なぜ、退院しないのか。自宅に帰ると家族に迷惑をかける。かといって、施設に入るにはいろいろお金もかかる。ならば、しばらくこのままでいい。そんな人が一定数いることが厚生労働省の会議で議論になっている。家族への支援を充実させれば、もっと多くの人が自宅で療養できるという意見もあるが、医療関係者は「居心地が良いので、なんとなく満足してしまう。そういう患者さんが一定程度いるのが実態」と言う。【新井裕充】
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年々増え続ける医療費。その原因の1つが入院医療費であるとの考えから、厚労省は長きにわたって自宅での療養(在宅医療)を推進してきた。在宅医療には、これでもかというほどの報酬を付けて誘導してきた。それでもなかなか進まない。「在宅医療の推進」がうまくいかないので、厚労省は最近になって「地域包括ケアシステム」という言葉に切り替えている。
こうしたなか、厚労省は6月19日に中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)を開き、入院医療に関する調査結果について意見を交わした。前回の2018年度診療報酬改定では、入院医療から在宅医療への移行を進めるため退院の支援に報酬を付けたが、その効果はやはり芳しくない。
会議に出席した大学教授は、調査結果を細かく分析した上で「家に帰った場合の負担が大きいことをすごい懸念している。でも、施設に入ることを決定しているわけでもない状況で、なんか病院にいる」と不思議がった。教授は「医療ニーズにも対応できるショートステイがあれば、もっと在宅でやれる」と強調し、家族への支援を充実させる必要性を語った。
これに対し、長期間にわたって入院する患者が多い慢性期病院の立場から、「今が居心地が良くて、何かあれば病院で診てくれる。ご本人もそれで満足している。施設に行くと、外付けの医療を考えなきゃいけない。なんとなく満足してしまっていて、なかなか在宅が進まない」との声もあった。
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