薬剤費を減らしたり後発医薬品の使用を進めるたりするため、大学病院などで患者に処方される薬をルール化すること(フォーミュラリー)を厚生労働省がしつこく提案しているが、日本医師会が強く反対している。厚労省の担当者は医療の質向上など患者へのメリットを強調するが、「医師全体の総意のないところでガイドラインによって非常に制限がかかる。製薬会社さんの説明がどこにいくか」などと抵抗している。(新井裕充)
厚労省は12月13日の中医協総会で入院医療をテーマに挙げ、大学病院など高度な医療を提供すると言われる特定機能病院の役割として「使用ガイド付きの医薬品集の作成・維持を行う体制を評価する」との方針を示した。
この分野に詳しい人ならご存知の「フォーミュラリー」である。6月26日の中医協総会で提案したが反発が大きく、けちょんけちょんに叩かれたので、今度は「使用ガイド付きの医薬品集」という穏便な名前に変えて再び提案した。絶対にあきらめない不屈の精神を見習いたい。
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■ 診療報酬と結び付けることは反対
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当然のことながら、診療側7人のうち3人もいる日本医師会の委員が代わる代わるに演説。1時間近くにわたり、虚しい時間が延々と続いた。
質疑の冒頭で日本医師会の常任理事は「経済性を重視した医薬品の選択が期待されているのかどうか、非常に疑問もある。こういった課題がある中で、現時点では診療報酬と結び付けることについては反対する」と改めて強調した。
一方、保険者代表のうち協会けんぽの理事は「ガイド付きの医薬品集の質が担保され、適切な実施ができる体制をまず検討し、十分に促進できる体制を見て、評価について次に検討すべき」と日本医師会の意見に理解を示した。裏切りである。
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■「何を懸念されてるのか分からない」
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これに不満だったのか、保険者のもう1人のご意見番である健康保険組合連合会の理事は「何を懸念されてるのか、ちょっとよく分からない」とけんか腰に議論をふっかけた。
「ガイド付きの医薬品集のルールは決して医師の処方権をオーバーライドするものではない。医師が必要と認めた場合や患者が特に望んだ場合であり、絶対このルールに従わなければいけないものではない」
このように述べ、グダグダ反対している日本医師会の“本音”に切り込んだ。
これに対し日本医師会の副会長は、医薬品の適正使用を進める必要性には賛同した上で、ならば医薬品情報管理室(DI室)などの費用を診療報酬で評価しろという主張を展開した。
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■「ちょっとおかしいんじゃないのか」
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ひととおり委員の意見が出尽くしたところで、通常ならば局長や医療課長などのエライ人が締めくくり発言をすべき場面で、田宮憲一薬剤管理官が挙手。今回の提案にかける“思い”を切々と語った。
これに日本医師会の常任理事は、委員の求めがないのに発言したことに難癖を付け、「今の話は、何か質問があっての答えなのか。ちょっとおかしいんじゃないのか! 誰も求めてない」とブチ切れた。
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■「評価するなとは言っていない」
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日本医師会のいちゃもんに対し、医療課長がすかさずフォロー。「私の資料の説明が少し足りなかった」と部下をかばった。
すると、それまで日本医師会に寄り添っていた協会けんぽの委員が急にトーンダウン。「評価するなとは言っていない」と厚労省にすり寄った。
議論の模様は、以下のPDF(P98~130)を参照。グダグダな部分が多いので、お手すきの時にどうぞ。
12月13日の中医協総会【議事録】 ..