「公と民を煽るような考え方が出ている」 会見で全自病の小熊会長

小熊豊会長_全自病会見_20190710

 全国自治体病院協議会(全自病)の小熊豊会長は7月10日の定例記者会見で、日本医師会との意見交換会での議論を紹介した上で、「公と民を煽るような考え方が出ているが、できれば今まで一体化して地域医療を守ってきたので、そういった考えを持続していただきたい」との見解を示した。【新井裕充】

 この日の会見のテーマは、①国への要望について、②「会計年度任用職員制度」について、③日本医師会との意見交換会について──の3項目。

 このうち①については、次期改定や医療提供体制などに関する要望書を8日に厚生労働省などに提出したことを報告。②については、同制度によって「人件費が非常にかさむ。病院の規模によっては数千万から数億円かかる」と指摘し、財政的な負担などを課題を挙げた。

 ③については、総合診療専門医に関する新たなプログラムのほか、公・民の競合などをめぐり意見の対立があったことを伝えた。

 会見に同席した竹中賢治副会長(福岡市立病院機構理事長)は「地域の中で病病連携をずっと連綿として築いてきたわけだが、このような対峙的な姿勢が表に出てくると、病病連携体制が今後、果たしてうまく機能するかどうかをわれわれは危惧せざるを得ない」と述べた。

 詳しくは以下のとおり。

[司会:全自病事務局長・石黒久也氏]
 それでは、定刻になりましたので、7月の記者会見を始めたいと思います。今ちょっと前に常務理事会がありまして、先月20日の総会以降ですね、4人の新しい常務理事さんを迎えてですね、やったところでございます。

全自病事務局長・石黒久也氏_全自病会見_20190710

 本日の記者会見のほうにつきましては、国のほうへの診療報酬の関連の要望を持ってまいりましたので、その関係ですとか、医師会と意見交換をやりましたので、その関係等々についてとなっております。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 では最初に、会長。
.
[小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)]
 はい、お忙しいところ、ありがとうございます。

 まず、国への要望についてでございますけど、実は7月8日にですね、われわれの母体であります「(全国自治体病院)開設者協議会」、首長のほうですね。それの役員が決まりました。

 前は、福井県知事が会長をしておりましたが、西川(前)知事ですね。選挙で交替になられまして、やっとこのたび決まりまして、鳥取県知事の平井伸治知事に会長にご就任いただきました。

 (中略)

 総会を開いたあとですね、厚労省と総務省のほうに新しい会長、副会長共々、要望に行ってまいりました。

 要望書、お手元にありますですかね。これの内容を抜粋したことを、それぞれお願いしてまいりました。

 厚労省は吉田(学)医政局長、それから総務省はですね、新しく就任された(自治)財政局長とか審議官とか、行ってまいりました。

 それで、だいたい知事のほうからエッセンスをご説明いただきまして、いろいろ改革が進行中であるけれども、財源の確保とかですね、それからいろんな今後の医療提供体制の在り方というものについて自治体病院の役割を見直して、見つめてですね、ご支援をいただきたいというお願いをしてまいりました。

小熊豊会長2_全自病会見_20190710

 それから、実は来年の4月からですね、自治体の非常勤職員に対して「会計年度任用職員制度」というのが始まります。要は、自治体の正職員に対して臨時職員というのがあるんですけれども、正職員と臨時職員の差がひどいという問題とか。

 それから、同一労働同一賃金という考え方、それから非常勤の在り方そのものがですね、きちっとされてなかったということもあって、総務省のほうで、こういう新たな「会計年度任用職員制度」というのを行うということであります。

 簡単に言いますと、特別の経験あるいは専門的知識を持った特別職。この方が1つですね。

 それからもう1つは、正職員が急にいなくなって、その臨時で採用する方。

 もう1つは、いわゆる非常勤職員でフルタイムで働く方とか、パートで働く方。

 こういうパートとフルタイムで働く方などを「会計年度任用職員制度」というふうにいたしまして、公務員としてのいろいろな業務の規約があるわけですけど、それを守っていただいた上で、年度ごとにですね、退職金とか社会保障関係の補助というか、何て言うんですか、経費をみると。

 (中略)

 そういうシステム自体はですね、われわれとしても、そういった職員のモチベーションとかですね、働き方を考える上で異論はないんですけれども、

 いわゆる、今、言いました退職金、それからボーナス、いろんな関係で、人件費が非常にかさむということになります。

 内々でお話を聞いたところでは、規模によって違いますけれども、数千万から数億かかるというような、試算された病院からのお話ですけれども、聞いています。

 そういう財源がないのに、どうするかということで、今日、常務理事会でも話し合ったところでございます。

 ただ、総務省としてもおそらく、いろんなデータ、そういう試算を見ながらですね、今後、対応はしていくつもりであるというようなことも耳にしておりますけれども、

 実際に、われわれとしましてもですね、会員病院に対して今すぐアンケート調査をまずしようと。で、実際にどういうような考えで、どれぐらいの人件費のアップがあるか。それをデータにしたい。

 いま現在ですね、私どもが調べた病院に勤務する非常勤の数。それは常勤換算でいいんですよね?
.
[全自病事務局]
 そうです。
.
[小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)]
 常勤換算にしてありますけど、2万6,972人、自治体病院にはいると。これは独法は除いておりますけれども、独法はこの制度に入らないので除いてますけれども、自治体病院としては2万6,972人、常勤換算で非常勤の方が勤務されているということで、

 それをどういうふうにですね、各自治体病院で対応を図るかということをアンケートをして、それを総務省に提出したいというふうに考えておるところです。

 それから3番目のですね、「日本医師会との意見交換会」、これ、いつでしたっけ。
.
[司会:全自病事務局長・石黒久也氏]
 7月3日です。
.
[小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)]
 7月3日に日本医師会と、われわれ(全国)自治体病院協議会が年に2回、話し合いをもとうということで、やっているんですが、今回1回目でございます。令和元年度ですね。

 そのテーマの1つは、総合診療専門医の話でして、これはわれわれ自治体病院と国診協(全国国民健康保険診療施設協議会)のほうがお話しをしたんですが、

 向こうには羽鳥(裕)先生(日本医師会常任理事)がいらっしゃいますので、委員長をやってらっしゃいますけれども、ちょっとお話しをしたと。あとで内容を報告しますけれども。

 2つ目がですね、今村(聡)副会長からですね、働き方改革について、それから7月1日に(厚生労働省労働基準局長から)出た宿日直(医師、看護師等の宿日直許可基準について)と、それから研鑽(医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について)の問題が、松本(吉郎)常任理事からお話しいただいたということです。 

 3番目がですね、中川(俊男)副会長から、(厚労省の)「地域医療構想(に関する)ワーキンググループ」で中川先生がお話しになった、自治体病院あるいは公的病院をめぐる(地方)交付税の関係ですね。それのお話があって、それに対するわれわれとの話し合いということです。

 ま、はっきり言いますと、1番目と2番目はあまり問題はなかったんですが、3番目が、意見が大きく分かれたというところであります。

 最初のですね、総合診療専門医につきましては・・・、これ(資料「多様で将来性のあるキャリア)も紙ないですよね? ちょっと急いで配って。

全自病会見資料_2019年07月10日

 すいません、今、お配りしますけれども、「(日本)プライマリ・ケア連合学会」のですね、1階部分と2階部分、サブスペシャリティとして、「世界標準の高い専門性と学術性を備えた家庭医」(新・家庭医療専門医)、これが2階のサブスペシャリティの1つ。

 もう1つは、「病院総合診療専門医」、それからもう1つは、在宅とか緩和ケアとかをして、総合診療をベースにした特定の領域と。この3つのことをお考えになっているというお話を頂いてまして。

 それで、国診協とわれわれとが従来から、地域包括医療・ケア認定システムというのをつくってたんですが、そこに、現実的に今、働いてらっしゃる総合的な診療に携わっていらっしゃるベテランの先生方ですね、

 (総合的な診療に携わっているベテランの先生方)がおそらく、こういう2階の部分からPC(プライマリ・ケア)学会が提案するようなプログラムにもう一度入り直してですね、こういうのを目指すというのはなかなか難しいというふうにわれわれは考えていまして、

 われわれの従来からやってきた、こういう認定医システムですね、使って、この1階部分にそういうベテランの先生方を暫定的と言うんでしょうか、何て言いましょうか、ここ(1階部分)に入れられないかと。

小熊豊会長3_全自病会見_20190710

 そして、そういう先生方の中で、さらにそれを極めたいという先生がいれば、プログラムを独自に考えまして、2階部分の専門性の高い所を目指すという、こういうのを、新たに提案したところでございます。

 で、もちろんダブルボード(複数の専門医資格取得)とかですね、いろんな、よその専門医を持っていた人が総合診療医に来るとか、そういう問題もお話しをしたところであります。

 われわれといたしましてはですね、ですから、ま、実現するかどうかは分かりませんけれども、そこのところをですね、しっかりと新たに、こういう「(日本専門医)機構」の意向に、

 意向と言いましょうか、研修内容に沿ったものにつくり直してですね、提案をしたいということで、早速、われわれ自治体協議会側からの代表の者と、それから国診協の代表の者が集まって、そういったことを検討する会、名前はつくってないんです。

 (事務)局長、名前は付いていましたっけ?
.
[司会:全自病事務局長・石黒久也氏]
 まだですね、「全自病協・国診協 総合診療専門医 検討委員会」みたいな。
.
[小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)]
 そういう名前で。

 従来から、そういうシステムは運用されてたんですけど、まだ、やっぱり現在の「(日本)専門医機構」の体質って言うんでしょうか、基準にちょっと満たないところもあるので、検討に入るという予定でおります。それが2番目ですね。

全自病会見_20190710

 3番目がですね、先ほど言いましたように、公立・公的(病院へ)の国の交付税とか、あるいは補助金ですね、そういったものがあるわけですけれども、

 それに対して、中川先生(日本医師会副会長)から細かい批評を頂きまして、まあ、そういったことで、地域に戻ってですね、地域の将来に向けた効率的で持続的な医療提供体制のお話に、こういう交付税の問題もあるので、しっかりと公立・公的の役割ですね、それをディスカッションして、いい体制をつくってほしいというお話があったわけですが、

 まあ、われわれとしましてはですね、公立・公的が確かに、そういう交付税は入っているわけですけれども、入るということは、それなりの仕事をわれわれが法律で定められたことをやっているということの証でもあって、で、そこらのことをですね、しっかりと、何ていうのかな、認識していただきたいというお話でした。

 それと、そういう、今、公と民をですね、煽るような考え方が出てるわけですけれども、できれば、今まで一体化して地域医療を守ってきたわけで、そういった考えをですね、持続して持っていただきたいというようなお話をしたところです。

 なんか、竹中先生、追加ございますか。
.
[竹中賢治副会長(福岡市立病院機構理事長)]
 はい、あの、
.
[小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)]
 非常に、怒られた先生でございますので(笑い)。
.
[竹中賢治副会長(福岡市立病院機構理事長)]
竹中賢治副会長(福岡市立病院機構理事長)_全自病会見_20190710 怒っておりませんけれども(笑い)。

 地域医療担当の副会長の竹中でございます。今度、地域医療のワーキンググループ、第22回(6月21日)の(参考)資料(中川構成員提出資料)で、

 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000520443.pdf

 今、会長がおっしゃったように、繰入金の実態というのを中川副会長が出されました。ここに至って、地域医療構想の方向性がだいぶ偏ってきつつあるんじゃないかということを危惧したりしております。

 すなわち、地域医療構想というのは本来、2025年に向けての地域での役割を各医療機関がきちっと認識し、そして、効率的な医療展開をきちんとセットいたしましょうよという会であったはずなんですが、

 最近の医師会の考え方では、地域で公と民が同じ医療機能を持っていたら、その実績において公のほうが同等ないしは以下であった場合には、公のほうに退いていただこう。なぜなら、これだけの繰入金をもらっているからという論理が出てきたんですね。

 しかしながら、先ほど会長がおっしゃったように、繰入金というのはそもそも高度救急、高度専門医療等々の高度医療を展開するために必須なものでございますし、

 また、医療過疎地におきましては、医療そのものを恒常的に変化するための必要な基金というほうに、われわれは考えているわけでございまして、必ずしも赤字補填という概念ではない、ということをまず理解していただきたいと思っておるところでございます。

 そういった中で、地域での公と民が、医療機関があって、それの実績を開示させるがごとく比べていくというやり方は、

 われわれは今まで、そういった高度医療、高度専門医療の中で、いわゆる棲み分け的に機能を分けてきたんでございまして、それを基本に、地域の中で病病連携をずっと連綿として築いてきたわけでございます。

 その他、そのような対峙的な姿勢が表に出てきますと、そのような病病連携体制が今後、果たしてうまく機能するかどうかということを、われわれは危惧せざるを得ない。それが1つございます。 

 もう1つは、診療実績がもし劣った場合と言うが、その「劣る」という理由が将来の数が少ないという数的なことで比較なさるんですけれども、やはり質的なこともきちんと比較する材料があっていいのではないかと思っておりますし、
 
 われわれがずっと行ってきた高度医療、高度専門医療の部分においては、かなりグレードの高いことをやってきたはずでございますので、そういった数だけでの評価をしてしまうのはいかがなものかという点もございますし、

 それを最終的に決断されるのは、地域医療構想調整会議でございますということで、それはお互いに利害関係のある所が集まっての調整会議でございますので、

 そういう中で、公立病院の存在意義というのは果たして議論できるのかどうかということをわれわれ、危惧いたしているところでございます。

 ま、いろいろなことがございまして、公立病院は、全自病協といたしましては、地域での公立病院の必然性をもう少し、またアピールできるような発信をですね、今後とも地道にやっていこうということを、今日の常務理事会でも確認し合いましたので、近いうちにまた、そういった発信を改めてやっていこうと、地道な活動をやっていこうというところでございます。以上でございます。
.
[小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)]
 今、竹中先生がおっしゃられたようなことは、ワーキンググループの中でも私も時々、投げかけておりまして、何が代替性があるのかとか、誰が、何て言いましょうか、今後の医療の在り方を決めるのかとかですね、そういう投げかけはしておって、

 最終的には、「いろいろなことは地元に戻って地域医療構想の調整会議でやってください」というお返事を頂くんですけれども、

 なかなか、そこにですね、病床の8割を占める民間(病院)のプランが出てこないと。その中で、2割程度の公立・公的病院のプランを基に、それから診療実績を基にですね、「ただ数だけを基に」と言ってもいいかもしれませんけど、

 これは本当に、未来の、将来の医療提供体制が描けるのかという問題は感じている、正直に言って感じているところであります。

 もちろん、われわれ自治体病院もですね、公的病院も非効率性があったり、それから、あるいは漫然とこう、旧態依然のかたちでダラダラとやっているというようなことがあれば、それはもう当然、考えるということはやぶさかではありませんけれども、そういった意味で、しっかりとですね、調整会議で見直していただきたい。

 あと1つは、やっぱり住民のですね、視線というかな、それがやっぱり少し、このワーキンググループの、あるいは調整会議の中には足りないんじゃないかな、というふうなお話が今日も常務理事会で出ておりました。やっぱり、医療を受ける住民の視点というのをもう少し考えたほうがいいんじゃないかというお話ですね。

 まあ、そんなことで、いずれにしましても、調整会議でですね、われわれ公立病院・公的病院がですね、しっかりと自分たちの行うべき医療を見つめ直してですね、地域に貢献するということを考えておりますので、それが民間との間がギクシャクしてですね、今、比較的、スムーズに連携なり地域の医療体制を維持できているのが壊れてしまうという心配を今日は皆さん、常務理事の先生方がお話しになっていたというとこですね。

 まあ、そんなとこであります。以上、何かご質問あれば。

 (後略)

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