中央社会保険医療協議会薬価専門部会は10月4日、エーザイの早期アルツハイマー病(AD)治療薬「レケンビ」(一般名・レカネマブ)について、薬価算定方法の検討に着手した。同社は介護費用の分析も評価に含めるよう求めているが、収載時の値付けでは見送られる見通しだ。【本根優】
レカネマブは、市場規模が年間1500億円超と見込まれる場合の中医協での「高額薬剤事前検討ルール」に該当。これは塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」(一般名・エンシトレルビルフマル酸)に続き2例目となる。
厚生労働省は、レカネマブは抗体医薬品であり、化学合成品である既存の認知症薬や同じ薬効分類で中枢神経系に作用する注射剤の抗体医薬品との類似性を考慮する必要があると指摘。類似薬があれば、類似薬効比較方式だが、適当な類似薬がない場合は原価算定方式となると説明した。どの算定方式を選ぶかは、薬価算定組織の判断になる。
厚生科学審議会などで委員経験のある医療経済の専門家は次のように分析する。
「既存の認知症薬は1日薬価が数百円。他の中枢神経系の抗体医薬品は数千円だが、いずれにしても、レケンビとの類似性は見出しにくい。ゾコーバのように複数選んで足して2で割るような手法も妥当性が低い。となれば、原価計算方式に加算が現実的ではないか」
委員からは薬価収載時は「通常ルールで対応可能ではないか」との声が複数上がった。一方で、収載後については予測を上回る患者数増に対応できるよう「価格調整ルールを含めて、これまでとは別の取り扱いを検討すべき」といった意見が出た。
この場合、検討されるのは市場拡大再算定でレカネマブ用の数値基準を設けるような議論と、費用対効果評価に委ねる議論の2つだ。
さらに細かく見ると、中医協の費用対効果評価専門部会では、高額薬剤について「価格調整範囲の拡大」論議と、「介護費用の分析の取り扱い」の論議が浮上しており、いずれもレカネマブと関係が深い。
製薬団体の関係者は、レカネマブを材料に「価格調整範囲だけ24年度改定で拡大されて、介護費用の算入は今後の研究次第となり得る」と語り、業界にとって“不都合なシナリオ”に強い懸念を抱く。
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