菅義偉首相は1月18日、新型コロナウイルスワクチンの接種を円滑に進めるため、河野太郎行政改革担当相にワクチン接種の担当を兼務させる方針を示した。厚生労働省幹部が「まさに寝耳に水」と明かすこの人事には、どんな背景事情があるのか。【本根優】
菅首相は河野氏起用について「今回、体制を強化し、河野氏に全体の調整を指示した。(河野氏は)規制改革担当相としてそれぞれの役所に渡る問題を解決してきた」と語った。河野氏の発信力、突破力を期待しての抜擢ということだ。
しかし、自民党の閣僚経験者は「人気のある河野氏を前面に立たせて、政権浮揚を狙いたいのだろうが、河野氏に調整力があるかどうかは疑問。調整力なら、(加藤勝信)官房長官に任せればいいはず」とこぼす。
加藤氏周辺によると、河野ワクチン担当相に関して、加藤氏は「事前には伝え聞いていない」と不快感を示したという。
ワクチンのロジ(流通)を担うのであれば、官房長官のほか、直接ワクチンに関わる田村憲久厚労相、地方自治体を所管する武田良太総務相、コロナと経済対策を担う西村康稔経済再生担当相など、さまざまな人事オプションが存在する。だが、菅首相は河野氏に白羽の矢を立てた。
官邸官僚のひとりは「菅総理の“厚労省不信”が根底にある」と打ち明ける。医系技官らを軸にコロナ対応に当たっているが、「いつもスピード感に欠けることに、総理は苛立っている」。これまでも内閣官房の和泉洋人首相補佐官を中心としたタスクフォースがワクチン流通策を練ってきたが、より一層「官邸主導」を明確にするために、河野氏を担当相に据えたのだという。