000件くらいの救急車で受け入れている中小病院が周りを支えているっていう実態だと思います。
▼ 牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)が大きく何度もうなづく。
今後、医師の働き方改革などが始まってですね、本格的に始まって、当直医の確保、その他の問題も出てくるとですね、そういう1,000件クラスの救急車の受け入れ、1,000件以内の救急車の受け入れを行っている中小病院にとっては、1つは医師の働き方改革がダメージになるだろうし、
もう1つ、この救急医療管理加算2の見直しが、かなり大きな見直しがされると、ここもかなり強いダメージになるんじゃないかなあということを危惧するところでございます。これは意見です。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。
(中略)
はい。ほかはいかがでしょうか。はい、山本委員、どうぞ。
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〇山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)
はい。すいません、もう1個、救急医療管理加算の件なんですが、先ほど津留委員から「地域によって審査の状況がばらつきが大きい」というお話があって、実際、それもデータとして出ているところですが、
これ、じゃあ、「もう全国統一の指標」と言うと、「はいはいはい」って、一番厳しいと所にポーンと合わさるというのが世の通例でございますので、
先ほど申し上げたように、救急医療の体制の中で基幹病院を支える、相対的に軽い救急患者も診ている中小病院もあるということも、ちゃんと視野に入れてですね、何でもいいから乱暴に、この厳しい所にドーンと一本化するんでないということも、そういう配慮も必要じゃないかなというふうに思います。これもよろしくお願いいたします。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい。どうもありがとうございました。ほかはいかがでしょう。
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〇牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)
はい、牧野です。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい。牧野委員、どうぞ。
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〇牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)
はい、ありがとうございます。この救急医療管理加算に関してですけども、やはり県によって基準が違うというのはやっぱり大きな問題だと思います。
いずれ、何らかの統一するということを考えるのがやはり大きな流れかと思います。
ただ、その時の考え方なんですけども、あくまでもこれは救急患者だということで、大変、状態の不安定な患者です。
ですから、これ、入院の一時点だけで判断できるものではないということですね。それから30分後にどう変わっているのか分からない。そういった、ある程度の時間軸を加味した指標の作り方というのも工夫が必要だろうというふうに思います。以上です。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。はい、井原委員、どうぞ。
▼ ここで井原委員が反撃。厚労省の見解イコール井原委員の発言。
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〇井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)
はい。どうも、救急医療管理加算の審査についてのお話になってしまったので、・・・いかないと思いますが。
ここは前回の委員会でも申し上げましたが、委員ご指摘のように、医療機関、あるいは支払う保険者の側からの両者から再審査というものを審査機関は受け付けるんですけれども、それが前回の改定以前と比べると、いわゆる2年改定で、ある程度、入院3日以内の診療コードを記載するようなことによってですね、
そういった、いわゆる再審査の、そういう、ある言い方をすると、やり取り、トラブルの件数が半減していることは、これは事実です。
それが1つ認識として、やはり、こういうふうに少し詳しく状態を聞くようになれば、やっぱりトラブルはいくらか軽減する。僕はとても、前回申し上げましたが、前回の改定の効果は十分あったと思ってます。
ただ、今、山本委員や牧野委員からもご指摘があったように、これ、なかなか、社会保険、私がいる支払基金と、それから国保のほうからもですね、今、連絡調整の会議なども定期的に行われていますけれども、
なかなかこの審査基準をぴったり揃えるということはですね、実際の患者さんを審査委員がそこで見たわけではございませんので、どうしてもそこに書かれている、ある種の情報や、その場で行われた治療等を勘案して、各審査委員の間でその判断に差異が出てしまっているというのは、これはおっしゃるとおりだと思います。
ですから、これはやはり、差異があるということは決して好ましいことではもちろんございませんので、今、それを解消すべく、この基金の中でもですね、調整を通して、なんとかそういうところは揃えていこうという方向で努力しているっていうこともまた事実として知っておいていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
(中略)
ほかに、ご質問、ご意見等もないようでしたら、本件に関わる質疑はこのあたりにしたいと思います。
さまざまなご意見ありがとうございました。本日の議論を踏まえまして、事務局とも相談の上で、必要に応じて資料を修正した上で、次回の中医協・診療報酬基本問題小委員会のほうに報告をさせていただきたいというふうに思います。
文言等については、私にご一任いただけますでしょうか。
はい、ありがとうございます。それでは、そのように取り計らわさせていただきます。
それでは、次回の日程等につきまして事務局からお願いをいたします。
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
事務局でございます。次回につきましては、まず中医協のほうにご報告をするということを今、分科会長からいただいたとおりでございます。
分科会自体の開催については未定でございます。決まりましたら、ご連絡をさせていただきます。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい。それでは、以上をもちまして令和3年度第7回診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」を終了させていただきます。長時間にわたりまして熱心なご議論、どうもありがとうございました。
(以下略)
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