「なぜか『こっちが悪い』みたいな話になっているんだ」。不満を漏らすのは、日本医師会幹部だ。繰り返し処方箋を使える、いわゆる「リフィル処方箋」は、政治決着で導入が決まったわけだが、日医内で責任論が浮上し、ひとつの火種となっている。【本根優】
中央社会保険医療協議会では22年度診療報酬改定の「個別項目」(短冊)の議論が進む。リフィルに関しては、処方箋に「リフィル可」のレ点を入れる項目を設け、繰り返し使える回数は「3回まで」と設定する。
1回あたりの投与期間や総投与期間は「医師が判断する」ことになる。なお、投薬量に制限のある医薬品や、上限枚数の厳格化が議論されている「湿布薬」は対象外。医療機関への明確なインセンティブは新設しない。ただ、30日以上の長期処方を行った場合に処方箋料が4割に減算されるルールは、リフィルでは発動しない方向だ。
22年度改定でリフィル処方箋の導入は、改定率決定の土壇場で財務省が捻じ込んだタマ。診療報酬本体は看護の待遇改善や不妊治療の保険適用も盛り込んだうえで+0.43%となった。
その一方で、再診の効率化として▲0.1%を見込みリフィルが盛り込まれた。
近畿医師会連合は12月27日、日医の中川俊男会長に対して、改定に関する提言書を提出している。A4用紙1枚に「リフィルに関する不満や懸念」が書き記されている。
リフィル処方では「医師の診察を行うことなく長期処方が可能になるおそれがある」とし、医師法第20条の「無診察治療等の禁止」に抵触する可能性もあり、「日本の医療制度の根幹を揺るがしかねない問題」と強調している。
関係者によれば「改定率決定の枠組みにリフィルがあることを踏まえれば、当然、(中川)会長の責任のはずなのだが、一部常任理事に責任が転嫁されている」という。