「松本会長」と横倉前会長

歌舞伎座の夜_2022年5月1日

「横倉さんは、恐ろしい」
 日本医師会会長選挙への再選出馬を断念した中川俊男現会長(北海道)の陣営関係者は、そう口にする。目に見える根拠があるわけではないが、今回の「クーデター劇」に少なからず、横倉義武前会長(現名誉会長)の関与があったとみているからだ。【本根優】

 6月25日の会長選に向けて、中川氏も再選出馬を一旦表明したが、その後、断念に追い込まれた。松本吉郎常任理事が瞬く間に全国的な支持を広げ、勝てる見込みがなくなったからだ。

 中川氏に大きな痛手となったのは、重用してきた松本氏が地盤とする関東甲信越の離反であり、決定打は東京都医師会(尾﨑治夫会長)の不支持だ。しかしその過程でブロック単位では、横倉氏が地盤とした九州が最も早く、5月20日に松本氏推薦を決めている。

 国民や政財界からの医師会の信頼感欠如を背景に「中川おろし」を企てる際、候補に挙がる人材のうち、まず野党寄りの思想を持つ尾﨑氏では広がりを欠く。茂松茂人氏(大阪府医師会会長)や柵木充明氏(愛知県医師会会長)では決め手に欠ける上、中川氏との全面対決に陥ってしまう。

 そこで白羽の矢が立ったのが、中川氏にも近く、中川氏の支持基盤を切り崩すことが可能な松本氏だった。松本氏は、次期・中川執行部で「副会長」が約束されていた中、それを蹴って、一気に会長選に打って出ることを決断した。

 直接、後押ししたのは膝元の埼玉県医師会・金井忠男会長だとしても、全国をまとめるうえで、後見役のようなオーラを放っているのが、他ならぬ横倉氏だ。

 6月5日、松本氏の選対本部事務所開きに駆け付けた横倉氏は4期8年の実績をもとに「日医会長になると、一挙手一投足が誰かに見られる緊張の日々。今から緊張した日々を送られるのはご苦労なことだと思うが、国民医療のさらなる向上のために、キャビネット全員で力を合わせて動けるようにしてほしい」と激励した。

 横倉氏の心残りは「日医の『グランドデザイン2030』と、医療基本法について、中川会長の下では検討されなかったこと」。

 「松本会長」に移行してからも、横倉氏は名誉会長を続投し、それらを前に進めることに尽力することになりそうだ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 天王洲のアイル橋_2021年3月23日

    岸田氏の人事と政策

  2. 岩手県久慈市_2022年1月2日

    今回も「薬価」が犠牲に

  3. 江戸城平川橋_2022年9月3日

    そんなに売れるのか

  4. 逢坂_2022年4月22日

    二階派を巡る動向

  5. 桜田門_2020年10月28日

    続く「かかりつけ医」論議

  6. 財務省前_2023年6月1日

    自民厚労族などの意見

  7. 鼻息の粗い財務省

    鼻息の粗い財務省

  8. 日本橋の麒麟像_2022年5月24日

    松本キャビネット

議事録のページ総合
総会議事録のページ
材料専門部会議事録のページ
■ 議事録のページ【小委・分科会】

第587回中医協総会(2024年4月10日)【速記録】

第587回中医協総会(2024年4月10日)【速記録】

第586回中医協総会(2024年3月22日)【速記録】

第586回中医協総会(2024年3月22日)【速記録】

第224回中医協・薬価専門部会(2024年3月22日)【速記録】

第224回中医協・薬価専門部会(2024年3月22日)【速記録】
PAGE TOP