シナリオのないドラマがあるのが中医協。今回はまさにそうでした。メインの議題はコロナ特例の見直しですが、薬害当事者の発言、公益委員の退任あいさつを合わせた一本の番組として見ると、中医協が抱えている問題が改めて浮き彫りになるような気がします。【新井裕充】
今回は総会のみの開催です。1月25日から毎週続いたゾコーバの議論が2月15日に一段落し、先週の2月22日は1回休み。そして新たにコロナ特例の見直し論議がスタートしました。
とはいえ、結論は既に用意されているでしょうから、「ガス抜き会議」「アリバイづくり」というべきでしょうか。「すぐには全部やめられない」という内容の資料が出て、診療側と支払側がバチバチやっているように見える発言をして、今回はいったん終了しました。
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【議事の流れ】
1.笠木委員の所属する部会等について(10:01~10:03)
2.コロナ特例の見直しについて(10:03~11:17)
3.ゾコーバ錠について間宮清委員(11:17~11:22)
4.関ふ佐子氏の退任あいさつ(11:23~11:34)
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注目すべきは、閉会間際の2人の発言(3と4)です。
まず、患者代表の間宮清委員がゾコーバの関係で発言しました。サリドマイド訴訟の和解確認書を画面越しに示しながら、非常に厳しい口調でした。
続いて、公益委員を前日(2月28日)付けで退任した関ふ佐子氏が10分以上にわたり、「6年間、心に蓄積してきた思い」(関氏)を熱く語りました。正式には委員でも参考人でもないのですが、関氏のお人柄ゆえにOKなのでしょう。ルールを厳格に守るべきかは官僚の気分次第、価値判断です。
間宮委員と関氏の発言について詳しくはこちらをご覧ください。
https://bit.ly/3ZwKJc3
上記1~4の順番を逆さまにすれば、中医協が抱えている問題がもっと明確に伝わったかもしれません。
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1,関ふ佐子氏の退任あいさつ
関氏は、会議の席上で沈黙を守り続けてきた苦悩を明かしながら、
積もり積もった思いの丈をぶちまけました。
公益委員の役割とは何か、中医協という会議体はどうあるべきか、
という問題提起でした。
いろいろ会議の外で厚労省に提案したけれど、
事務局のマンパワー不足という問題もあって
厚い壁に阻まれたことを穏やかな口調で伝えました。
2.ゾコーバ錠に関する間宮清委員の発言
薬害被害の当事者である間宮委員は厚労省の無責任体質を批判しました。
また、「専門家」と称される方々の見解がいかに当てにならないものか、
そのために重大な被害を引き起こす危険性があることを指摘した、と私は理解しました。
3.コロナ特例の見直しについて
診療側が継続を求め、支払側は廃止を主張することは当然でしょう。
背負っている組織や団体があるので、中医協で「合意」はありえません。
問題は、「裁判官」である事務局(厚労省)がどのような姿勢を示したか。
厚労省健康局結核感染症課の江浪武志課長の答弁によく表れています。
「官僚はどこを向いているのか」と疑問を感じます。
これが関氏と間宮委員の発言後だったら、少しは違っていたのでしょうか。
4.新たに公益委員に就任した笠木映里氏のあいさつ
笠木委員はこのように述べました。
「社会保障法という分野の研究者をしておりまして、
中医協については研究対象として長いこと関心を持って研究をしておりました。
このたび、その中医協の公益委員という大変な重責を拝命いたしまして、
緊張もしておりますけれども、真剣につとめてまいりたいと思います」
もし、1~3が先にあって、最後に就任のあいさつをしていたら、
「社会保障法という分野の研究者」とか、
「中医協については研究対象」などと言っただろうか、と思いました。
今後に向けた抱負を語っていたかもしれません。
と笠木委員に期待したいです。
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今回のメインテーマである特例見直しについては、診療側・支払側の発言という流れの中で質問が出て、これに厚労省の江浪課長が答えました。
質問は次の3つです。
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①段階的な移行に向けたモニタリングについて(支払側・松本真人委員)
②平時に戻る基準とは何か(支払側・鈴木順三委員)
③重症者は減っているのに死亡者数が顕著に増えている理由(公益側・飯塚敏晃委員)
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江浪課長は次のように述べました。
〇厚労省健康局結核感染症課・江浪武志課長
健康局結核感染症課長の江浪と申します。よろしくお願いいたします。私のほうから感染症対策の観点から3点ほど、ご質問に対してお答えを申し上げたいと思います。
まず5類に移行したあとの患者数、死亡者数などの把握方法と公表の頻度というご質問についてでございます。
今の新型コロナウイルス感染症に関しましては、各、診療しました医療機関から総患者数を毎日ご報告をいただいておりまして、また新型コロナに罹患後に亡くなられた方につきましては、それもご報告をいただいて、それを日々、公表させていただいているというところでございます。
これが5類に移行ということになりますと、これは、この後のサーベイランスの在り方ということで厚生労働省の厚生科学審議会感染症部会におきまして議論をいただいておりますが、2月の24日にご議論を1回いただいておりまして、基本的には季節性インフルエンザと同様に特定のいくつかの医療機関からのご報告をいただく定点報告というかたちに移行するということで、ご議論をいただいております。
そうなりますと、患者数の報告に関しましては、基本的には週1回。先週の状況について毎週金曜日に公表というようなかたちが基本になってくるものというふうに考えてございます。
死亡者数の把握につきましては、もともとコロナに罹患後に亡くなられた方について、ご報告をいただいているところでございますが、
この新型コロナも病状が変わってまいりまして、新型コロナウイルス感染症による肺炎で亡くなられるというよりも基礎疾患の悪化などによって亡くなられる方が多いという状況になってきているということも含めまして、死亡者数の把握はなかなか難しくなってきておるというふうに考えてございます。
この死亡者数の把握に関しましては、まだ厚生科学審議会におきましてもご議論をいただいておらず、まだ検討中ということでございますけれども、基本的には季節性のインフルエンザで確認しているように、総死亡に与える影響、「超過死亡」というかたちで見ていくことが基本になるのではないかというふうに考えてございます。
ただそうしますと、把握に相当程度、時間がかかるということの課題がございまして、もう少し迅速にデータを把握する方法がないかということについて、まだこれは事務局のほうで検討中ということでございまして、成案が得られましたら厚生科学審議会でご議論をいただくということを考えてございます。
2点目。この新型コロナウイルス感染症が5類に移行したあと、どういったかたちで、その平時といいますか、そういったことになっていくのかということでございますけれども。
今回、今般の新型コロナウイルス感染症に関しましては、本日、医療課長からご報告をいただきましたように、感染症法上の人権制約との関係も含めますと、5類に移行するということでございますけれども。
昨年も、新型コロナ発生以降、3年間にわたって季節を問わず大きな流行を繰り返すという感染症でございます。この感染症が今後どのように、この人間社会に馴染んでいくのかということにつきましては、これは専門家の先生方もなかなか予見することは難しいというふうに、ご意見をいただいております。
したがいまして、5類移行後も一定程度、感染拡大が繰り返すということになりますけれども、その感染拡大の状況と、それに対する医療提供の状況というものを評価しながら段階的に対策を進めていくということであろうというふうに考えているところでございます。
新型コロナウイルス感染症に関しましても、予防接種と流行による免疫の獲得によりまして、徐々に、その当初の流行のかたちとは異なってくるだろうというふうに考えられておりますけれども、どの程度で、どういったかたちの流行に、インフルエンザのように毎年冬に1回流行するようなかたちになるのか、それとも、そうならないのか、そういったことも見極めながら対策を進めていく必要があろうというところでございます。
3点目の点でございますけれども、今回お示しをしてございます患者数、重症者数、死亡者数の推移というところで、患者数は非常に多くなっている。重症者数、すみません、感染者数はすごく、相当大きくなっている。
一方で、重症者数の数は過去に比べて少なくなっている。一方で、亡くなられる方の数は多いという、この点についてどう考えるかということでございます。
患者数の把握に関しましては、引き続き全ての医療機関から患者数の報告ということでいただいておりますので、可能な限り幅広く取っているという状況で、オミクロン株の特徴により非常に感染が拡大しているということを、感染力が強いということを受けて、患者数は増えているということでございます。
重症者数に関しましては、これは一定の定義、「ICUに入っている」などの定義を置いた上での把握ということでございますけれども。
先ほど申し上げましたとおり、新型コロナウイルス感染症によって、そのウイルス性肺炎によって急速に重症化してICUに入って亡くなられるというよりは、
そういった病態を経ずに基礎疾患の悪化などで亡くなられるという方が多くなっているということを受けて、この重症者数の数ということは、その定義、「ICUなどに入っている方」というところで、その数が減っているように見えるということでございます。
一方で、この新規死亡者数の推移ということでございますけれども、感染が非常に拡大して基礎疾患の悪化などで亡くなる方も増えてございますので、それを受けて死亡者数も多くなっているということでございます。
ただ、この患者数と死亡者数の比ということで見ますと、感染者数に比べて亡くなられる方の数は、割合は少なくなってきてございまして、これは株、ウイルス株の変異による特徴と、予防接種あるいは感染による免疫の獲得などによって重症化率、死亡率が下がってきているんではないかというふうに評価をいただいているところでございます。私からは以上です。
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