5月23日、日本医師会の中川俊男会長(北海道医師会出身)が都内で記者会見を開き、6月25日の次期日医会長選挙に「出馬しないことを決断した」と表明した。なぜ中川氏は1期2年で退くことになったのか。【本根優】
一方で、松本吉郎常任理事(埼玉県医師会出身)が全国的に支持を広げつつ、出馬を表明しており、6月25日に「松本会長」が誕生し、「松本執行部」が発足することが確実な情勢だ。
中川氏は会見で、松本氏の出馬により「激しい選挙戦になることは必至。日医全体の分断を回避し、組織として夏の参院選に向かえるなら本望との結論に至った」と語った。
7月10日投開票予定の参院選で、日医の政治団体「日本医師連盟」は組織内候補として、2期目をめざす自民党の自見英子氏(元厚生労働大臣政務官)を擁立する。この選挙に「組織一丸で臨む」というのが、表向きの事情だ。だが、中川氏は5月に入り、再選出馬の「決意を固めた」と全国の代議員に文書を送りつつ、13日には都内に選挙対策事務所も設置していた。それからわずか10日で、不出馬を表明したのは、「勝てる見込みがなくなったから断念した」(松本陣営幹部)と捉えられても仕方ないだろう。
「中川おろし」は中川氏が気付かぬうちに水面下で進んだ。埼玉県医の金井忠男会長が松本氏の後見役だ。
松本陣営は膝元の関東甲信越ブロックを固めつつ、九州ブロックを味方につけた。加えて、12日夜には大阪府医の茂松茂人会長、愛知県医の柵木充明会長が上京のタイミングに合わせて東京都医の尾﨑治夫会長と会談した。東京駅前のホテルで行われたこの会合で、東京・大阪・愛知の3会長が「松本氏支持」そして、副会長に茂松氏、角田徹氏(東京)、猪口雄二氏(全日本病院協会会長)を充てるという松本陣営の人事について合意した。
関東甲信越、九州、そして東名阪が結束し、この時点で、中川氏が勝てる見込みは、ほぼなくなった。