地域包括ケア病棟の利用方法が議論になっている。6月7日に開かれた厚生労働省の会議で、保険料を支払う立場の委員が「「自院の(急性期)病棟からの転棟先として利用するのは、この病棟を置いた趣旨からすると、いかがなものか」と疑問を呈した。これに対し、医療系の委員がいっせいに反発。「自院の急性期病棟からの転院先としての利用が本当に悪いのか。非難されるべきではない」との意見や、「保険制度の中で当たり前のことで、これは医療経営だ。自院の中で回していくやり方は妥当」などの声が上がった。【新井裕充】
厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の今年度第2回会合を開き、「2018年度調査結果(速報)」を示した。
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それによると、地域包括ケア病棟を届け出ている理由のうち、「経営が安定するため」との回答(23.1%)が2番目に多かった。
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また、同病棟の利用方法については、「自院の急性期病棟からの転棟先として利用している」が最も多く、63.8%だった。
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地域包括ケア病棟、「要件の見直しを考えてもいい」と支払側
質疑で、支払側の松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)は「正直に『経営が安定するから』と回答をいただいた所に、大変、敬意を表している」と皮肉を込めた上で、「自院の(急性期)病棟からの転棟先として利用しているというのは、本来、この地域包括ケア病棟を置いた趣旨からすると、いかがなものか」と苦笑した。
その上で、松本委員は「この点についてもひとつ、要件の見直しとか、そういうことも一度考えてはいいのではないか」と問題提起した。
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「医療経営だから、自院の中で回すのは妥当」と診療側
これに対し、診療側の牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)は「自院の急性期病棟からの転院先としての利用が本当に悪いのか。7対1という大変お金のかかる病棟から、そうでない所に移すことは意義があることではないか」と反論した。
この発言に石川広己委員(日本医師会常任理事)が続いた。「保険の制度の中で、患者さんが適切な医療、看護ができるところに回るということは当たり前のことで、これは医療経営だ」と牧野委員を援護した上で、「私の所もそうだが、自院の中で患者さんの重症度に合わせて回していくやり方は妥当だと思っている」と述べた。
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「待機場所なら不適切なので直していく」と森光課長
一方、同じ診療側の委員から「(地域包括ケア病棟は)二極化している」と保険者側に一定の理解を示す発言もあった。
これを受け、厚労省保険局医療課・森光敬子課長は「(地域包括ケア病棟が)待機場所になっているというようなことがあれば、それはちょっと不適切なことだろうと思っている」との認識を表明。「不適切な部分があれば、それは直していくということになるだろう」と述べた。
この問題に関する質疑の模様は、次ページを参照。