オンライン診療、「医師は拘束される」── 11月8日の中医協総会で診療側委員

今村聡委員(日本医師会副会長)_中医協総会(2019年11月8日)

 オンライン診療がテーマになった11月8日の中医協総会で、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は「(例えば)10時にオンラインで通信が始まるとなったら、その場所に必ず、その患者さんのためだけの時間ということで医師は拘束される」と述べた。(新井裕充)

 今回の総会では、「個別事項(その7)」と「横断的事項(その2)」の2つが議題になった。前者の中身は「医療従事者の働き方」で、後者は「ICTの利活用」などだが、さて、オンライン診療はどちらに入るのだろう。どっちでもよさそうだが、厚労省は「ICTの利活用」に入れてきた。

 何をどの項目に入れるのか、事務局も悩ましいことだろう。オンライン診療は「治療と仕事の両立支援」に入れてもよさそうだし、「病院勤務医の負担軽減」とか、「医療資源の少ない地域に配慮した評価」に入れてもよさそうだが、「ICTの利活用」の項目として出してきた。
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厚労省保険局医療課_20191108中医協総会

■「ICTの利活用をさらに進める」と日本医師会

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 オンライン診療と共に出したのが、ICTを用いたカンファレンス。現在、診療報酬上の要件となっているカンファレンスの一部について、ビデオ通話でも認められる範囲を広げる考えを示した。オンライン診療については、生活習慣病の予防や難病患者のために一部緩和する意向を示した。

 ICTを進める方針にはみんな賛成なんだから、両方OKだろうと思うのだが、そうではないのが日本医師会。質疑で、松本吉郎委員(日本医師会常任理事)はこのように述べた。
「(オンライン診療は)医療にどうしてもアクセスできないニーズに応えられない場合に活用されるべきであり、利便性のみに着目して拡大を主張するのは慎重にあるべき」

 一方、ICTを用いたカンファレンスについては、「ビデオ通話に加え、電子掲示板等を活用していく方向に賛成する。共同指導実施を阻害する要因としてスケジュール調整や物理的距離があるので、カンファレンス等におけるICTの利活用をさらに進めるためにも例外的に扱うのではなく活用していく方向とすべき」と歓迎した。

 松本委員の発言に対して支払側委員が反論し、長い議論が続いた。詳しくはこちらのPDFをご覧いただきたい。

【表紙】横断的事項(その2)_2019年11月8日中医協総会

 ▼ 2020年度改定に向けた議論は、大詰めを迎えているのか、本格化している真っただ中なのか、よく分からない。とにかく膨大な資料が出てきて、事務局の説明が延々と続くと思ったら、そのあとの質疑は介護保険部会のような発表会になる。質疑の後半になって、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が独特の口調で議論をふっかけるとスイッチオン。これに日本医師会の3委員が代わる代わる反論して炎上気味になるパターンが多いが、本質に踏み込めていない。
 こうした現委員のレベルを厚労省は計算ずみなのか、資料の出し方が非常に巧みである。細かい要件をいろいろ出してきて、「ここを変えたらどうかしら」という雰囲気の作りになっているのだが、その背後にある大きなテーマが見えにくい。矛盾したテーマを入れて試しているようにも見える。例えば、10月30日の中医協総会では、「外来診療」をテーマにして、その中に「かかりつけ医機能」と「大病院受診時定額負担」を入れてきた。しかし、やはりと言うべきか、フリーアクセスに関する発言はなかった。患者本人の意思で放棄できるものなのか、そうではない社会保障の制度なのか、そんな議論はもちろんない。
 オンライン診療は患者の利便性を高める。では、医師の利便性は損なうのか。ICTの利活用を進める方針に賛成ならば、オンライン診療に反対することは矛盾しないか。
 厚労省は今回、生活習慣病の予防や難病患者のため、という誰も否定できない理由を加えてきた。非常によく考え抜かれた資料の提示だが、議論の底は浅い。今回も欲張りムラの丸出しなのだが、オンライン診療を進めると、開業医の報酬が下がってしまうとでも思っているのだろうか。奈良時代か平安時代あたりからタイムマシンでやって来たような人たちである。

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