中医協を通さない制度設計の流れ

財務省前_2021年3月23日

 中医協が大きな曲がり角を迎えたのは、日本歯科医師連盟幹部と支払側委員による贈収賄事件を受けて2005年に着手された中医協改革である。以降、中医協の機能は事実上、保険収載の承認と算定要件および施設基準の決定に限定され、財政制度等審議会の影響下に置かれるようになった。かねてから中医協の存在感低下に不満を述べる委員はいたが、改めて城守国斗委員(日本医師会常任理事)が口を開いた。【提実篤】

 この2月2日に開かれた中医協総会で、城守委員は次のように述べた。

 「医療政策色の強いテーマについては中医協の外で一定の方針が決められることがあったが、その場合も詳細な制度設計は、中医協で有効性と安全性を確認して歪みが生じないように検討されてきた経緯がある」

 「近年は中医協の外で詳細な制度設計まで言及されるテーマが散見されることはいかがなものか。診療報酬に関するテーマは、厚生労働大臣の諮問機関である中医協における主体的な議論を踏まえて決定されるべきと具申する」

 改定の議論で支払側委員は自身の意見の根拠として、たびたび「社会保障審議会医療保険部会の指摘を踏まえて」と社保審を引き合いに出して、診療側に対峙してきた。いわば外堀を埋める戦法を取ったのだ。

 前回(1月26日)の総会でも同様だった。松本真人委員(健康保険組合連合会理事)はオンライン診療に係る算定要件、施設基準及び点数水準の改定項目について、厚生労働省医政局の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の指針に基づくことを主張した。

 この主張に城守委員は「指針は必要最低限守るべきことを示したに過ぎない」と反発したが、小塩隆士中医協会長(一橋大学経済研究所教授)は「算定要件及び施設基準については、指針に基づいて見直しを行うことが今回の検討の前提」と退けて公益裁定に持ち込んだ。

 厚生労働省が運営する他の会議は、3人の委員を出している(福井県医師会長である池端幸彦委員──日本慢性期医療協会副会長として就任──を含めれば4人)中医協ほど日医の発言力は強くない。そこで外堀を埋められてしまえば、日医の主張が通りにくくなる構図ができあがってしまう。

 城守委員が中医協は不可侵領域と訴えるのも、立場上やむを得ない。

 じつは日医の中川俊男会長が中医協委員(当時は日医副会長)を退任したときの挨拶でも、類似の言及があった。17年7月5の総会で「最近では直接の所管ではない政府の他の部門から、診療報酬の細部に踏み込んだ提案が常態化している」と述べたのだ。

 日医の見解は2005年の中医協改革への反発にさかのぼる。

 中医協改革では、中医協の在り方に関する有識者会議の提言を受けて①診療報酬改定の改定率は予算編成過程を通じて内閣が決定②診療報酬改定に係る基本的な医療政策の審議は、社会保障審議会の医療保険部会及び医療部会に委ねる②中医協は社保審で策定された「診療報酬改定に係る基本方針」に沿って、具体的な診療報酬点数の設定に係る審議を行う――と定められた。

 中医協の役割は「具体的な診療報酬点数の設定」と規定されたが、日医は猛反発して以下の意見を表明した。

 <既に中医協自身としては,国会で承認された公益委員の尽力により取りまとめられた「中央社会保険医療協議会全員懇談会了解事項」を昨年10月27日に公開の場で決定した。この了解事項にそって、中医協を運営することが重要であることは関係者了知のことである。しかるに、屋上屋を重ねるがごとく、中医協の在り方に関する有識者会議を設置し、中医協の見直し議論が始められたことは遺憾である>

 <日本医師会が有識者会議における説明の機会を求めたにもかかわらず、それに応ずることもなく、さらに、有識者会議の委員は毎週開催されている中医協の会議そのものを一度も見ることもなく、現場を理解しないままの単なる机上の議論に終始したことは真に残念である>

 中央社会保険医療協議会全員懇談会了解事項は、その名が示すように、あくまで身内による改革案に過ぎない。

 内容も「審議過程の一層の透明化」「客観的なデータに基づく議論の推進」「診療報酬改定の結果の検証のための部会設置」中医協委員の在り方」など運営方法にとどまり、中医協の役割を問い直すまで踏み込んではいない。

 その意味で、有識者会議の提言は日医が批判したような屋上屋を重ねてはいないが、中医協の裁量縮小を示唆するような提言は、日医の裁量縮小に直結するだけに断じて容認できないのだろう。

 すでに中医協改革から17年が経つ。今回改定でオンライン診療の推進は中医協の外で主導され、中医協は追従して「具体的な診療報酬点数の設定」という“在るべき機能”を果たした。

 厚労省幹部は「中医協は点数配分を決める会議であって、医療政策や制度を議論する会議ではない」と語るが、今も日医は有識者会議への怨念から解放されていないようだ。

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