「医療は医療、福祉は福祉」

20200827_障害福祉サービス等報酬改定検討チーム

 障害を抱える人のケアに関わる費用について、「医療のところは医療にお願いして、福祉は福祉の一番得意なところがやる。そうすることによって、持続可能性も出てくる。皆さん、質の高いサービスを提供したいという熱意がどんどん肥大化を招いている」との意見がある。【新井 裕充】

 令和3年度の障害報酬改定に向け、厚生労働省は8月27日の会合に「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた主な論点(案)」を示した。

 論点には、「障害福祉サービス等の持続可能性の確保と適切なサービス提供を行うための報酬等の見直し」が挙げられている。

 この会合では、今年7月から5回にわたり関係団体ヒアリングを実施した。厚労省は今回、多くの団体から寄せられた要望などを整理した68ページの資料を示すとともに、次期改定に向けた論点を挙げた。

 質疑では、「皆さん、どんどん自分たちの仕事を増やして、より高いサービスを提供したいので財源を回してほしいというロジックになりがちだ」との声が上がった。

 自治体の担当者は「正直、これだけの要望がある中で、限られた財源の中で、効率・効果的に、どこをどんなふうに報酬改定をしていくかなという部分で、ちょっと大変だな」と感想を漏らした。

 一方、新生児医療に携わる医師は「医療と福祉はセットとして考えるべきである」と主張した。

 詳しくは以下のとおり。

〇厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・竹内尚也課長
 それでは、ただいまの説明につきまして、ご質問、ご意見等ございましたら、お願いいたします。

 (中略)

 井出アドバイザー、お願いします。
.
〇井出健二郎アドバイザー(昭和女子大学教授)
 ありがとうございます。前回、私もこうしたヒアリングをですね、聴かせていただきましたので、前回との比較と言うか、前回と比べてということでコメントをさせていただきたいと思います。

 まずは、各団体の方からですね、本当にさまざまご意見を伺いして、本当にまた、勉強させていただきました。ありがとうございました。

 それから今回、60ページにわたって意見を集約していただいて、まとめていただいて本当に事務局の方にも御礼を申し上げたいと思います。

 私の印象は、このヒアリングのこう、大きな流れっていうのはそんなには変わって、前回とは変わっていなかったかなっていう印象がありますけれども、

 各団体からのその、整理の仕方って言いますか、工夫された団体も多々ありましたので、書面って言うか、文書を見ていて本当によく分かりました。ありがとうございました。

 こんなこと言うと失礼なんですけれども、いわゆるサービスに関わっての関係は、やはりその……、「リクエスト」って言いますか、「ご要望」がやっぱり、これは当たり前のことですけれども、多々あったなあという印象を受けています。

 それから、これまでもずっと論点でしたけれども、「高齢化」ですとか、「重度」とか「医療的ケア」とか「地域」っていってキーワード、これから、どう考えていくかっていうのは自分なりにはちょっとこう、感覚を持ったところです。

 それから、今回、コロナのことがあって、というわけではありませんけれども、災害とか感染症ですね、つまり、サービスとか事業を行っていく上で、これまでに、ちょっとこう、なかったリスクって言うか、リスク対応について、これはたぶん、経営的な存続っていうところからも、各団体さんも少しずつ不安があったり、どうにかしてほしいっていう印象も、これは新しく、ちょっと思ったところです。

 それから、制度の持続可能な云々っていうところについては、これは一部、知恵も頂いたように思いますけれども、全体的なバランスを考える中では、やはりその、「こちら側」って言うと、いいかどうか分かりませんけど、

 こちら側から、ある程度、方向性を示していって、ある程度こう、利害関係も含めて考えていくことかなと思っております。前回のヒアリングも含めて、私からの印象という意味では以上でございます。ありがとうございました。
.
〇厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・竹内尚也課長
 ありがとうございます。佐藤アドバイザー、お願いします。
.
〇佐藤香アドバイザー(東京大学社会科学研究所社会調査・データアーカイブ研究センター教授)
 はい。ご説明ありがとうございました。井出先生と同じく、資料をまとめていただいて、事務局にも御礼を申し上げます。

 私は、ヒアリングを聴かせていただきましたのはこれが初めてだったんですけれども、大変勉強になりました。

 本当に印象なんですけれども、質の高い、より障害者の方たちのサポートができるようなサービスを考えると、皆さん、どんどん自分たちの仕事を増やして、より高いサービスを提供したいので財源を回してほしいというロジックになりがちだと思うんですけれども、

 ま、恐らく、医療と、それから福祉と、それから高齢者の福祉と、それから子どもの場合ですと、教育で文科省の関連とありまして、そこも踏み込んだサービスを、というのを福祉がやるのではなくて、

 それぞれ得意な分野は、例えば、医療のところは医療にお願いして、福祉を福祉の一番得意なところがやる。

 あるいは、病院のほうも福祉の部分でやることは福祉のほうにお願いするとか、あるいは教育行政のほうに子どもの関係は財源を確保してもらうとか、

 得意な分野で協力しながらというふうなやり方を、より積極的に福祉政策のところが考えていく必要があるんじゃないのかなあという印象を抱きました。

 そうすることによって、持続可能性も出てくるのかなあというふうな……。

 皆さん、質の高いサービスを提供したいという熱意がどんどん肥大化を招いている、というような感じで拝聴しておりました。以上です。
.
〇厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・竹内尚也課長
 はい、ありがとうございます。小川アドバイザー、お願いします。
.
〇小川正洋アドバイザー(柏市保健福祉部障害福祉課長)
 はい。ご説明ありがとうございました。ちょっと、感想と言うか、印象的ということで、それぞれの団体から、現場にいる方からも真剣な訴えを聴いて、まあ、納得する部分もあるんですけど、

 正直、これだけの要望がある中で、限られた財源の中で、効率・効果的に、どこをどんなふうに報酬改定をしていくかなっていう部分で、ちょっと大変だなっていうのを感じた部分がございます。

 (中略)

 やはり大変なことをやってるとか、より本当にやってほしいと言うか、必要なことをやっている所に重点的に配分されるような、そんな報酬体系になるように今後の議論が進めばいいかなと、ちょっと感想になってしまうんですが、以上でございます。
.
〇厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・竹内尚也課長
 ありがとうございます。田村先生、いかがでしょうか。
.
〇田村正徳アドバイザー(埼玉医科大学総合医療センター小児科学教室客員教授兼名誉教授)
 膨大な資料をおまとめいただきまして誠にありがとうございます。

 ただ、私自身は、この限られた時間の中で、次の(令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた主な)「論点」の所で、具体的な事項について発言したいと思いますので、

 「資料1」(関係団体ヒアリングにおけるご意見等について)のご説明につきましては、本当にお疲れ様でした、ありがとうございました、ということだけで終わらせていただきたいと思います。
.
〇厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・竹内尚也課長
 はい。ありがとうございます。それでは、次の議事に移らせていただきたいと思います。「資料2」につきまして、事務局からご説明いたします。
.
〇厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・猪狩勝三課長補佐
 はい。それでは「資料2」のご説明でございます。資料につきましては、次回以降の検討チームにけるご議論において想定される論点、あくまでも大枠の論点でございますが、こちらは事務局において整理したというものでございます。

 なお、個別のサービス、次回以降はですね、個別のサービスごとに議論を進めてまいりたいと思います。今、これ、出てきていないサービス、ございますけれども、今後の検討の中で、それぞれご検討、ご議論をお願いしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、資料のほうの説明でございます。まず、最初の1ページ目でございます。「はじめに」という所でございますが、こちらはまず基本的な考え方について整理を試みたというものでございます。
.
【資料2】令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた主な論点(案)_20200827_ページ_2
.
 まず、1つ目の丸でございますが、まず現状としまして、自立支援法の施行から14年が経過し、現在、障害福祉サービス等の利用者、こちらが120万人、国の予算額は1.6兆円、事業費ベースで言いますと3.2兆円ということになりますけれども、法施行当初と比較すると3倍に達しているというところで、

 これまで障害児者への支援、これは年々拡充してきたというところでございます。

 (中略)

 「資料2」の説明としては以上でございます。
.
〇厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・竹内尚也課長
 はい。ただいまの説明につきまして、ご質問、ご意見等ございましたら、お願いいたします。また、ここに記載されている以外の内容に関するご意見でも結構でございますので、よろしくお願いいたします。

 田村アドバイザー、お願いします。
.
〇田村正徳アドバイザー(埼玉医科大学総合医療センター小児科学教室客員教授兼名誉教授)
 ご丁寧なご説明、ありがとうございました。

 ただ、1ページの最初の「はじめに」の所、一番目に、障害者自立支援法の施行から見て、予算が既に3倍に達しているということを最初に出しておられて、

 今回も、ヒアリングに当たっても論点(=視点)の3ということで、それを考えた、踏まえた上で各団体から要望を出すように、ということを言っておられます。

 ▼ ヒアリングに際しての「視点3」 → 障害福祉サービス等に係る予算額が、障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)の施行時から3倍以上に増加し、毎年10%弱の伸びを示している中で、持続可能な制度としていくための課題及び対処方策

 これはもちろん、行政の立場から見れば当然のことだとは思うんですが、私はやっぱり医療と福祉はセットとして考えるべきであるというふうに考えております。

 ですから、例えば、私自身、新生児医療に関わって、ずっと関わっておりましたので、NICUの長期入院児というものが、実は2008年に起きました墨東病院事件の、妊婦さんが受け入れができなくて亡くなるというところにつながったということで、

 当時の科研の責任者の1人として検討させていただきましたところ、NICUで人工呼吸器を付けながら入院しているお子さんが在宅に移行するということになって、その方は予後不良ということになったんですが、在宅に移行して5カ月間で亡くなったと。

 でも、その5カ月間、在宅でかかった医療費というのはNICUに、もしそのまま入院していれば10日間での医療費に相当したと。

 それから、一般の小児科病棟に移行したとしても、1カ月分の医療費で実は5カ月間、そのお子さんは在宅でみることができたんだと。

 それはなぜ、そんなに在宅医療に移行すると、その人工呼吸器を必要とするような高度な医療的ケア児がそれだけ安い医療費で済むかと言うと、それは、病院であれば、医者、看護婦、それからリハビリ、医師、場合によっては医療相談室などが担当してた仕事をお母さんが全部肩代わりして頑張っておられるから、それだけ安く済んだということであって。

 そういう観点からも、それだけ苦労しておられる在宅医療の児の家族、特にお母さんに対しては支援が必要だということを私、その時に初めて身にしみて分かったわけなんですけど。

 そういうふうに、たとえ、この医療、福祉……。

 福祉という点だけからいけば、確かにお金が掛かる、これだけお金が掛かりますよ、ということがあっても、それが国全体の医療費としては、それを5分の1に削減することができるんであれば、そこにそれだけのお金をかけるのは決して国として無駄なことではない。むしろやるべきことだというふうに考えておりますので、

 私はぜひ、医療と福祉はセットとして考えるということを今回もいろいろなこの、たくさん挙がっている要望の中で、どれを採用して、というようなときなんかには検討すべきじゃないかというふうに考えております。

 (中略)

〇井出健二郎アドバイザー(昭和女子大学教授)
 (前略) 先ほど、田村先生のほうからも、「医療と福祉だ」っていうこともありました。

 これまでの改定で、よくその、介護の流れについていく、介護報酬の、ある仕組みに障害もついていくっていうことでしたので、

 今回も介護のところとか、あるいは、もしかすると医療、診療報酬のあたりでも、もしかすると少しずつ少しずつ医療と福祉、介護、それから障害っていうのも、ある部分、こう、横に見たときに共通したものがあるのかなっていう印象もあります。

 (以下略)

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