「高齢者が交流を持つ『コミュニティ・サロン』をまちに設置すると、要介護認定率が半減する可能性がある」「『憩いのサロン』参加で認知症リスク 3割減」とのデータに対し、日本医師会の副会長がかみついた。6月12日に開かれた厚生労働省の会議で、「あまりにも無責任。3割は(サロンに)行くとみんな治ってしまうイメージを植え付けたいのだろう」とボコボコに叩いた上で、「こんなものを出されたら、すべての資料の信用性を失う。決定的な証拠があるのか」と厚労省の担当者に迫った。【新井裕充】
厚労省の担当者は、「これは内閣府の『未来投資会議』で出されている資料」と矛先をかわした上で、「先生ご指摘のように比較ができるようなことをきちっとやって、エビデンスが出たものを政策につなげていく。それはまさにこれから今まで以上に強力に進めていこうと思っている」と説明し、その場を収めた。
問題となった資料は、政府の「成長戦略実行計画案」の35ページ。「介護予防」に関する記載の中で、「サロン(通いの場)に参加した高齢者は、①要介護認定率が半減、②認知症発症リスクが3割減との調査結果がある」とし、「図50」を示した。
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資料末尾の45ページには出典が示されており、ここには「高齢者が交流を持つ『コミュニティ・サロン』をまちに設置すると、要介護認定率が半減する可能性がある」「『憩いのサロン』参加で認知症リスク 3割減」と書いてある。
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「すべての資料の信用性を失うので、これはやめないか」
「成長戦略実行計画案」は、6月5日の未来投資会議(議長=安倍晋三首相)の第28回会合で示された。首相官邸のホームページによると、安倍晋三首相は同会議の締めくくり発言で「生活習慣病などの疾病予防や介護予防を強化するため交付金制度の抜本的強化を図ります」と述べ、介護予防に力を入れる姿勢を見せた。厚労省は介護予防を進めるために、「通いの場」などの拡充を目指している。
こうしたなか、6月12日に開かれた社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)では、骨太方針2019の原案などと共に、「成長戦略実行計画案」の概要が報告された。
介護予防に関する説明はなかったが、質疑で日本医師会の松原謙二副会長が「ただのポンチ絵」とつぶやくと、委員の間から笑いがこぼれた。松原副会長は「あまりにも無責任じゃないか。すべての資料の信用性を失うので、これはやめないか」と削除を求めた。
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この問題に関する質疑の模様は、次ページを参照