厚生労働省保険局は3月12日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第126回会合を開き、「薬剤自己負担の引上げについて」と題する資料を示した。(新井裕充)
この日の会合は、東京都千代田区の全国都市会館2階の大ホールで16時から17時35分まで約1時間半にわたって開かれた。
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会議の前半は、大病院などの外来を受診した場合に患者から徴収する「定額負担」を拡大する範囲などについて検討し、後半は「薬剤自己負担の引上げ」について30分ほど審議した。
議論に使用した「資料2」(薬剤自己負担の引上げ)は、表紙を除いて18ページ。厚労省の担当者は最初に諸外国の例を紹介し、「こういったものも踏まえながら検討していくことが本件の課題であると認識している」と述べた。
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この資料は、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会で示されたもので、委員の発言も、この11ページと12ページに集中した。
質疑で、保険者を代表する委員は「示された諸外国の例も参考にしつつ、十分な財政効果が得られるような見直しを図っていただきたい」と要望したが、医療側の委員から異論もあった。
今回の資料には「論点」という項目がなく、「このような考え方があるが、どのように考えるか」という構成になっている。そのためか、私の近くにいた医薬品関係の業界記者は「論点がない! 論点がない!」と焦っていた。
〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
(前略) ほかにございますか。よろしゅうございますか。
恐らく、また医療部会から少しまとまった病床の機能についてのデータが出てくるかと思いますので、
また、そういうものが出てきたところでご議論をいただくということで、じゃ、この議論はこれぐらいにさせていただきたいと思います。
それでは、次の議題に移りたいと思います。次は、「薬剤自己負担の引上げ」でございます。
事務局、関連の資料の説明をお願いいたします。
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〇厚労省保険局保険課・姫野泰啓課長
はい、ありがとうございます。資料の2につきまして、ご説明をさせていただきます。
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まず、1ページ目につきましては、改革工程表での課題設定を挙げてございます。
「取組事項」にありますように、
「薬剤自己負担の引上げについて、市販品と医療用医薬品との間の価格のバランス、医薬品の適正使用の促進等の観点」から、
関係審議会において検討するということにされてございます。
また右側に、より詳細にございますけれども、諸外国の薬剤自己負担の仕組みなども参考にしつつ検討するということでございます。
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少し、ページ飛びますけれども、11ページめくっていただきまして、少し、具体的な検討のイメージがわかりにくいかと思いまして、
これ、財政制度(等)審議会で出されている資料でございますけれども、
例えば、こんな検討の方向性というものが1つあるということで、付けてございます。
例えば、11ページの右側にございますけれども、海外の事例ということで見ますと、フランスやスウェーデンの事例ということで、
薬剤の内容に応じた償還率を設定しているフランスですとか、
薬剤費の額に応じた自己負担を設定しているスウェーデン、
そういったものも参考になるんではないかという資料でございます。
また、この左側に①ということでございますが、この「保険外併用療養費制度の活用」ということで、
例えば、OTC化された医薬品につきましては、初診料や検査料については保険給付としつつ、
薬剤費については保険外併用療養費ということで全額自己負担にすると、
そんな案がこういったとこで提案されていると。
こういったものも踏まえながら検討していくということが本件の課題であるというふうに認識してございます。
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その上で、ページ戻りまして2ページでございますけれども、
これまで何度もこの医療保険部会でもご議論いただいてございますけれども、
例えば、平成28年の議論の中では、スイッチ化された医薬品につきまして、保険償還率の在り方をどうするかということで、ご議論いただいてございますけれども、
給付率の変更だけではなくて、そもそも保険適用から外すというのが本来の姿であるというご意見も頂いております。
また、軽度な疾病については、医療用医薬品からOTCへの置き換えを促す仕組みですとか、
セルフメディケーション税制の対象をOTC薬全般に拡大するなどして、OTC医薬品での治療というものを促す取組をするべきであると、そんなご意見も頂いてございます。
一方で、スイッチOTCの保険給付率を下げることによりまして、むしろ同じ薬効内の別のですね、高薬価な医薬品へ処方がシフトするんではないかとか、
あるいは、その結果、スイッチ化が抑制されるんではないかと、そんなご意見、ご指摘も頂いておりますし、
また、そもそも薬の有効性、必要性などの観点から保険適用は決めるべきであって、既にスイッチOTCがあるかどうか、ということで議論するべきではないというご意見も頂いてございます。
また、その次にありますように、平成14年の改正法附則との関係から慎重に検討するべきだというご意見も頂いているところでございます。
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次のページが、29年にご議論いただいた時の議論ですけれども、
一部重複するところもありますので、それ以外、少しピックアップいたしますと、
2つ目にありますように、自己負担の議論というよりは、むしろ薬価制度の問題として考えるべきという意見ですとか、
また、その次にありますように、処方の際の情報提供や患者教育、そういったものを進めるべきだというご意見。
それから、少し進みますけれども、真ん中あたりですが、
後発品の使用促進、不適切な重複投薬、多剤投薬等の削減に努めて薬剤費を下げていくべきだと、そういったご意見も頂いているところでございます。
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4ページ、最近の頂いているご意見ですけれども、1月31日の医療保険部会におきましては、
OTC化された医薬品について、償還率の変更、あるいは保険適用の除外を行うべきという意見を頂いておりますし、
また、2月の際にはセルフメディケーション税制の拡大、そういったことで啓発をしていくということは大事ではないかというご意見も頂いてございます。
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5ページがデータ編になりますけれども、薬剤費、そして薬剤費比率の年次推移を見てございます。
平成5年頃につきましては、薬剤費比率、3割弱ということで大きかったものでございますけれども、
近年、22%、20%前後でですね、推移しているという状況でございます。
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また、6ページは処方箋1枚当たりの内服薬の種類数を見てございますけれども、
65歳未満という年齢層で、くくり出して見ますと、10年前と比べて若干減少している傾向にございます。
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次、7ページからが自己負担についての基礎的な資料を付けさせていただいております。
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8ページが「患者一部負担の推移」ということでございますが、
平成9年9月から平成15年までの間、高齢者、若い人も含めて薬剤一部負担というのを一時期、導入していたということが、ここで分かるかと思います。
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次のページに、少し詳細に、経緯、書いてございますけれども。
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10ページに、当時の「薬剤一部負担制度の概要」がございます。
こちらにつきましては、薬局、
外来診療や薬局での薬剤支給の際に、通常の医療保険の定率負担のほかにですね、
薬剤の種類数に応じて一定額の負担を求めた制度でございましたが、
平成9年9月に導入され、15年4月に廃止されたという経緯でございます。
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11ページ、12ページ、先ほど、ご紹介したとおりでございますが、
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13ページから、先ほど、ご意見の中でも自己負担の話だけではなくて、いろんな適正化の取組が必要であるというご意見を頂いておりましたが、
過去、取り組んでいた適正化の取組を列挙してございます。
診療報酬改定の中で、「単なる栄養補給目的でのビタミン剤の投与」ですとか、
「うがい薬だけの処方」
そして、1処方70枚を超えた湿布薬などについての適正化を行っているところでございます。
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また、次の14ページからは、いろんなアクターが取組を行っているものを示したものでございますけれども、
多剤・重複投薬の適正化に向けて、①②にありますように、
医療機関、薬局などから減薬の取組をした部分について診療報酬上、評価をするということにしてございますし、
下にあります、③の所で、保険者がレセプトを活用して多剤・重複投薬の患者さんに対する情報提供、あるいは個別指導、そういったものの取組も行われているということのご紹介でございます。
15ページ、16ページは、今の、より詳しい資料を付けてございます。
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17ページにつきましては、後発医薬品に関する取組ですけれども、
保険者におきまして、差額通知などの取組が近年、強化されているということを示したものでございます。
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そして最後、18ページでございますが、先ほど、ご意見の中にもありましたように、
セルフメディケーション税制についての拡充を図るべきという意見もありましたが、
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現状、セルフメディケーション税制ということで、平成29年1月から令和3年12月末までの間ということでございますけれども、
スイッチOTCの購入金額につきまして、1万2千円を超える金額部分をですね、所得から控除するという税制優遇が導入されているご紹介でございます。
簡単でございますが、説明は以上でございます。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
ありがとうございます。この薬剤費の自己負担の問題、ずっとこれまでも当部会では議論をしてまいりました。
また改めて、ご意見を承ればと思いますが、いかがでございましょう。
はい、藤井委員、どうぞ。それから、その次に井上参考人、お願いいたします。
(後略)