ラゲブリオ・ショック

ラゲブリオ・ショック

「ラゲブリオの評価が今後にも影響を与えるだろう」
 製薬企業でマーケットアクセスやプライシングの部門に籍を置く関係者は、そんな見立てをする。3月13日の中央社会保険医療協議会総会で、MSDの新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」に関して、「費用増加」とする総合的評価(アプレイザル)案が了承され、物議を醸しているからだ。 【本根優】

 厚生労働省の費用対効果評価制度は19年4月導入され、約5年が経過した。これまでに医薬品・医療機器計50品目の評価を終えている。比較技術に対して「効果が増加し、費用も増加する」ケースが大半を占めるため、ラゲブリオのように「費用増加」と判定されるのは極めて異例だ。

 新型コロナ禍の21年12月、ラゲブリオは新型コロナに対する国内初の経口薬として特例承認を受けた。国による買い上げを経て、22年8月に薬価収載され、一般流通を開始している。

 収載時には有用性加算Ⅱ(10%)を獲得し、費用対効果評価の対象品目(H1)に指定された。

 3月13日の中医協に示された総合的評価案では、標準治療(新型コロナに適応がある薬剤を除く、対症療法)との比較で「費用増加」と示され、そのまま了承された。費用増加とは「効果が同等で、かつ費用が増加するもの」になる。このため、最も小さい価格調整係数(0.1)が適用され、獲得した加算10%分の9割が薬価から減額される見込みだ。

 国立保健医療科学院の保険医療経済評価研究センター(C2H)が公表した評価結果概要でも「費用増加」であるとともに「追加的有用性なし」と示している。

 つまり「入院や死亡といった重症化を防ぐ効果は、一般的な治療と変わらないにもかかわらず、それよりもコストがかかる」ということだ。

 国会でもラゲブリオの扱いが取り上げられたほか、医療技術評価(HTA)の専門家からも「さすがに追加的有用性なしの場合には、加算部分の一部減額でいいのか疑問だ」「公的保険の償還範囲から外す議論が必要ではないか」といった指摘が出ている。

 冒頭の企業関係者は「費用増加の扱いは改めて議論になる可能性がある」と、その動向を注視している。
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