ある中医協委員の胸中

桜田門_2021年6月25日

 日本医師会の今村聡副会長が6月3日付けで中央社会保険医療協議会委員を退任した。この今村氏、委員としての胸中をポロリと漏らしたことがある。2020年度診療報酬改定の議論が佳境に入った2019年11月末、都内で開かれた民間シンポジウムの壇上での発言だった。【堤実篤】

 「中医協の議論について、メディアはどの委員がどんな発言をしたといろいろ書いてくれるのだが……」

 そう切り出した今村氏は、委員=役者論に言及した。

 「中医協の委員は厚労省が作成したシナリオの上で演じさせられているようだ。厚労省の後ろには財務省の影が見えて、その後ろには政権の影が見えるが、診療報酬の決定には政権の力がとくに大きく働いている」

 中医協の議論は事務局作成の論点への賛否が交錯しても、おおむね予定調和の結論に着地することから、しばしばプロレスに例えられる。その虚しさを告白するような発言だった。

 だが、予定調和が破られる場面もある。20年1月31日の中医協総会で、幸野庄司委員(健保連理事)が医療用保湿剤の処方制限を附帯意見に記載するように求めた途端、松本吉郎委員(日医常任理事)が対決モードに入った。

 健保連がレセプトから抽出したデータを取り上げて、松本氏は「中医協に提出すれば、あのデータがいかに杜撰なものかが明らかにされますが、それでもいいのですか?」「あなたはいつもそうですよ!」「健保連のデータを中医協に提出することには反対します!」などと、プロレスでいうシュートマッチを仕掛けた。

 松本氏に対して幸野氏は応戦せず、受けに回ったため、総会は紛糾に至らなかった。

 プロレスもときに予定調和から逸脱して、全く噛み合わない不穏試合や、大怪我や死亡事故に至る試合もある。中医協はエンターテインメント色の強い“純プロレス”よりも、むしろUWFインターナショナルのように“格闘技色の強いプロレス”かもしれない。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 不忍池_2021年6月29日

    ゾンビのような改革案

  2. 日比谷公園_2021年3月23日

    新たな後発品目標

  3. 桜田門_2020年10月28日

    続く「かかりつけ医」論議

  4. 増上寺前_2020年10月28日

    3年ぶりの賀詞交歓会

  5. 日比谷シティ前_2023年8月2日(中医協の帰り道)

    改定時期「2度」への懸念

  6. 佃大橋から隅田川_2022年5月11日

    中川氏不出馬の裏事情

  7. 西幸門前L_2022年9月22日

    社保調査会長に後藤氏

  8. 勝関橋_2022年3月14日

    福島県沖地震の影響

議事録のページ総合
総会議事録のページ
材料専門部会議事録のページ
■ 議事録のページ【小委・分科会】

第587回中医協総会(2024年4月10日)【速記録】

第587回中医協総会(2024年4月10日)【速記録】

第586回中医協総会(2024年3月22日)【速記録】

第586回中医協総会(2024年3月22日)【速記録】

第224回中医協・薬価専門部会(2024年3月22日)【速記録】

第224回中医協・薬価専門部会(2024年3月22日)【速記録】
PAGE TOP