訪問薬剤の議論

日比谷公園_2021年10月28日

 厚生労働省は8月25日、中央社会保険医療協議会(中医協)の第486回総会をオンライン形式で開催し、訪問薬剤管理指導について委員の意見を聴いた。【新井裕充】

 厚労省は同日の会合に「在宅(その1) 在宅患者訪問薬剤管理指導について」と題する9ページの資料を提示。最終ページに「課題と論点」を示した。

 論点は、「今後、在宅医療の需要が大幅に増加することが見込まれる中、薬物療法に関わる関係者が、患者の服薬状況等の情報を共有しながら、最適な薬学的管理やそれに基づく指導を実施し、在宅患者が有効で安全な薬物療法を切れ目なく継続的に受けられるようにするための診療報酬の在り方について、どのように考えるか」としている。

 質疑で、診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は「末期の悪性腫瘍患者や中心静脈栄養患者以外の患者でも、例えば、ALS、心臓病、循環器疾患、あるいは特定疾患など、きめ細やかなフォローやケアが必要な患者については、月4回を超えて訪問薬剤管理指導を算定できるなどの仕組みが必要」と述べた。

 支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は訪問薬剤について「ちょっと少ないという印象」とした上で、「どのような薬局が中心になっているか、拠点薬局なのかチェーン薬局なのか、門前でもやってるのか、そういったことが分かるような資料を提示していただければ議論しやすい」と述べた。

 詳しくは以下のとおり。

【説明】在宅患者訪問薬剤管理指導について

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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 それでは、続きまして、在宅患者訪問薬剤管理指導について、事務局より、ご説明をお願いいたします。
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〇厚労省保険局医療課・紀平哲也薬剤管理官
 はい。薬剤管理官でございます。資料「総-1-4」をご覧ください。在宅患者訪問薬剤管理指導についてでございます。
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 2コマ目のほうに、「在宅医療における薬剤師の主な役割」をまとめております。
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 3コマ目のほうは、「在宅医療への移行に伴い薬局が果たす役割」ということで、

 例えば、処方の提案ということで、処方箋を頂く場合に医薬品だけでなく輸液ポンプやチューブ、注射針ですとか、無菌調剤の場合の配合を考慮した処方などについて、医師との調整等を行っているというものでございます。
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 4コマ目。「薬物療法に関する連携」ということで、外来医療から「入院時」「入院」「退院時」、それから在宅との間の連携が重要というものをまとめたもの、イメージ図でございます。
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 5コマ目は、病院薬剤師、薬局薬剤師、それから関連職種との連携が重要というものをまとめたイメージ図でございます。
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 6コマ目は、在宅患者に対する訪問薬剤管理を実際に行っている薬局数ということで、左側が医療保険、右側が介護保険について、算定を行っている薬局数でございます。
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 7コマ目は、それぞれの在宅患者に対する訪問薬剤管理指導の算定回数の実施状況でございます。

 薄い色が介護保険、下の濃い色が医療保険というものになります。
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 8コマ目は、薬局における訪問薬剤管理指導業務に関する診療報酬の点数をまとめたもの。
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 最後、9コマ目は「課題と論点」ということで、ここまでご説明しました課題と、

 「論点」としまして、

  今後、在宅医療の需要が大幅に増加することが見込まれる中、
  薬物療法に関わる関係者が、
  患者の服薬状況等の情報を共有しながら、
  最適な薬学的管理や
  それに基づく指導を実施し、
  在宅患者が有効で安全な薬物療法を
  切れ目なく継続的に受けられるようにするための
  診療報酬の在り方について、
  どのように考えるか。

 としております。以上でございます。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 どうもありがとうございました。

【質疑】在宅患者訪問薬剤管理指導について意見や要望

〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 本日は、次期診療報酬改定に向けた議論のキックオフということですので、改定に向けて検討すべき論点等につきまして、さまざまなご意見を頂きたいと思っております。

 それでは、ただいまの説明も踏まえ、全体を通じて何かご意見がありましたら、お願いいたします。

 (中略)

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 続きまして、有澤委員、お願いいたします。
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〇有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)
 ありがとうございます。私のほうからは資料の「1-4」に沿って、課題と論点についてコメントさせていただきたいと思います。

 在宅患者への最適かつ効果的で安全・安心な薬物療法の提供推進のために、資料にもございます、2コマ目、3コマ目に出ておりますけれども、在宅医療における薬剤師の主な役割を軸として、引き続き薬局が在宅業務もできるように推進していくべきと考えます。
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 特に、切れ目のない継続的な薬物療法を提供することが重要で、病院薬剤師と薬局薬剤師との入退院時のシームレスな連携は不可欠であります。

 そのためには、薬局薬剤師の退院時カンファレンスへの参加が少ない現状を改善することが必要で、参加が少ない原因は仕組みなのか運用方法なのか、そのあたりを、課題を整理した上で議論を進めていただければと思います。

 また、医療機関や病院薬剤師との連携では、トレーシングレポートなどの利活用の推進や、入院時、ポリファーマシーが解消されたあと、その減薬、調整された薬剤の状況を退院後も維持していくための取組や連携の推進も重要と考えます。

 在宅における現状の課題ですが、薬局から払い出す特定保険医療材料について、償還価格が十分でなく、薬局からの持ち出しとなる場合があることから、適切な評価となるような対応をお願いできればと思います。

 また、末期の悪性腫瘍患者や中心静脈栄養患者以外の患者でもですね、例えば、ALSであったり、心臓病、循環器疾患、あるいは特定疾患など、きめ細やかなフォローやケアが必要な患者についてはですね、月4回を超えて訪問薬剤管理指導を算定できるよう、などの、仕組みが必要と思っております。

 また、在宅における医療的ケア児の対応も重要な視点であります。特に昨今は、施設療養から自宅に戻ってやる環境整備が整いつつある中で、医療的ケア児への対応は増加しており、今後、ますます対応が必要となってきます。

 特に、医療的ケア児への調剤や服薬支援は複雑になることが多く、医療的ケア児を持つ親が適切な服薬を維持していくことは非常に負担となっているところです。

 薬剤師の介入と支援は医療的ケア児の親の負担を軽減できるなど、非常に重要なものと理解をしております。最後に、歯科医師と薬剤師、歯科診療所と薬局の連携推進も重要であります。

 例えば、在宅訪問時に、薬剤師が、チェックシートやチェックリストなどを活用して口腔チェックを行い、必要に応じて歯科医への受診勧奨や情報提供等を行うなど、歯薬連携の取組を推進することも必要と考えます。以上です。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 ありがとうございました。

 (中略)

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 それでは、次に幸野委員、お願いいたします。
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〇幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)
 はい。皆さまおっしゃったとおり、総論としては、やはり高齢化に伴って、あるいは、入院医療の機能分化、それから、地域包括ケアシステムの進展が進むにつれて、やっぱり在宅医療の需要っていうのは大きくなると思うんですが、やはり量の確保と質の確保が一番重要だというふうに思っています。

 (中略)

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 それから、訪問薬剤については、やはり地域支援体制加算を取っている薬局とかが、あるいは、地域連携薬局と認定されている所が推進してやっていくべきだと思うんですが、

 前年の改定で在宅要件が年1回から12回ということで、かなり引き上げられたんですが、果たして、これでも、ちょっと少ないんじゃないかなという印象を持っていますが、
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 件数を見ますと、かなり伸びてはきて、特に介護を中心に伸びてはきてるんで、さらなる伸びを期待したいと思います。
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 それから、訪問薬剤については、伸びてはきてるんですが、どのような薬局が中心になって在宅を行っているか、拠点薬局なのかチェーン薬局なのか、門前でもやってるのか、そういったことが分かるような資料を提示させていただければ、議論しやすいかなあというふうに思います。

 (以下略)

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