厚生労働省はこの程、新たな後発医薬品の数量シェア目標を示した。「23年度末までに全都道府県で80%以上」というものだ。【本根優】
これが意欲的な目標かと言えば、そうではない。今後の情勢がまったく見通せない中で「場当たり的」に設定したものと言わざるを得ない。
厚労省は20年9月までに全国で80%以上という目標を掲げ、それに向けて取り組みを続けてきたものの、薬価調査の結果、78.3%と未達に終わった。
これを踏まえ、厚労省は新たな目標を20年度内に示す方向で調整を進めていた。ところが、健康被害までもたらした小林化工の睡眠導入剤混入事案や、業界大手・日医工のGMP(製造及び品質管理基準)違反など、後発品への信頼を揺るがす重大事案が発生し、「使用促進どころではない」(厚労省医政局関係者)事態に陥った。
それでも、新目標を示さないわけにいかない。各方面からせっつかれ、当たり障りのない目標として設定されたのが「全都道府県で80%以上」というものだ。
70%を下回る最下位の徳島をはじめ、80%未満の17都府県の使用割合を底上げすることで、全都道府県で80%をクリアしたい考えだ。
これに関し、野党関係者は「都道府県ごとにバラつきがあることは従来からわかっていた。全都道府県が80%というのは、これまでの目標と総体としては変わらず、事実上の目標の据え置きだ」と指摘する。
もちろん、全都道府県が80%を達成すれば、全国的には80数パーセントにはなるだろうが、国全体として、例えば「85%以上」といった明確な数値目標を設定できないのは、行政が責任を持てない程、先行きが不透明であることの証左だろう。