「次官が3年飛ぶとは驚きだ」
過去に局長を経験した厚生労働省OBさえも、今回の幹部人事に驚きの声を上げる。厚労省幹部人事で、84年入省の吉田学氏が退き、87年入省の大島一博政策統括官(総合政策担当)が事務次官に昇格することが発表された。【本根優】
6代連続で旧厚生省出身者が事務方トップに座ることになる。二川一男氏、蒲原基道氏、鈴木俊彦氏、樽見英樹氏、吉田学氏とバトンをつなぎ、今度はそれが大島氏に渡ることになる。
その特徴は、国会や他省庁との総合調整などを担う官房長を経験しているか、または官邸での経験が豊富かという点にある。「豊作」と言われ、樽見氏、木下賢志氏(元年金局長)、武田俊彦氏(元医政局長)を輩出した83年入省組の中でも抜きんでた存在だった鈴木氏を除けば、次官に上り詰めたのは「官房長」か「官邸経験者」と括ることができる。そして、大島氏はどちらにも当てはまる。
一方、今回の人事で、次官の芽があったにもかかわらず厚労省を去ることになったのが、濵谷浩樹保険局長(85年入省)、鎌田光明医薬・生活衛生局長、高橋俊之年金局長(87年入省)といった面々だ。
前述の厚労省OBは「特に濵谷氏は残念がっているだろう」と推察する。
83年組の中で、鈴木氏から樽見氏にスイッチしたように、同期で次官が2人というケースは、可能性がゼロではない。その意味では医政局長から保険局長に回る伊原和人氏(87年入省)には、わずかながら「次の次官」の芽は残る。
しかし、それは官邸が今後進める「厚労省再編」や、旧労働省出身者とのバランス(6代続けて旧厚生省出身者)、さらには「女性初の次官」の呼び声が高い渡辺由美子大臣官房長(内閣官房に出向し、こども家庭庁設立準備室長、88年入省)の動向とも密接に関わる。