令和4年度の診療報酬改定に向けて厚生労働省は10月1日、DPC制度に関する最終報告をまとめた。入院元による違いを踏まえ、「例えば、診断群分類を医療資源投入量に基づいて区別することも考えられるのではないか、という指摘があった」と記載している。【新井裕充】
厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」の令和3年度第8回会合をオンライン形式で開いた。
DPC制度の見直しに向け、同分科会下部の「DPC/PDPS等作業グループ」の班長を務める山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)が検討内容を報告し、委員の意見を聴いた。
一定の基準から外れるDPC病院について、委員から「DPC制度に大きな影響を与えていない」「この制度はこのままでいい」との意見があったが、リハビリ目的の患者をいったんDPCで受け入れるようなケースについて、「制度を変えていく必要がある」との声もあった。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
続きまして、「作業グループからの最終報告について」につきまして議論を行いたいと思います。まず、事務局と、それぞれの作業グループの班長より資料の説明をお願いいたします。
〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
事務局でございます。資料は「入-2」。それから「入-2」の参考の1で診療情報・指標等作業グループにおける検討内容のスライド集。
また、「入-2」の参考の2では、DPC/PDPS等作業グループにおける検討内容の資料集ということで構成をしてございます。
また「入-2」、後ほど班長よりご報告がいただけると思いますが、中間とりまとめをした際、中間報告をした際の記載から変更されている部分については下線を引くというような修字上の工夫を行っているということをまず事務局から補足させていただければと思います。以上でございます。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。
(中略)
それでは、続きまして、山本班長から資料の説明をお願いいたします。
【説明】DPC/PDPS等作業グループにおける検討内容について
〇山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)
はい。それでは、DPC作業グループからの最終報告でございます。
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「入-2」の11ページ下段から始まりますが、12ページに進んでいただけますでしょうか。
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令和4年度診療報酬改定に向けた分析でございますが、医療資源投入量の少ない病院と、それから平均在院日数が短い病院について分析を行っています。
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その12ページの下のほうの枠囲みの中でございますが、分析の結果としてはですね、令和2年度診療報酬改定前の分析と同様に、令和2年度のデータにおいても、疾患の頻度が高くて、かつ医療内容の、診療の標準化が進んでいると考えられる内科系疾患、急性心筋梗塞、脳梗塞などですが、
このような疾患について「手術なし」、それから「手術・処置等1なし」の割合が高い病院が存在するということを確認しています。
それから、この枠囲みの3つ目の丸の所に書いておりますけれども、「手術・処置等2なし」を加えて検討をしますと、「なし」「なし」「なし」の割合が高い病院について分析を行ってみたところ、
4つ目の丸にありますように、医療資源投入量とか医療資源の内訳について、明らかな傾向を見いだすことは困難でありました。
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次に、13ページの上のほうですけれども、一方で、じゃあ「手術あり」という場合はどうなんだろうかということの検討をしています。
手術、それから処置等がありでも、その中身がいろいろじゃないかということで検討しましたが、例えば、脳梗塞におけるエダラボンの平均使用日数、あるいは急性心筋梗塞等の
「手術あり」で、しかも97番のその他のKコードが選択されているようなものについて分析を行いましたが、その内容について、ここに記載をしています。
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それから、その下のほうですけれども、中段の②という所。
今度は在院日数の短い病院についての分析でありますが、DPC対象病棟の退出経路が「転棟」である患者の割合は、DPC対象病院全体で4%であったところですが、自院の他病棟への転棟割合が高い病院も存在していました。
このように、自院他病棟への転棟割合が高い病院では、医療資源投入量が少なく、かつ在院日数が短い傾向があるということから、転棟割合の高い病院に着目して医療資源投入量、それから医療資源の内容、内訳について分析を行ったんですが、
特に何か共通するような傾向があるというわけではなかったということであります。
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それから、13ページの下のほうですね。特別調査。令和3年度特別調査を行ったということでございます。
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14ページの真ん中辺の丸でございますけれども、
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この特別調査の結果を踏まえて、ほかの医療機関からの転院患者について、一時的にDPC対象病棟で受入を行い、自院の他病棟へ転棟させているという実態が見受けられたことから、患者の入院経路に着目した、他病棟へ転棟時期というものについての分析を行っています。
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分析内容については、参考資料の2の81ページ以降が該当部分になって、
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特に82ページ以降は、脳梗塞を例にとった転棟時期の分析を示してございます。
他院からDPC対象病棟に転院してきた群、それから自院のDPC対象病棟に直接入院した群と、それぞれから、この地域包括ケア病棟への転棟時期というのを比較してみますと、82ページは、この入院後の日数。
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それから、83ページは入院期間Ⅰとの差。
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それから、84ページには入院期間Ⅱとの差で示していますけれども、84ページで見ていただくと、お分かりのように、他院から転院してきた群。
それから自院へ直接に入院した群のいずれも入院期間Ⅱちょうどで地域包括ケア病棟に転院をしている割合が多いということが分かります。
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同じように、回復期リハビリ病棟への転棟時期を分析したものですけれども、参考資料2の86ページでありますが、他院から転棟してきた群では、入院期間Ⅰよりも早く回リハ病棟へ転棟している症例が多いですが、
一方、自院に直接入院してきた群では、入院期間Ⅰよりもあとで転棟している症例が多いということが分かります。
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90ページ以降は同様の分析を急性心筋梗塞、股関節・大腿近位の骨折ということで分析を示しています。
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また、症例数の多い診断群分類ごとに分析を行った結果が100ページ以降ですけれども、脳梗塞で症例数が多かった診断群分類について、他院からの転院、それから自院への直接入院群、それぞれの転棟時期、医療資源投入量を分析したところ、
下のほうの医療資源投入量について比較していますけれども、他院からの転棟・転院群では入院初期の医療資源投入量が低いことが見て取れます。
また、股関節・大腿近位の骨折で症例の多かった診断群分類について同様の分析を行っていますが、
こちらでは、他院からの転院群と、それから自院への直接入院群と、それぞれの比較をしたところ、2つの群で傾向に大きな違いはなかったというところでございます。
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続いてですね、「入-2」の15ページの中ほどです。「特別調査および分析を踏まえたご指摘等」という所でありますが。
ここでは、「医療資源投入量が少ない病院、平均在院日数が少ない病院」
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それから2ポツとして、「DPC対象病棟から他の病棟への転棟について」
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3ポツとして、「コーディングについて」
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それから4ポツとして「今後の対応に向けて」、それぞれの項目について頂いた指摘を記載しているところでございます。
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続いて、16ページの中ほどですけれども、中段以降が、2)の「医療機関別係数のフォローアップについて」という所です。令和4年度の診療報酬改定に向けて、機能評価係数の今後の取扱いについて検討を行っています。
ここの2つ目の丸と3つ目の丸に記載しておりますが、体制評価指数について実態の分析を行って、これはもう得点が上限に達してプラトーにいっちゃうんじゃないかというような指摘があったので、
これ、実際、総得点が上限に達しちゃってるのはどれくらいあるかということを各群ごとに調べてみたところ、大学病院本院群でも2%、DPC特定病院群で1%、DPC標準病院群では4%ということで、決して振り切れちゃってるということではないということが分かりました。
それから、(1)の体制評価指数ですけれども、 体制評価指数については、医療計画「5疾病5事業」等における急性期入院医療について各項目ごとに評価を行っているところですが、今後、第8次医療計画では、「5疾病6事業」となる見込みであるということを踏まえた議論を行う、そこで、その議論で頂いた指摘をここに記載しています。
そのほかに、新型コロナウイルス感染症、へき地、災害についても議論を行って、そこで頂いた指摘をここに記載させていただいております。
DPC作業グループからの報告は以上でございます。ありがとうございました。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、どうもありがとうございました。
【質疑】DPC/PDPS等作業グループの最終報告について
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
それでは、この議題につきまして作業グループの報告ごとに分けて議論を行いたいと思います。
(中略)
続きまして、DPC/PDPS等作業グループにおける最終報告でございます。
資料「入-2」で言いますと、11ページから18ページまででございますが、この部分につきまして、ご質問、ご意見等を承りたいと思います。いかがでしょうか。
ご意見、ご質問ないですか。はい、牧野委員、どうぞ。
〇牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)
はい、牧野です。私も委員として、この分析に参加してたんですけども。
もともと、近年、規模の小さいですね、特に病院のベッド数に対してDPC病床の少ないような病院がかなりたくさんDPCに入ってきて、そういった病院がDPCの制度全体を狂わせる可能性があるんじゃないかという危惧もあって、こういった調査を行ったというふうに認識しております。
その結果として、結果的には、そういった病院がこのDPC制度に大きな影響を与えるようなことにはなっていないということが今回の結果から見えてきたのかなというふうに思っています。
ただ、唯一ですね、地ケアですとか、回リハを持っている医療機関、本来、そこに他院からダイレクトに入ってくる患者さん、これが1回、一般病棟ですね、DPC病棟を通ることで、やはり、それに関しては、本来のDPC病棟の使い方とは違う、医療資源の投入のされ方もどうも違うようだというあたりが見えてきてますので、この点だけがちょっと問題かなというふうに思ったところです。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
ありがとうございました。ほかはいかがでしょう。はい、猪口委員、どうぞ。
〇猪口雄二委員(日本医師会副会長)
はい、猪口です。今、牧野委員が言われたとおりで、私もこの結果を見て、意外と他院から自院のDPC、回リハ、もしくは地ケアというのとですね、自院から地ケアっていうので、本当にあまり大きい差が出てないなあということを感じました。
ですから、それで、この制度はこのままでいいのかな、というようなことを考えますと、やはり、リハを目的に他院から来た場合に、そこをDPCで1回受ける、というようなやり方は、やはりいかがなものかなあというふうには思います。
あくまでDPCっていうのは急性期で、手術とか処置とか、そういうものが行われて、落ち着いて地ケアとかですね、回リハに送るというような流れだと思いますので、本来の地ケアの在り方からして、そこは地ケアでしっかりと受けるということをやはり制度上も、そのようなかたちに整備されていくほうが望ましいのではないかというふうに思いました。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。中野委員、挙手されてますか? 違います? はい。
はい、じゃあ山本委員、どうぞ。
〇山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)
今もお話があったところで、特に回リハで、自院のDPCでワンクッションというところがどうなのかなっていうのが議論にも、作業グループでも議論になっていますので、この辺はやっぱり制度を変えていく必要があるんじゃないかなというふうに考えます。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。じゃあ事務局、どうぞ。
【質疑】厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐の補足説明
〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
はい、事務局でございます。さっき、猪口先生からもご指摘をいただいた点、少しファクトだけ、補足だけさせていただきますと、
他院から自院のDPC、自院の回リハまたは地ケアと、自院のDPCに直入されて自院の回リハまたは地ケアに行く場合に差が出てないというふうに先生にご指摘を頂いたところでございますが。
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さっき班長からもございましたとおり、ご紹介をした、資料編で申し上げますと、100ページ、101ページの所でお示しをしておるのが脳梗塞での14桁、症例数の多い診断群分類の分析。
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それから102ページと103ページで股関節・大腿近位の骨折の手術がある、ということで比較をしてございます。
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脳梗塞のほうをご覧いただくと、100ページの下側の医療資源投入の棒グラフになっておる所、左右で見比べていただきますと、入院初期の医療資源投入が地ケアでも回リハでも異なっている。
一方で、股関節・大腿近位骨折の102ページ、103ページで比較をしていただきますと、これらについてはあまり差がない。先生がご指摘いただいたとおりだと思います。
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そのあたりについては、「入-2」の文章編のほうで、15ページの一番下の丸でございますけれども、先生からご指摘いただいたとおりでございますが、
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治療目的での手術が定義されている診断群分類、ここでご紹介をした「160800xx01xxxx」の場合に、他院からの転院と自院への直接入院とで医療資源投入量の傾向に違いが見られなかったが、
これは、明確に手術という治療目的での転院・入院が行われていることによると想定される一方で、それ以外の診断群分類の場合には違いが見られたということを踏まえると、
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例えば、診断群分類を医療資源投入量に基づいて区別することも考えられるのではないか、というふうに、細かいですが、まとまっておるところでございます。補足でございました。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。はい、井原委員、どうぞ。
〇井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)
はい、井原です。やはりDPC制度って、もう20年近くを迎えるわけですけれども、やはり私はこの制度の根本、一番の生命線って、やっぱり適切なコーディングっていうのが最も大切なものだと思ってます。
ですから、今、牧野委員、山本委員、猪口委員からご指摘があったように、そういった問題に対して、やはり、実際、ヒアリングをした病院の側から見ても、一番大切なDPCのキモである適切なコーディングがなかなか難しいということもはっきりとおっしゃっておられますし、やはり、コーディングが。
もちろん、コーディングテキストが今の現行のような、画期的とは申しませんが、やはり、非常に、極めてコーディングがしにくい、しづらいというようなことっていうのは、やはり本来、目的と少し違う症例が入ってきてしまった場合には、その傾向がより一段と強くなるんだろうという印象を持っています。
ですから、それに対しては、やはり制度設計上でも、やっぱり工夫をして、そういう病院もコーディングがしやすいようにするのか、あるいは別の方法を考えるのか、何らかの工夫はやっぱり必要なんではないかと、私もそのように考えています。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。はい、山本委員、どうぞ。
〇山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)
先ほどの分科会からの尾形会長の報告に対して、小委員会と、それから総会でのご意見で、やはり標準化を目的としてるんだから、なじまないところは退出を云々というようなご意見もあったと書いてありました。
それ、確かに、標準化から外れてる所があるのは事実なんですが、これが、じゃあ今回、いろんなヒアリングとかしてみると、全ての疾患において外れるのかっていうと、そうではなくて、ある疾患に関しては、「ここはぼくらの、うちの担当じゃないんだよね」「でも、こっちはやってるよね」と、疾患ごとにそれぞれの病院の、疾患ごと、あるいは地域ごとに病院の役割っていうのはやっぱり異なっていますから、
一概に外れ値だからどうこうっていう議論は、やっぱり、そこは、それは標準化の目的からずれていると、ポーンと切るのはなかなか難しいんだなというのは、やはりもう、本当に地域によって、その病院の担う役割っていうのは疾患ごとに、またさらに異なるんだっていうところは現場の実情っていうのはより注目していかなければいけないんではないか。
ただ、そこをちゃんと全部すくうように制度改正していくと、じゃあ出来高と何が違うんだという話にまたなりかねないので、というような非常に難しいところで、どこで折り合いを付けるかというのが今後の課題、永遠の課題になるのかもしれませんけれども、大きな課題なんだなっていうのが感想でございます。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。
はい、ありがとうございます。それでは、ほかにご意見、ご質問等もないようでしたら、本件に係る質疑はこのあたりにしたいと思います。
(以下略)
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