「すでに米国で承認されており、価格は320万ドル。1ドル150円換算で4.8億円となっております」(厚労省)──。高額薬剤の保険適用に向けた議論がありました。支払側は「患者さんやご家族にとって大きな期待がある」「難病に直面する患者さんやご家族に対して、この医薬が希望の光となるのであれば反対の理由は見当たらない」としながらも、医療保険財政に与える影響を懸念しました。 【新井裕充】
中医協は4月23日以来の開催。費用対効果部会と総会が開かれました。
1.費用対効果(10:00~10:18)
2.総 会(10:22~11:33)
費用対効果部会は、令和6年度の制度見直し案をまとめた2024年1月17日以来、約1年半ぶりの開催。退任した安川文朗氏に代わる部会長代理を指名した後、今後の議論の進め方やスケジュール案を了承しました。
総会の議題は医薬品関連が中心。次期改定に向けた「医療提供体制」などの議論はありませんでした。
【議 題】
① 費用対効果評価専門組織からの報告について
② 医療機器及び臨床検査の保険適用について
③ 医薬品の新規薬価収載等について
④ 最適使用推進ガイドラインについて
⑤ 費用対効果評価の結果を踏まえた薬価の見直しについて
⑥ 条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の保険適用について
⑦ DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について
⑧ 在宅自己注射について
⑨ 令和7年度における DPC/PDPS の現況について
報告事項は ⑨ のみ。審議事項のうち ⑥ は継続審議、その他は全て承認されました。質疑で複数の発言があったのは、③と⑥ です。
【今回の内容】
① フォゼベル錠、レクビオ皮下注、ウゴービ皮下注の費用対効果評価案を承認
② 6月1日収載予定の医療機器2製品、臨床検査(1件)の保険適用を承認
③ 5月21日収載予定の新医薬品(10成分18品目)の算定薬価等を承認
④ テビムブラ点滴静注100mgの最適使用推進ガイドライン等を承認
⑤ エプキンリ皮下注およびその類似品目(ルンスミオ点滴静注)の費用対効果評価結果に基づく改定薬価等を承認
⑥ 5月13日に条件・期限付きで薬事承認されたエレビジス点滴静注の保険適用に向けた課題等を議論
⑦ 次期改定まで出来高算定する新薬等について承認
⑧ 在宅自己注射指導管理料の対象薬剤(ピアスカイ注340mg)の追加案を承認
⑨ DPC病院の現況、機能評価係数Ⅱ等について報告
議題③では、5月21日収載予定の新医薬品のうち、ハイキュービア、ティブソボ錠、リブマーリ内用液について意見や要望がありました。
このほか、市場拡大再算定の品目について「今回の見直しにより、納入価格よりもかなり安い薬価となり、薬局の在庫の資産価値が一気に下がる」(日薬)との声がありました。
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議題⑥は、昨年7月3日と8月7日の総会で議論のあった有効性評価が十分でない再生医療等製品への対応です。条件・期限付き承認を受けた再生医療等製品2品目(コラテジェン筋注用4mg、ハートシート)が本承認に至らず、薬価基準または材料価格基準から削除する報告の際に両側から意見がありました。
5月13日付けで条件・期限付きで薬事承認された再生医療等製品「エレビジス点滴静注」の適応症は、指定難病である「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」で、3歳から8歳未満の歩行可能な患者を対象とした単回投与の注射剤です。
これまでの経緯等を踏まえ、「本製品の保険適用についてどのように考えるか」との課題を2点示した上で、「条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の保険適用の一般的なあり方」については、「今秋以降に議論する」と提案しました。
質疑で、診療側は日医と日薬が発言。支払側(健保連)は本品への期待を込めながらも、「有効性が制定された段階の、いわば仮免許の製品について、保険適用上、取扱いが本承認されたものと同じということは疑問があり、現行ルールに基づく限り、市場規模が1,500億円を超える可能性がある医薬品の場合には特例的な取扱いになる」との認識を示しました。