政府は7月25日、臨時閣議を開き、24年度予算の概算要求基準を閣議了解した。医療、介護などの社会保障関係費については、自然増を5200億円と見込んだ。医療・介護の関係業界は一丸となって、物価高騰・賃金上昇に対応する財源の手当てを求めてきたが、概算要求段階では明確な担保は何もないまま、年末の予算編成での決着に臨むことになる。【本根優】
23年度概算要求時点の自然増は5600億円だったため、400億円減。政府は「後期高齢者などの人口の伸びが鈍化したことが影響し、自然増が減少する」と説明している。
自然増の5200億円については「合理化に取り組み、高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることをめざす」と明記しており、医療技術の進展・高度化といった要因は加味せず、高齢化による伸びだけに相当する額に抑える。
自民党の厚生労働族議員らは「経済・物価動向を踏まえた診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等のトリプル改定をしなければ、必要な医療・介護サービスなどは提供できない」と、これまで強く訴えてきた。
ただ、事実上、財務省が仕切る概算要求基準の段階で、文言上の明確な物価高騰・賃金上昇対応は盛り込まれておらず、厚労族らが「骨太の方針2021」を踏襲する形で残された「経済・物価動向を踏まえ」という、あいまいな記述に縋っているような状況だ。
さらに、9月には岸田文雄首相が内閣改造・党役員人事を行う見通しのため、政府・与党の厚労関係のポストも大幅に変更される。つまり、田村憲久党社会保障制度調査会長、田畑裕明党厚労部会長らも変わる可能性が高い。
厚労関係議員が息巻く一方で、財政再建派の自民党中堅議員は「経済・物価動向を踏まえ」という表現について「ごく当たり前のように書かれた表現であり、ここ1~2年の物価高騰・賃金上昇に対して『財源を手当てする』という意味ではない」と断言する。
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