岸田文雄首相が9月に実施した内閣改造・自民党役員人事に伴い、古賀篤氏(元厚労副大臣)が厚労部会長に就任して以来、初の厚労部会が10月11日に行われた。医療機関などへの物価高騰・賃上げ対策について「待ったなしだ」「改定まで待てない」といった声が数多く出た。【本根優】
政府は10月中に「総合経済対策」を決定する。それに向けて、厚労部会では厚労分野の重点事項をまとめ、部会長一任で了承した。
重点事項案には「医療・介護・障害福祉等分野においては、現下の物価高騰に伴い、食材料費・光熱水費の負担が大きくなり、経営を圧迫している。さらに、医療・介護・障害福祉分野では賃上げが他の産業に追いつけておらず、現場では人材の流出が生じ、人材の確保も困難。サービス提供体制は危機的事態」と示した。
そのうえで「賃上げのための必要な対応や、食材料費・光熱水費高騰への必要な対応を検討し、確実に実施していくこと」を求めた。
この日の部会では、これまでの地方創生臨時交付金を活用した物価高騰対応に対し、見直しを求める意見が相次いだ。「交付金では、都道府県の裁量によってバラつきが出る」「新型コロナウイルス対応の交付金にいつまでも頼るのはおかしい」といった内容だ。
入院中の食事療養費をめぐっては「30年間据え置かれていることはおかしい。経営努力では食事療養の提供は困難」「来年6月の改定を待てる状況ではない」といった声が上がった。
一方で、後発品などを中心とした医薬品の供給不安が続く状況に対して「産業構造にメスを入れるべき。補正予算で事業再編を」「薬価が上がる仕組みを」「後発品業界は小規模の会社ばかりでM&Aを進めない限り、増産対応は難しいのではないか」といった意見が出た。
各厚労関係議員にとって、トリプル改定を見据えたキックオフ会合で、財源確保へ声を上げ、存在感をアピールした狙いが透ける。ただ、厚労関係幹部議員からは「どこかに予算を付けたら医薬品が増えるのか」と疑問の声も漏れる。また厚労省幹部も「医薬品の供給不足に対してはさまざまな手を打っている最中。『経済対策で』と言われても、なかなか対応が難しい」とこぼす。
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