中央社会保険医療協議会は8月2日の総会で、厚生労働省が示した、医療DXの推進に伴う24年度診療報酬改定の時期の「後ろ倒し」について、6月1日施行とする案を了承した。薬価はこれまで同様、4月1日に改定する。薬価が4月、診療報酬が6月と、改定時期が2度に分かれることに対して、診療側の中でも薬剤師・薬局サイドから懸念の声が上がる。【本根優】
この対応は、医療機関や薬局、ベンダの業務負担が短期間に集中していたことを受け、平準化することが狙いだ。4月26日の段階で、松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「医療現場では半年程度、価格交渉期間が必要。9月に薬価調査を実施し、翌年4月に改定するサイクルを前提とすれば、4月に施行しないと薬価制度の根幹を揺るがすことになりかねない」と指摘。さらに「薬価収載のタイミングは数ヵ月に1回あり、4月改定を動かせば全体のバランスが崩れる懸念もある」と述べていた。結果的にこの主張が通り、薬価は4月改定で据え置かれた。
8月2日の議論で、長島公之委員(日本医師会常任理事)は、負担分散で恩恵を受けるベンダが保守費用やリース料などを引き下げる仕組みの担保が必要としつつ「医療機関にどのようなメリットがあるか、ひいてはどのように患者に還元されるか明確化する必要がある」と発言した。
森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「患者の負担金額が4月と6月で2回変更になる。その準備への現場の負担や影響が読めず不安だ」と述べ、周知など丁寧な対応を求めた。
森委員は改定頻度が2回になることについて、とりわけ不安視した。日薬には「パパママ薬局」と呼ばれる、小規模事業者が多く加盟している。大手調剤チェーンなどと比べて、システム改修の面で機動的な対応が難しい。関係者が語る。
「今まではレセコンを同時に更新できたことが、薬価改定の対応で金を払い、調剤報酬対応でも金を払うことになるのか。それでは金銭的な痛手を負う」
さらに、患者への説明が難しいことについても、困惑を隠せない。最近の傾向の通りに薬価が引き下げられ、診療報酬や調剤報酬が上がることになれば、窓口負担が「4月に一旦下がり、6月に今度は上がることをどう患者に説明するのか。行政からしっかり周知してもらわないと、現場は混乱して大変だ」と憂慮する。
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