政府「骨太の方針2021」をめぐる与党内調整で、薬価に関する記述に文言が書き加えられ、6月18日に閣議決定された。しかし、これが「どうとでも読める」(製薬団体幹部)内容になっているため、製薬業界内では評価が分かれている。【本根優】
具体的には「革新的な医薬品におけるイノベーションの評価の観点およびそれ以外の長期収載品などの医薬品について評価の適正化を行う観点から薬価算定基準の見直しを透明性・予見性の確保にも留意しつつ図る」と記載。9日の原案から「透明性・予見性の確保」を追記した格好だ。
この文言はどのようにして追加されたのか。製薬業界が与党に熱心なロビー活動を仕掛けた結果と見る向きもあり、事実として、閣議決定後には企業の渉外担当者らが国会議員会館を「お礼参り」に訪れている。
ただ、当初、業界一丸で要望していた「特許期間中の新薬の薬価維持」からは、かけ離れた内容となった。しかも「透明性・予見性の確保」の意味するところが、制度そのものを指すのか、企業へ対応を求めているのかによって、事情が大きく異なる。
確かに、薬価算定ルールの設計とその運用について、度重なる恣意的なルール変更を非難する文脈で、「透明性や予見性を確保することが必要」との声が、業界からは発せられていた。
だが、透明性に関しては、20年11月の政府・行政事業レビューで「原価の情報が必ずしも十分に開示されていない」と企業の対応のほうが問題視され、製品総原価の開示度が低い品目は算定薬価をさらに厳しく下げる仕組みを検討すべきとの指摘まで出ていた。
ある自民政調幹部は「業界に“配慮”した文言が入ったのは事実。あとは年末の予算編成勝負だ」と語り、骨太段階ではどのように政策的に反映されるかは不透明との認識を示している。