後発医薬品の安定供給をめぐる議論で、公益委員から「現行の価格改定のルール、毎年毎年、下がっていくものを本当に適用すべきかどうか等も含めて、われわれが考えられることはないか」との意見がありました。 【新井裕充】
この日の中医協は総会のみ。約1カ月ぶりの開催です。
1.総 会(10:00~11:39)
議題は13項目。報告事項は、⑥ ⑧ ⑨ ⑪ ⑬ です。審議事項はすべて承認されました。
【議 題】
① 医療機器の保険適用について
② 医薬品の新規薬価収載について
③ 最適使用推進ガイドラインについて(審議)
④ DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について
⑤ 在宅自己注射について
⑥ 最適使用推進ガイドラインについて(報告)
⑦ 費用対効果評価の結果による材料価格及び薬価の価格調整について
⑧ 公知申請とされた適応外薬の保険適用について
⑨ 先進医療会議からの報告について
⑩ 令和6年能登半島地震による被災に伴う被災地特例措置の今後の取扱いについて(案)
⑪ DPC対象病院の再編及び退出に係る報告について
⑫ 訪問看護ステーションの指導監査について
⑬ 薬機法等一部改正法案の概要(安定供給関係)
質疑で複数の発言があったのは、② ⑫ ⑬ です。
【今回の内容】
① 6月1日収載予定の医療機器C2の1製品(TVC NIRS カテーテル)を承認
② 3月19日収載予定の11成分19品目を承認 ③ 肥満症を効能・効果とするゼップバウンド皮下注の最適使用推進ガイドラインを承認
④ 3月19日収載予定の医薬品等について次期改定まで出来高算定とする案を承認
⑤ 在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に3品目(ヒムペブジ、リスティーゴ、ファセンラ)を追加する案を承認
⑥ 一変承認等に伴うガイドライン作成・改訂の報告(オプジーボ、キイトルーダ、テセントリク)
⑦ 2品目の価格調整結果を承認(ゴア CTAG 胸部大動脈ステントグラフトシステムは変更なし、リットフーロカプセル 50mgは5,802.40円から5,584.30円に引き下げ)
⑧ 3月6日に事前評価が終了し、公知申請して差し支えないとされ、同日付けで保険適用された「セルセプトカプセル 250、同懸濁用散 31.8%」の報告
⑨ 先進医療A(腹腔鏡下卵巣癌・卵管癌・腹膜癌根治術)、先進医療B(上部消化管癌術後のアナモレリン塩酸塩経口投与、脊髄髄膜瘤胎児手術)を「適」とする等の報告
⑩ 現に利用している特例措置は令和7年9月30日まで継続利用等の対応案を承認
⑪ 再編(北光記念病院、時計台記念病院)、退出(津久見市医師会立津久見中央病院)の報告
⑫ 訪問看護ステーションに係る指導要綱の改定案等を承認
⑬ 改正後医療法第38条(重要供給確保医薬品の供給不足の発生を未然に防止するための措置)、想定され得る事例等の報告
議題②の質疑では、診療側(日薬)から「高額医薬品の販売包装単位等の問題への対応については、次期診療報酬改定の議論の中で、製薬企業の対応を促す観点からの減算も含めた薬価上の評価など、考えられる必要な措置を取り上げていただくよう、お願いしたい」との意見がありました。
支払側からは、肥満症を効能・効果とする「ゼップバウンド皮下注」について発言がありました。
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議題⑫では、訪問看護ステーションへの指導の見直しの方向性、指導要綱の改定案等が示されました。厚労省の担当者は「昨年来、訪問看護療養費の不適切な請求事案が報道されている」とし、現状を伝えた上で「教育的な視点による指導機会の確保」などの方針を示しました。
質疑で、支払側(健保連)は「営利法人の事業所が著しく増加している」と指摘した上で、「訪問看護療養費が高額化する要因が供給側に仮にあるとすれば是正する必要がある」とし、「営利・非営利と医療費の総額や単価の傾向分析」などを求めました。公益委員からは「高額な訪問看護がなぜ高額となっているかという分析がなかった」との指摘がありました。
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議題⑬は報告事項ですが、多くの意見がありました。今国会に提出した改正法案について説明する中で厚労省の担当者は「国産原薬を用いることに伴うコスト増について、例えば薬価とか、あるいは時限的補助といった方法により、どのような対応が可能かを検討する必要が生じてくる」とし、「令和8年度の薬価改定ということではなくて、将来的にこうしたことが論点となると考えている」と説明しました。
委員の発言はこの点に集中。診療側(日医)は「まずは国が環境整備をしっかりと進め、必要なら時限的補助などの対応を行い、その上で、薬価による対応の必要性や内容について、効果の見込みなどの必要な資料もしっかり揃えていただいた上で検討すべき」と指摘。支払側(健保連)からは「国策として対応するのであれば、国が費用を負担することや税制措置など、さまざまな選択肢がある」との意見がありました。
公益委員は「価格がどんどん下がっていく。採算が合わないので作りたくないという、企業としては極めて自然な行動が背景にある」との認識を示し、「後発品についても、例えば現行の価格改定のルール、毎年毎年、下がっていくものを本当に適用すべきかどうか等も含めて、われわれが考えられることはないかということをもう一度、しっかり考えていく必要がある」と述べました。
すべての議事を終え、最後に安川文朗委員(京都女子大学データサイエンス学部教授)、末松則子委員(三重県鈴鹿市長)が退任のあいさつをして閉会しました。