4月26日の中央社会保険医療協議会総会で、医療DX推進に向けた取り組みについての議論が始まった。注目されるのが「診療報酬改定の後ろ倒し」。関連して、支払側からは「薬価は4月のままで」との意見が飛び出し、製薬業界には波紋が広がった。【本根優】
というのも、メーカーの立場からすれば、薬価改定の後ろ倒しで、その期間、薬価引き下げを免れることができれば、その分の収益のマイナスを回避できるからだ。
松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「医療現場では半年程度、価格交渉期間が必要。9月に薬価調査を実施し、翌年4月に改定するサイクルを前提とすれば、4月に施行しないと薬価制度の根幹を揺るがすことになりかねない」と指摘。その上で「薬価収載のタイミングは数ヵ月に1回あり、4月改定を動かせば全体のバランスが崩れる懸念もある」と述べつつ、ベンダの作業負担平準化の観点からも「薬価のシステムの改修は、4月施行でも十分対応可能」との認識を示した。
診療側はどうか。長島公之委員(日本医師会常任理事)は、後ろ倒しによって①医療現場にどのような影響があるのか、②ベンダや医療機関の作業の短期集中をどの程度の期間延長すれば必要な効果が得られるのか、③財政にどのような影響があるのか、④改定の結果検証にマイナス面の影響をできるだけ生じさせない長さにすべき──という4つの観点を考慮して「総合的に検討する必要がある」と主張した。
この発言に関して、日医関係者は「診療報酬改定の後ろ倒しに反対しているわけではない。薬価はそのまま(4月改定)という意見に対しては、判断するための材料が不足している」と解説する。
保険局経験が長い元厚労省幹部の見立てはこうだ。「薬価は単価を変えるだけなので、物理的には4月のままでも可能だろうが、診療報酬と薬価で改定時期をずらすことでかえって現場に混乱を招くことが懸念される」。
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