厚生労働省は8月3日の中医協総会で、9月収載の医療機器5製品の価格や留意事項などの承認を得たが、「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」について「健康アプリに近いのではないか」「自分で測って記録すれば済むようなことに近い」「薬剤との使い分けや併用について記載がない」などの意見があった。【新井裕充】
本品について厚労省保険局医療課医療技術評価推進室の中田勝己室長は「令和2年12月に保険適用された禁煙補助アプリに続くプログラム医療機器で、成人の本態性高血圧症の治療補助を目的に、患者ごとに行動変容を促し、生活習慣の修正を行うことで降圧効果を得ることを意図している」と説明した。
使用方法については、「患者アプリでコンテンツを利用し、1日2回、家庭血圧等を記録することで生活習慣の修正を促し、また医師アプリで閲覧し、日々の行動や診療時間外での行動を把握することで、より具体的な生活指導を行うもの」と伝えた。
質疑で、支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は「率直な感想として、この高血圧治療補助アプリは健康アプリに近いのではないか。以前の依存症治療のプログラム医療機器のときとは違う」との認識を示した上で、「今後、こうしたアプリが出た場合の線引き、判断が難しいのではないか」と述べた。
同じく支払側で患者を代表する立場の間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も「やっぱり健康アプリの部類なのではないか。健康アプリを使わなかったとしても自分で測って記録すれば済むようなことに近い」とコメントした。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「留意事項案に対象施設や算定期間の制限について記載があり、これは当然必要」と評価しながらも、「薬剤との使い分け、併用について記載がないので、このあたりについて適切な運用を担保すべく明文化いただきたい」と求めた。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
それでは早速、議事に入らせていただきます。はじめに、「医療機器及び臨床検査の保険適用について」を議題といたします。
本日は、保険医療材料専門組織の小澤委員長にお越しいただいております。小澤委員長より、ご説明をお願いいたします。
資料説明
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〇小澤壯治委員長(東海大医学部外科学系消化器外科学領域主任教授)
はい。小澤でございます。それでは、説明いたします。「中医協 総-1-1」の資料をご覧ください。今回の医療機器の保険適用はC1が2製品2区分とC2が3製品5区分です。
(中略)
11ページ目をご覧ください。販売名は「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」です。
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15ページ目の「製品概要」をご覧ください。
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本品は、成人の本態性高血圧症患者に対して、患者ごとに行動変容を促し、生活習慣の修正を行うことで降圧効果を得ることを目的とした製品です。
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11ページにお戻りください。
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価格につきましては、本品は特定保険医療材料としては設定せず、新規技術料にて評価することが適当と保材専として判断いたしました。このため、外国平均価格との比はありません。
(中略)
ご説明いたします内容は以上でございます。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
どうもありがとうございました。それでは、事務局から補足はございますでしょうか。
〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・中田勝己室長
はい、医療技術評価推進室長の中田でございます。事務局から1点、補足させていただきます。「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」について補足いたします。「総-1-1」15ページをご覧ください。
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令和2年12月に保険適用されました禁煙補助アプリに続くプログラム医療機器となっております。
本製品は、成人の本態性高血圧症の治療補助を目的に、患者ごとに行動変容を促し、生活習慣の修正を行うことで降圧効果を得ることを意図した医療機器でございます。
本品は、成人の本態性高血圧症の患者を対象とするものでありますが、既に医師の管理下で十分にコントロールされている方を対象とするものではございません。
本製品は、患者が使用する患者アプリと医師が使用する医師アプリの2つから構成されております。
患者アプリでコンテンツを利用し、1日2回、家庭血圧等を記録することで生活習慣の修正を促し、また医師アプリで閲覧し、日々の行動や診療時間外での行動を把握することで、より具体的な生活指導を行うものであります。以上でございます。
質疑応答
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして何かご質問等はございますでしょうか。はい、城守委員、お願いいたします。
〇城守国斗委員(日本医師会常任理事)
はい、ありがとうございます。今、ご説明のございましたこの本件につきましては、保材専の審議も踏まえて、いずれも保険適用を了承したいと考えておりますが、
1点、事務局から今ご説明のございました区分のCの2のですね、①の「CureApp HT」、いわゆる高血圧治療補助アプリですが、これにつきましてコメントをさせていただきたいというふうに思います。
この製品は、いわゆる、そのプログラム医療機器でございまして、C区分で保険適用されたものとしては3つ目のものというふうになります。
保材専でご検討いただいた結果、医療技術として評価されることになったと理解しておりまして、今回の決定に異論はございませんが、
今回のこの評価はですね、薬事承認された際に示された6カ月間のデータに基づくものでございまして、それ以降の有効性についてはしっかりとフォローをしていただく必要があろうというふうに思いますし、
企業がですね、チャレンジ申請をするかしないかということにかかわらず、示されましたデータによって評価の在り方を再検討する必要があろうというふうに考えます。
そもそも、プログラム医療機器の評価方法についてですが、この中医協で令和4年度の保険医療材料制度の改革に向けた議論をした結果、製品特性に応じて、いわゆる技術料として評価する、あるいは特定保険医療材料として評価をすると決めた経緯がございます。
その上でですね、「医学管理等」の部に「プログラム医療機器等医学管理加算」と「特定保険医療材料」の節をですね、新たに設定をしたということでございます。
今回、このプログラム医療機器につきましては、先行品目の評価も踏まえて、今回の評価となったということは理解はしますが、
そもそもですね、技術料として毎月一定額を別途、保険財源から支払うべきなのか、それとも特定の技術料に包括をして評価をすべきなのか。
またですね、特定保険医療材料として評価することによって個別の価格算定を行った上で、さらにはですね、市場拡大した場合の実勢価格などを踏まえて実勢価格のですね、設定ができるようにするのか。
といった視点で考えられるというふうにしますと、次回の改定の際には、前例にとらわれず、本製品の評価については見直しを行うことも含めて専門組織からの意見などに向けて検討していただく必要があるとコメントをさせていただきたいというふうに思います。
また、こういった患者さんへの行動変容を行うようなプログラム医療機器につきましては、導入時に特材としての価格、点数を設定する方法もございますし、
それに加えて、一定期間の使用によるアウトカム評価をしっかりと導入することも必要であるということも付け加えさせていただきたいというふうに思います。私のほうからは以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございました。それでは佐保委員、お願いいたします。
〇佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)
はい、ありがとうございます。私も城守委員がご発言された「CureApp HT」高血圧治療補助アプリについて発言をしたいと思います。
保材専の議論について異論はございませんが、率直な感想として、この高血圧治療補助アプリは健康アプリに近いのではないかなというふうに感じました。
以前の依存症治療のプログラム医療機器のときとは違うというのが実感として持っています。
今後、こうしたアプリが出た場合の線引き、判断が難しいのではないかというふうに考えます。私からは以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございました。松本委員、お願いいたします。
〇松本真人委員(健康保険組合連合会理事)
はい、ありがとうございます。ご提案のありました医療機器と臨床検査の保険適用そのものについては異論はございません。
その上で、プログラム医療機器の保険上の取扱いに関する総論的な確認と、今も出ておりますけども、「CureApp HT」についてコメントさせていただきたいと思います。
まずプログラム医療機器の保険上の取扱いについては、今回の資料にはございませんけども、今年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」において、「DXへの投資」として「デジタルヘルスを普及するため、承認アプリを活用した際の診療報酬上の加算を行う」と記載がございますけども、加算を付けるかどうかはこれまでどおり中医協で個別に判断するという理解でよいかを確認したいと思います。
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もちろんデジタルヘルスの普及は必要であり、医療の質の向上を評価することも否定はいたしませんけども、薬事承認を受ければ自動的に加算が付くという趣旨ではなく、先ほど城守委員からも言及がありましたけども、令和4年度の保険医療材料価格制度改革で提示された考え方に沿って実施されることでよいのかについても改めて確認させていただきたいと思います。
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次に、「CureApp HT」でございますけども、この製品の有用性について、資料の15ページを拝見いたしますと、生活習慣指導に上乗せした場合に効果が高くなり、途中から薬剤と併用しても効果の差が持続するということになっております。
つまり、初期の高血圧について薬物治療を開始する前にしっかり生活習慣の指導をすることがポイントだろうというふうに理解いたします。
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一方、資料11ページの「留意事項案」では、対象施設や算定期間の制限について記載があり、
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これは当然必要なことだとは思いますけども、薬剤との使い分け、併用について記載がございませんので、このあたりについて適切な運用を担保すべく明文化いただきたいということを要望いたします。以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございました。松本委員からご質問ありましたけれども、あとで事務局よりご回答をお願いいたします。間宮委員、お願いいたします。
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
はい、ありがとうございます。私も高血圧治療補助アプリの件についてですけども、これ私も、やっぱりその健康アプリの部類なんじゃないかなというふうに思いますし、
健康アプリ、使わなかったとしても自分で測って記録すれば済むようなことに近いのかなっていうところがあって、
ただ今回、エビデンスが確認できたっていうことで、承認されたということなので、それについては受け入れたいとは思いますけれども、
これやっぱり、ほかの、これ、比較としてはですね、普通のその生活の、その指導ですかね。何だ、生活習慣指導のみとアプリを、このアプリを使った比較っていうことなんですけども、
ほかの健康アプリとの比較っていうのがないので、ほかの健康アプリと、このアプリ使ったときって同じようになるんじゃないか、なんて、ちょっと思ったりなんかするんですよね。
今後ですね、プログラム医療機器、たくさん出てくると思うんですけど、慢性疾患っていうのはですね、短期の、
今回の場合は、初期の・・・
<音声トラブル>
・・・じゃ、結果が出ないことって往々にしてあるので、長期的にケアできるようなプログラム機器のほうが、むしろいいんじゃないかなというふうに思っています。
これちょっと、1つ質問なんですけども、6カ月以降は無料で使えるんですかねっていうところをちょっと聞きたいというふうに思います。
で、まあ、あの・・・
<音声トラブル>
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
間宮委員、ミュートになっておりますけれども、お願いします。
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
すいません。どっから、あれでしたっけ?
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
6カ月後は無料になるかというご質問をいただきました。それ以降、お願いいたします。
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
6カ月以降は無料になるかっていう質問で終わりでいいです。はい。すいません。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。飯塚委員、お願いいたします。間宮委員のご質問についても、あとで事務局から回答をお願いいたします。飯塚委員、お願いいたします。
〇飯塚敏晃委員(東京大学大学院経済学研究科教授)
はい、ありがとうございます。私も高血圧症の治療補助アプリについて質問なんですが、これ、もし医薬品であれば既存薬との有効性・安全性を比較するということになろうかと思いますけれども、今回は医療技術として適用というふうに伺いました。
その場合にですね、既存の降圧剤との代替関係というのがありうるのかなあというふうにも思ったんですが、
有効性・安全性に関して、その既存の降圧剤との比較というものっていうのは、こういうふうなプログラム医療機器の場合はなされるのかどうかなのかと。
もしそうなった場合はどういう評価だったのかということを教えていただきたいと思います。以上です。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。ほかに、ご質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは事務局、お願いいたします。3名の委員の方からご質問をいただきましたので、ご回答をお願いいたします。
〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・中田勝己室長
はい。事務局でございます。まず城守委員からご意見いただきましたプログラマ医療機器につきまして今後、見直しを行うことも含めて、専門組織からの意見なども含めて今後、検討していただく必要があるのではないか。
また、一定期間の使用によるアウトカム評価をしっかりと導入することも必要ではないかとのご意見をいただきました。
また、佐保委員からも、このような健康アプリとの線引き、慢性疾患の場合のこういったアプリの考え方について今後、考えていく必要があるのではないかというご指摘をいただいたとこでございます。
私ども事務局といたしましても、今回のプログラム医療機器の使用につきまして、この使用実態につきまして今後、情報収集にしっかりと努めさせていただきたいと思っております。
また、そういった情報収集に努めながら専門組織のご意見も伺いながら、今後、プログラム医療機器の在り方について検証できるよう対応してまいりたいというふうに考えております。
また、続きまして松本委員からご指摘のありました、まず1点目。今年6月に閣議決定されたグランドデザインの中で、アプリを活用した際の診療報酬の加算を行うと、されると記載がありますが、これまでどおり、中医協で判断されるという理解でよいのか、令和4年度改定で整理した考え方に沿って実施することでよいのかとのご質問をいただきました。
この点に関しましては、事務局といたしましては、プログラム医療機器の評価につきましては、これまでどおり令和4年度改定で整理した考え方に基づいて中医協で個別に判断していただくものと考えております。
また、松本委員からは2つ目のご質問といたしまして、今回、初期の高血圧について薬物治療を開始する前にしっかり生活習慣の指導をすることがポイントであるというふうに理解を、ポイントであるということでございますが、こういったことについて留意事項につきまして薬剤との使い分け、また併用について記載がないので適切な運用を担保すべきではないかとのご質問をいただきました。
この点につきまして、事務局といたしましては、既に医師の管理下で十分にコントロールされる方が対象になるものではないというふうに考えておりますので、その点につきましては十分に配慮しながら適切に運用してまいりたいというふうに考えております。
また、間宮委員から今回6カ月までという制限のついた保険適用となっておりますが、6月以降の算定について、これを無料で使えることができるのかというようなご質問でございます。
今回、6月以降につきましては、保険適用上の効能を期待するものではございません。
また今回、企業のほうからも、6月以降につきましてはチャレンジ申請ということで、新たに有効性を証明するためのデータ収集を行うというふうに伺っています。
したがいまして、事務局といたしましては、今後、企業等が行うチャレンジ申請のデータ収集等にご参加いただく方もいらっしゃると思いますが、そういった枠組みの中でこういった方が参加されて利用されるということはあり得るのではないかなというふうに考えております。
その際の費用負担のほうにつきましては、それぞれ個別の判断の中で行われるというふうに考えております。
また、飯塚委員から既存の降圧薬、お薬との代替性について今回の治験データも含めてどのように評価されたのかのご質問であります。
今回、薬事承認の際は治験のプロトコールを徹底しまして、まず最初は、お薬を使っていない状態で3カ月、血圧がきちんと下がるのかという評価をいたしております。
3月目以降につきましては、医師の判断で、やはり降圧薬を使わなければいけないという状態の方には使うと。そうでない方は使わないで継続するというプロトコールで実施いたしまして、その6カ月後、お薬を使った場合についても、そのプログラム医療機器の降圧効果の有効性が継続されたということが薬事承認時のデータで確認をされているとこでございます。
こういった評価の在り方はおそらく個々、個別の病態の在り方とおそらく関わってくるものと考えてますので、今回はそういった判断で行われたものというふうに理解しております。以上でございます。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかにご質問、あるいは、ご意見等ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。それでは、ほかにはご質問等ないようですので、本件につきましては中医協として承認するということでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、説明のあった件につきましては中医協として承認したいと思います。
小澤委員長、どうもありがとうございました。
(以下略)