厚生労働省は8月31日、「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」の初会合を開いた。位置付け、役割、その影響力など、判然としない点は多いが、近年、薬価引き下げに喘ぎ、藁にもすがる思いの医薬品業界が熱視線を送っている。【本根優】
この検討会を仕切るのは、医政局長ではなく、初代「医薬産業振興・医療情報審議官」に就いた城克文氏。事務局を担うのは、医政局経済課から名称変更した「医薬産業振興・医療情報企画課」の安藤公一課長だ。
有識者としてメンバー入りしたのは以下の8人。
▽遠藤久夫(学習院大学経済学部教授)▽小黒一正(法政大学経済学部教授)▽香取照幸(上智大学総合人間学部社会福祉学科教授)▽坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院教授)▽菅原琢磨(法政大学経済学部教授)▽成川衛(北里大学薬学部教授)▽三浦俊彦(中央大学商学部教授)▽三村優美子(青山学院大学名誉教授。
荒っぽく紹介すれば、座長には“無難に”元中央社会保険医療協議会会長の遠藤氏が就き、厚労省にとって「使い勝手のいいご意見番」である坂巻氏が副座長に。香取氏は厚労省で年金局長などを務め、社会保障全体に精通する。
元財務官僚の小黒氏と、かつての遠藤氏の教え子で小黒氏とは幼なじみの菅原氏は、同じ法大教授であり、ともに新時代戦略研究所(INES)に属する。
成川氏は元厚労省薬系技官。薬価制度の有用性加算の「ポイント制」の生みの親でもある。「流通枠」では2人。三浦氏は気鋭のマーケティング専門家で、成川氏とともに共同研究を行った経験もある。三村氏は医薬品流通分野に長年とどまり続ける大御所だ。
製薬団体幹部は「我われが候補を10人挙げれば、8人すべて当てられそうな順当すぎる人選」と語る。
大学教授に絞ったため、日本医師会や日本薬剤師会の委員もいない。そして、元日本製薬団体連合会・保険薬価研究会委員長の長野明氏や元厚労省医政局長の武田俊彦氏といった「くすり未来塾」を率いる面々は「有識者でない」(厚労省関係者)という理由で外れた。
いわば「御用学者」8人で固めた流通・薬価検討会。前出の製薬団体幹部は「厚労省が運営のしやすい人選をしたということは、結論は城さんのところに委ねられているということだろう」と推察している。