令和4年度の診療報酬改定に向けて厚生労働省は前回よりも約2カ月前倒しで基本方針の議論を開始した。厚労省の担当者は「2年前、(委員から)遅いと言われた。中身が固まってから、意見を聴いた形にするのはおかしいと厳しく言われ、反省した」と説明した。【新井裕充】
厚労省は7月29日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第144回会合を一部オンライン形式で開催した。
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厚労省はこの日の議題のトップに「診療報酬改定の基本方針について(前回の振り返り)」を挙げ、改定までの流れと前回改定時の基本方針を紹介した。
資料の説明を担当した厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は「今後、皆さま方との意見交換を通じて、令和4年度の診療報酬改定にあたって、どういう方針で臨むのかをこれから議論をいただいて、つくっていくということになるので、よろしくお願いしたい」とあいさつし、委員の意見を聴いた。
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今回の資料は前回改定時と異なり、タイトルに「前回の振り返り」と書かれている。会議終了後の記者ブリーフィングでは、この点について複数の記者から質問があった。
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山下課長の回答は以下のとおり。
── 今日は「振り返り」ということですが、本格的な基本方針の議論というのは、いつからなんですか?
一応、今日からも当然、振り返りですけれど、振り返りをしながら当然、過去の話をするわけじゃないから、今と将来の話をしていただくことになってますので、これから、より深まっていくんだろうと思っています。
── じゃあ、これが「キックオフ」という感じですか。
キックオフと言うか、キックオフとなると、なんか、こちらが原案を提示しないと、と思っていますから、だけど、提示してなくても、やっぱり皆さんの思いがあるし、それらをちょっと今日は伺うという形で、過去の資料を使って皆さんの意見を聴いたと。これ、同じように、医療部会も同じようにやります。
── じゃあ、原案を出してからやるというのは秋?
秋ですね。はい。
── 前回も、こういう「振り返り」みたいなのって、やってらっしゃいましたっけ?
やってません。
── なんで今回、そういうふうにしたんですか?
えっとですね、これ、皆さん、医療保険部会を見られてるから、あれなんですけど、医療部会のほうでは、こういう風に言われた。「遅い」と。9月では、なんか、原案を作る前に、もっと俺らの話を聞いてくれということを言われました。
私も実はその時、2年前も私が説明して、そう言われて非常によく覚えていて、申し訳ないなあと思ってたもんですから、こちらが議論、なんて言うか、原案を作る前に、やはり、お伺いしたほうがいいんじゃないかと思っております。
── 先ほどの質問とちょっとかぶるんですが、確認ですが、「基本方針に関する議論をスタートした」というのは、ちょっとミスリードになると理解してもいいですか。
いやいや、そうは言っても基本方針の話を提示して始まってますから、始まってるということではあると思いますけれど。はい。
キックオフで、もう、ということではないんですけれど、まあまあ、キックオフも、始まるの、本当は議論が始まってますから、始まってるのは嘘はつけませんし、実際に始まってますからねえ。まあ、どっちでも(笑)。はい。「始まってる」と。はい。
── 先ほどのご回答を聞き逃したんですが、前回の振り返りというものを今回した趣旨、理由について、もう一度、説明いただければと思うんですけれども。
もう1回言うの?(笑)
2年前、私、7月の頭に着任をして、で、診療報酬の基本方針をやらなきゃいけないというのは十分、分かっていて、それが始まったのは9月だったんですね。
医療保険部会では、そうは言われなかったんですけれども、医療部会のほうで「遅い」っていうふうに言われたんです。もう中身が固まって、なんか、こうだっていうふうな中で、俺らの意見をなんか聞いた形にするっていうのはおかしいじゃないかというようなことを厳しく言われました。
それを私も2年前、当然、担当課長ですから、反省をしまして、もう少し早くと。「もう少し早く」と言ってもですね、正直言うと、医療部会では、ずーっと、そういう議論はしてるはずなんですよ。あるべき医療政策どうなのかと。それの裏付けとして診療報酬でどう反映するかっていう話。そのタイミングがですね、ちょっと、という話ではあるので、7月っていうこと。
だけど、本当は、本当を言わせていただくと、医療部会では、もう、ずーーーっと、そういう議論をしてるはずなんですよね。だけれども、2年前、そういうふうに言われましたので、少なくとも「振り返り」という形からですね、議論をしていただくということで用意をさせていただいたということでございます。
▼ 厚労省の議事録によると、前回改定時に医療部会で基本方針の議論がスタートしたのは2019年9月19日。その会合で、中医協委員(当時)の猪口雄二氏(現・日本医師会副会長)が次のように要望した。
「お願いがあるのですが、私も一応、今、中医協委員なのですけれども、これを議論するのはもう少し早いほうがいいのではないかと思います。中医協で片方で議論が進んでいて、12月ごろ、ほぼ固まったときにどかんとおりてきても、あららということにもなりかねませんので、できたら議論が始まる9月ごろまでにはこれが出ていたほうが中医協としての議論は進むのではないかと思っておりますので、お願いしておきたいと思います。」
── 近々、医療部会でもまたやると?
そうそう。まだ医療部会の日程、来てないよね? やるんです。ええ。
── スケジュール感で言うと、例年だと12月とか、ぐらいに固まるような感じだと思うんですけど、今回、コロナということで、またちょっと、スケジュール的にも、中医協の議論も遅れてるというような感じもありますけれども、だいたい例年と一応、同じような感じで?
はい。例年と一緒です。予算編成過程っていうのは当然、変わってませんので、それを見据えてつくっていくもんですから、ちょっと早まってるっていうこと、今回、早めましたけれども、終わりについては変わらない。例年どおりっていうことでございます。
── 早めるとか、そういうことでもない?
ないないない。
(以下略)
■ 中医協の議事録(非公式)をご希望の方は、こちらのページをご覧ください。