日本看護協会の福井トシ子会長は、6月29日に日看協が開いた記者会見で、東京五輪・パラリンピックへの看護師派遣協力について報告した。この報告から分かったことは、日看協が五輪に対して玉虫色の立ち位置を選んだことである。【堤実篤】
日看協に看護師派遣協力を依頼してきたのは東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会で、目標人数の提示はなかったという。福井氏によると、依頼を受諾した理由は次の通り。
「『人々がいる所には看護を必要とする人がいる』という信念のもと、オリンピック・パラリンピックが開催されて人々が集うのであれば、そこには看護を必要とする人が必ずいると捉えて、応える準備が必要であると考えている」
日看協は都道府県看護協会に依頼内容を通知し、その後は日看協が介在せずに、都道府県看護協会と組織委員会が直接やりとりをする段取りを組んだ。
その結果、「こちらでは都道府県看護協会がどう対応したのかは把握していない。看護師が何人確保できているかも把握していない」(福井氏)。
発言内容の真偽はともかく、日看協は組織委員会からの依頼を都道府県看護協会に伝えただけで、看護師派遣に主体的に関与したわけでもなく、一方で消極的でもないというスタンスである。組織委員会と医療現場の双方から糾弾されないように計らったのだ。
自民党関係者は「日看協は看護職の地位向上をめざすロビイング団体だから、政府と対決することはない」と話す。
日看協からは日本看護連盟の組織内候補で高階恵美子氏(元日看協常任理事)が、自民党参議院議員として政界に送り込まれている。しかも高階氏の所属派閥は、丸川珠代五輪担当相および橋本聖子組織委員会会長と同じ細田派である。この関係からも、日看協に五輪協力に消極的な選択肢は用意されていなかったのだ。