嫌われ者のマイナンバーカードでも、すでに普及している健康保険証の機能をドッキングさせれば広まるという政府のもくろみだが、早くも暗雲が立ちこめている。6月12日、健康保険証に関わる保険者や医療関係者らが集まった厚生労働省の会議では、後ろ向きな発言が相次いだ。「責任の所在は国にある」と保険者の代表が言えば、厚労省の担当者は「保険者に先駆的に負わすということではない」と声を曇らせた。【新井裕充】
医師会の関係者は、「法律上は必ずしもマイナンバーカードを使わねばならないという文章ではない」と、あくまでも現行の保険証を重視した。厚労省の担当者は「現在ある保険証をなくすとか、そういう強制的なものを伴っているものではない」と声のトーンを下げた。
今年5月15日、マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにする改正健康保険法が成立し、22日に公布された。政府は6月4日の「デジタル・ガバメント閣僚会議」で、マイナンバーカードの普及などに関する方針(案)を提示。その中で、令和3(2021)年3月から「マイナンバーカードの健康保険証利用の仕組みを本格運用する」とし、さらに「令和4年度中に概ね全ての医療機関での導入を目指す」「令和4年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保有する」と意気込んでいる。
厚労省は6月12日、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)を開き、改正健保法の主要事項を報告するとともに、マイナンバーカードの普及に関する方針を関係者に伝えた。
しかし、その会議で出たのは「事業主に働きかける必要がある」「国が率先してPRを行っていただきたい」など、責任のなすりつけあいとも思える発言。「令和4年にできる道筋はあるのか」と厚労省担当者をただす場面もあり、当事者意識ゼロの発言が続出した。
この日の会議での主な発言は、次ページ以降を参照。