厚生労働省の調査によると、「医師の負担軽減策」として病院で最も多く実施されている取り組みは「薬剤師による投薬に係る患者への説明」(47%)で、上位5項目のうち3項目が薬剤師の関わりでした。【新井裕充】
令和4年度の診療報酬改定で見直した項目の影響について厚労省は6月8日、中医協の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」に調査結果の速報を示しました。
今回の「令和4年度調査」では、急性期や回復期などの入院医療のほか、「医師等の働き方改革」も調査項目に挙がっています。
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このうち(6)の働き方改革関連では、「関係する改定内容」として①~③を挙げています。
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調査によると、「医師の負担軽減策」として最も多く実施されているのが「薬剤師による投薬に係る患者への説明」(47%)、次いで多いのが「薬剤師による患者の服薬状況、副作用等に関する情報収集と医師への情報提供」(44%)でした。
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この資料の説明で厚労省の担当者は「上5つの中に、実に3つの取組が薬剤師と関連した取組ということで、非常に連携して取り組まれている状況が今回見てとれたと思っています」とコメントしました。
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質疑でも、この点に関する発言が相次ぎました。調査によると、病棟に薬剤師を配置できない病院が多く、その原因について「ドラッグストアとの給与格差が一番大きい」との声もありました。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
(前略) ご意見、ご質問等を承りたいと思います。(中略) それでは津留委員、どうぞ。
〇津留英智委員(全日本病院協会常任理事)
はい、ありがとうございます。私からは3点ほど。
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まず162ページ「医師の勤務状況の改善の必要性」ということで、これは来年度からの医師の働き方改革に関わる話だと思いますけども。
今後ですね、「宿日直許可」は今いろんな病院で取組をされてると思いますけども、それが取れてるか取れてないかっていうのは大きな格差がここで発生してくると思いますので、そういったところも踏まえて、こういったデータを見ていく必要があるのかなというのがまず1点でございます。
あと、飛んでいただきまして166ページ、そして167ページ、あと179ページもちょっと関わりますが。
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これは医師の負担軽減策として、実施状況ということで、実施しているものにたぶん丸を付けなさいということで、医師票、医療従事者票はそういう形の質問票になっているんじゃないかと思うんですけども、ここで挙がってくるのは、やはり薬剤師がいろんな項目に関わってきてます。
これは、そういう、実際、そういった策を講じているというところでの薬剤師の活用ということだと思いますけども。
実際、それによって、負担の軽減につながっているかどうかっていう、そういったものとは結果が違うと思うんですね。そこをミスリードしないようにしなければいけない。
というのは、要するに病棟薬剤師っていうのは非常に不足しておりますので、取組はしてるけども、ニーズは高いんだけども、でも実際、それが本当に負担軽減になっているというわけではないということかと思いますので。
これは166ページ、167ページもそのとおりでございまして、あと飛んで179ページもですね、結局、病棟薬剤師の配置ができないという現状がございますので、根本的に、この病棟薬剤師の不足の問題を解決しなきゃいけないということではないかなというふうに思うところです。
(中略)
〇眞野成康委員(東北大学病院教授・薬剤部長)
はい、ありがとうございます。今、津留委員のほうからもお話あって全く同じような話なんですけれども、やはり166ページのデーターから見ると、医師の負担軽減策ということで上位5つのうち3つ、薬剤師の話が出てきているっていうことなんですけれども。
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これに関して、これができるっていうことは、やっぱり病棟に薬剤師を配置しているっていうことが前提になるんだろうと思います。
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179ページの先ほどのデータでもやっぱりそうですけれども、割と急性期一般入院料1とか2とか、そういうところでは配置ができていて、その加算が取れていますけれども、
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そうじゃない4・5・6とか、あるいは地域一般入院料とか、そっちのほうになると、なかなか配置できていないという状況がここにもありますし。
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179ページの右のグラフから見ても、届出できない理由で、やはり配置できないということが大きな理由になっているということで。
これに関連して、その次のページの180ページなんかのデータもそうだと思いますが。
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これ、周術期薬剤管理加算の状況ですけれども、届出の割合がやっぱりかなり低いということで、手術件数の大きなところを中心に少しずつ届出がされてるっていうことなんですが。
届け出られない理由の一番上には、専任薬剤師の配置ができないとかですね、それから3つ目にもやっぱり「病棟薬剤業務実施加算1の届出」を満たせないとかですね。
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一番下のほうにも、「病棟薬剤師との連携」を満たせないとか、みんな同じ理由だと思いますので、やはり根本的に病院の薬剤師が不足していると。
この問題を何とかして解決しないと、このあたりの問題、課題が解決できないんじゃないかなというふうに思いました。以上です。
(中略)
〇山本修一分科会長代理(地域医療機能推進機構理事長)
はい。病院薬剤師の不足の問題は既に多くの委員の皆さんがご指摘のとおりでございますが、179ページあるいは180ページを見ますと、
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急性期一般入院料1でも23%は病棟薬剤師の配置加算が取れていない。
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あるいは、その下の周術期薬剤管理加算。この間、新設した項目だから仕方がないのかもしれませんが、年間の手術件数が5,000件を超える病院でもですね、6割しか配置されてないという、かなりこの重体な事態になっているというふうに思います。
その理由については複合的であることは確かですが、やはり一番大きいのはドラッグストアとの給与格差と。初任給の給与格差と。
これはもう絶対的なものでありますので、その辺、今後、診療報酬などでどういうふうに対応していくのかというところが、真剣な議論が必要ではないかなというふうに思うところでございます。
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それから、あと166ページに戻りまして医師の負担軽減策の実施状況というところで、特定行為研修修了看護師による分担というところがずいぶん下のほうで25%というところでございます。
これ、医師の働き方改革を進めるときにですね、この特定行為研修修了看護師っていうのはかなり切り札的な強調が、医政局ではありますが、かなり強く、ここを主張されてですね、これを確か10万人養成するんでしたっけ?
加藤補佐もよくご存知と思いますが、そんなこともあった。
にもかかわらず、やっぱり、まだこの程度で、現場では実際には活用が進んでいないという状況。
これはですね、やはり、これも例えば、医師事務作業補助者の一般病棟への展開というのはかなりこの診療報酬の後押しで進んだというところもやはり参考にすべきではないかなというふうに思うところでございます。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。ほか、はい。秋山委員、どうぞ。
〇秋山智弥委員(日本看護協会副会長)
はい、ありがとうございます。私は看護職員の負担軽減・処遇改善のところ、175ページからになりますけれども。
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医療提供体制を維持していくために確保の問題って非常に重要だと思っております。負担軽減・処遇改善というところの重要性がますます増しているというふうに認識しています。
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176ページ右のグラフを見ましても、急性期の一般入院料、それから特定機能病院の入院基本料といったところで、(看護)職員と他職種との役割分担ですとか、そういったいろんなところで急性期のところで達成が困難というところが、回答が多かったこと。
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そして、また177ページのところでもですね、非常に状況が悪くなってるといったような、病棟看護管理者からの回答がございますが。
ちょうど調査時期がコロナで、非常に国内で患者さんが急増して、コロナ病棟であれば患者対応、そしてまたコロナ対応の病棟に看護師を派遣しなきゃいけないといったようなことで、さまざまな病棟でも急性期のところでは苦労されたことの表れでもあるのかなというふうに考察をしているところでございます。
先ほどからも、委員からもご指摘ありましたけれども、やはり看護管理者からもですね、他職種の人材不足といったような声もございまして、
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なおかつ、179ページの病棟薬剤師加算の届出状況もまだまだというようなところでありますので、
やはり病棟薬剤師の配置を増やしていくことで負担軽減を図っていけるような方向で進めていけないかというふうに考えているところでございます。
(後略)
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