新薬創出等加算の「穴埋め」

横浜_2022年11月6日

 21年度に続き、2度目となった薬価の中間年改定(毎年改定)は、終始財務省ペースで議論が進み、緊急的・特例的な措置として、土壇場で「不採算品再算定の特例適用」と「新薬創出等加算の特例適用」の2つが捻じ込まれた。与党の圧力を受け、行政が弥縫策を講じた構図だ。【本根優】

 とくに新薬創出等加算の特例に関しては、医薬品業界から「箸にも棒にも…と思っていたが、意外と手当てしてくれた」「不採算品への対応だけだと想像していたから、ありがたい」などと、驚きの声が聞かれる。

 具体的に何をしたのか。新薬創出等加算で、企業要件や乖離率によって、ルール通りなら引き下がる場合であっても「従前の薬価と遜色ない水準」とする。改定前薬価と加算適用後価格の差分のうち、95%に相当する額を上乗せする。つまり差が100円だった場合には、95円分は穴埋めする対応で、薬価がほとんど下がらないようにするわけだ。

 では、なぜ100%ではなく95%なのか。厚生労働省は「3大臣合意に基づいて決まった」との説明にとどめているが、与党関係者によれば「100%にすると、自力で加算を得て薬価を維持している企業と差が出ないため」だという。

 だが、この特例適用は、厚労省が過去に行ってきたことの“否定”のようにも映る。18年度の薬価制度抜本改革で、新薬創出等加算に企業指標を設け、加算にわざわざ企業ごとのメリハリをつけた。今回は、「イノベーションに配慮する」という名目で、企業指標で生まれた差を、財源を投じてあえて穴埋めする対応を取るわけだ。

 厚労省幹部の1人は「与党から強い声が出ていたのを受けて、それが大臣合意につながった」と明かす。この辺りに固執していたのが、田村憲久元厚労相(党社会保障制度調査会長)だ。「新薬自体の評価をどうするかが重要。下がり続ければ、日本に新しい薬は出てこなくなる」などと力説し、新薬創出等加算の不十分さを指摘していた。

 そうした声を受けて、保険局医療課が捻り出したのが、今回の新薬創出等加算の「95%穴埋め」スキームになる。

 果たして、ルール上は企業要件でそこまで評価されない新薬の薬価を“無理矢理”下がらないようにする対応を今回に限って講じることで、日本発の革新的新薬が生まれる手助けになるのだろうか。

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