認知症新薬の「費用対効果」

厚労省前_2023年6月21日

 製薬大手のエーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」が、7月6日までに米国で正式承認される可能性が高まっている。エーザイは「30年度に全世界で売上高1兆円」を掲げるなど、鼻息が荒い。日本でも年内の承認を見据えるが、薬価収載・上市までにどんな議論が想定されるのか。【本根優】

 厚生労働省の推計では、日本の認知症患者は25年に約700万人となり、65歳以上の5人に1人が該当する。その約7割をアルツハイマー型が占めると言われる。

 レカネマブは早期の患者を対象としており、臨床試験では症状の悪化を27%抑制することが示された。病気の原因物質の1つとされる「アミロイドベータ」を脳内から除去する効果があるとされる。

 日本でエーザイは「第二四半期(9月)中の薬事承認」を見込んでいる。同社は医療費だけでなく、公的介護保険の費用や家族など介助者の負担などを織り込んだ「社会的価値」をレカネマブの薬価に反映すべきと主張している。

 実際に、米国での先行研究にならい、日本の医療システム化での社会的価値を推計した結果が論文化されており、同社は当局との薬価交渉の重要な材料としたい考えだ。

 もしも9月に承認が得られれば、順調に推移した場合、11月の薬価収載が見込まれる。ちなみに米国での販売価格は2万6500ドル(約380万円)に設定されている。日本の現行の薬価ルール通りなら「米国の半分程度ではないか」といった有識者の声も聞かれるが、エーザイとしては、論文でレカネマブの年間価値は「最大468万円」程度と示されたことを強調している。

 では、こうした主張が、日本の「費用対効果評価制度」により、薬価引き上げの材料になるかと言えば、そうはなりそうにない。

 費用対効果評価制度は、薬価算定時に上乗せされた加算について、それが妥当なら据え置き、そうでないなら薬価を引き下げるような機能しか発揮していないからだ。これまでに数十品目の評価を終えているが、引き上げとなった品目は存在しない。

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