薬価の中間年改定(毎年改定)をめぐっては、製薬業界などから、後発品を中心とする医薬品の安定供給問題の元凶といった批判が絶えない。一方で、新薬創出・適応外薬解消等促進加算については、その「入口」と言える品目要件や企業要件がたびたび議論になるが、8月30日の中医協・薬価専門部会では、そうではなく「出口」に対して、支払側が新たな提案をした。【本根優】
10年に試行導入、18年に本格導入された新薬創出加算は、加算という形で薬価引き下げを猶予された加算額が積み上がり、特許が切れて後発品が出た場合に、次の通常改定で累積額控除(返還)を行う仕組みとなっている。
30日の薬価専門部会で、厚生労働省は「診療報酬改定がない年の薬価改定についてどう考えるか」と論点を示した。これに呼応して、踏み込んだ意見を表明したのが松本真人委員(健康保険組合連合会理事)。
累積額控除が2年ごとの通常改定時では後発品の収載時期によって「1年以上のタイムラグが生じる。公平性の観点から最低限、累積額控除は毎年行うべきではないか」と主張したのだ。
そのうえで、後発品の新規収載時の薬価が、新薬の累積額控除後の価格で決まることを踏まえれば、年2回の後発品収載時(6月、12月)に累積額控除を行うことを提案する」と述べた。松本氏の提案通りになれば、加算を持つ製薬企業は、返還による薬価引き下げの時期がこれまでより早まるため、その分収益の減少につながる。
関係者によると、24年度薬価制度改革には、さまざまな懸案があり、中間年改定について厚労省は、来年以降に具体的な検討を行いたい意向だ。
そうした行政側の議論のハンドリングからはみ出した提案を、松本委員が行ったことになる。
累積額控除を「毎年行う」ことや、「後発品収載のタイミングで行う」ことを、中間年改定の枠組みの議論として扱うのか、新薬創出加算の中身の議論として扱うのか、それによっても今後の展開が変わってくる。
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