「ほぼ現状肯定。何も言っていないのに近い」。
長年、主計局で厚労予算の査定に携わってきた財務省幹部は、日本医師会がこの程示した「かかりつけ医」提言に、そう苦言を呈する。日医は第1報告と称して「地域における面としてのかかりつけ医機能」を打ち出したが、「それができないから、制度上の担保が必要という話だ」と嘆息する。【本根優】
日医の松本吉郎会長は11月2日の定例会見で、いかに自分にとって思い入れの強いテーマであるかを説いた。6月の会長就任後、速やかにワーキンググループ(WG)の設置を指示し、WGで検討を進め、この程一定の考え方がまとまったことをアピールした。WGの鈴木邦彦座長(茨城県医師会長)、その上部組織の「医療政策会議」の柵木充明議長(愛知県医師会長)の尽力にも謝意を示した。
松本会長は会見で、かかりつけ医は「あくまで国民が選ぶもので、持つことを義務付けたり、割り当てたりすることには反対」と語った。かかりつけ医の「制度化」に質問が及ぶと、あくまでも求められているのは「制度整備だ」と強調した。政府は「骨太の方針2022」に「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」と記載している。
一方で、財務省の財政制度等審議会が主張するのは、かかりつけ医機能の要件の法制上明確化、認定制度の創設、利用者の事前登録・医療情報登録を促す仕組みの導入──の段階的検討だ。
登録制について、松本会長は「患者の医療へのアクセス権や医師を選ぶ権利を阻害する提案だ。日本のいい医療の伝統を損なう乱暴な議論」と突っぱねた。
いわゆる外来の「人頭払い」についても言及。「高度な医療がなかった時代はともかく、現代の複雑かつ高度な医療において現実的な提案ではない。負担のあり方も大きな問題になる」と一蹴した。
日医の「ゆるゆる路線」か、財務省の「がちがち路線」か。その間のどこかで決着するとみられるが、ほぼ「死に体」の岸田政権が続けば、現状維持に近い日医寄りの結論が出る可能性が高そうだ。