3月4日、自民党の社会保障制度調査会(会長=鴨下一郎衆院議員)が新たなプロジェクトチーム(PT)を立ち上げた。それが「創薬力の強化育成に関するPT」。座長には元厚労副大臣の橋本岳衆院議員が就いた。【本根優】
20年末、同調査会医療委員会などで、薬価の毎年改定(中間年改定)を扱った際、医薬品産業そのもののあるべき姿について議論する場が必要との意見が上がったことを受け、鴨下氏が指示。橋本氏がPT立ち上げの実務を担った。
初会合で、鴨下氏は「製薬企業の在り方をしっかり考えようとなり、日本のメーカーのワクチン開発力も問われている。ハレーションも多いと思うので、最終的にどういうふうにやっていくかは、走りながら考えたい」などと挨拶した。
方向性は定まっておらず、当面は業界ヒアリングなどを続け、今夏に厚労省がまとめる予定の「医薬品産業ビジョン」や政府「骨太の方針」に議論内容を反映することを目指す。
PTは党の正式な組織として華々しく発足したように映るが、実効性を発揮できるか、疑問符が付く。
創薬力と言っても、すでに日本国内の主だった新薬メーカーは、武田薬品工業を筆頭に、海外で大半の収益を上げている状況。さらに、研究開発強化で資金面、人材面の話を膨らませても、言いっぱなしで終わることが多い。
保険診療の薬価の話と、その範疇ではないワクチンの価格も同列には検討できない。そもそも、党の組織となると、一定の手続きを経なければならず、議論が硬直化しやすい。広げた風呂敷が大きすぎて、収拾がつかず、中途半端に終わる可能性もある。
こう考えるとわかりやすい。10月までに衆院選が行われる。毎年改定で大きなダメージを受け、製薬業界から自民党への風当たりが強まる中、PTを開くことで選挙での支援をつなぎとめたい。裏のネーミングは「製薬業界から金を集めるためのPT」としておこう。