日本医師会の松本吉郎会長が10月24日、日本記者クラブで記者会見を開き、新型コロナウイルス感染症対応を含めた日本の医療提供体制の現状と課題について、日医の取り組みを説明した。【本根優】
6月に就任した松本会長の手腕が問われる「第一の関門」とみられるのが、23年度の政府・予算編成での社会保障財源確保だ。松本会長は23年度予算の概算要求に計上された社会保障関係費の自然増5600億円に関連して、次のように語った。
「(政府が増額方針を示す)防衛関係費は社会保障関係費より先に調整が済むことが多い。慣例的に調整が最後になる社会保障関係費にあまり影響が出ないように願っている」
一方で、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が行われる24年度については「自然増が7000~9000億円との試算があり、どう対処するかが重要な課題」との認識を示した。
松本会長が「2期目」を目指す場合に、これら予算への対応が鍵を握る。
一方で、会見の最後に「座右の銘」を問われた松本会長は「以心伝心」と書き記し、その意図を明かした。
「これができていると思わないから書いた。本当は『拈華微笑(ねんげみしょう)』と書きたかった」
拈華微笑は仏教用語で「言葉を用いずに心から心へと伝える妙境のたとえ」になる。
さらに松本会長は「人と人との付き合いを大事にしたい。医師会だけでなくほかの職種の方を含めて、心と心で人間として付き合っていきたい」とも語った。
ちなみに松本会長が師と仰ぐ、横倉義武元日医会長の座右の銘は「和して同ぜず」。これについて、横倉氏は会長時代「人と協調していくが、決してむやみに同調しないということだ」と語っていた。
松本会長が「拈華微笑」を胸に進んでいった場合に「和して同ぜず」は達成できるのか。横倉氏のように「4期やれば歴史に残る名会長」と言われる中、松本会長は果たして日医会長を何期務めるのだろうか。