CTやMRIなど医療機器の共同利用が議論になっている。厚生労働省は「医療機器の効率的な利用をさらに推進していく必要がある」との考えを示しているが、「医療安全という点で、検査をしていないがために医療トラブルになった場合もある」と訴訟リスクを指摘する声もある。【新井裕充】
厚労省は6月26日の中医協総会で、来年度の診療報酬改定に向けて「医療機器の効率的かつ有効・安全な利用」をテーマに挙げた上で論点を提示。「CTやMRI、ポジトロン断層撮影にかかる共同利用の実態を踏まえ、医療機器の効率的な利用をさらに推進する観点から、どのような対応が考えられるか」と意見を求めた。
日本医師会の委員は「共同利用を進めるべきは重粒子線、陽子線などをはじめとした超高額医療機器であって、そちらを推進すべき」と主張した。さらに、「訴訟リスクがあるので共同利用を進めるのは難しい」との意見もあった。病院団体を代表する委員は「急性期、救急を名乗る場合には自分の所で整備しなければいけない事情がある」と戸惑いを見せた。
これに対し、医療費を支払う立場の委員は「診療報酬上の対応でするのであれば、共同利用をする場合と、しない場合のメリハリを付けて充実と適正化を図っていくことが必要」とし、公立・公的病院に言及。「地域医療構想のように、もし公的・公立病院について何らかの対応ができるのであれば、そこを最優先してやっていくのも1つの手かなと思う」と述べた。
詳しくは、以下のとおり。
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
はい、ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、何かご質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。
では松本委員、お願いいたします。
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[松本吉郎委員(日本医師会常任理事)]
まず、18ページ目の論点でございますけれども、
点線内の課題に、「今後、より効率的な医療提供体制の構築に向け、医療機器の効率的な活用をさらに推進していく必要がある」との記載になっており、
まあ、診療報酬ではなく医療部会のマターのように見えてしまっておりますけれども、それはさておいて、
わが国において、CTやMRIは一般的な診断機器として普及をしており、超高齢社会において低侵襲、まあ、被ばくは除きますけれども、(低侵襲)で、高い診断能を有する機器として、有用性は極めて高いものです。
またこの、医療被ばくのことについても、20から21に触れられておりますけれども、やはりこれは、CT1回当たりの検査においてですね、やっぱり被ばく線量を少なくするような、やはり、いろんな仕組みをですね、しっかりと学会ベースとかですね、考えていただきたいなとは思います。
日本では、日常においてわずかな兆候でも、丁寧に診察することが行われており、胃がん、大腸がん、肺がんなど、世界的に見ても早期発見に優れております。
かかりつけ機能を有する診療所、有床診療所、中小病院に配置されることによって、高齢者に便利な、ワンストップサービスが可能であり、大病院でのより侵襲の高い検査を減らしているとも考えられます。
また、わが国ではですね、検査コストも低いので、費用対効果が高いというふうに思われます。
9ページ目の利用実績がない医療機関についてですけれども、何かの理由があると考えられますので、まずですね、この議論の前に、医療機関の販売実態を確認する必要があると考えております。
また、診療報酬改定では、毎回、より高機能の機器に高い点数が設定されてきております。このことが、かえって、より高い機器の導入をあおっているとの印象を強く持っております。
まず、共同利用を進めるべきは、重粒子線、陽子線などをはじめとした超高額医療機器であって、そちらを推進すべきというふうに考えております。
24ページ目の所ですが、CTなどの検査に伴う放射線被ばくについては、先ほど少し述べさせていただきました。
関連学会のガイドラインに沿ってですね、臨床上の必要性と検査が持つデメリットのバランスを見ながら検査を行うということには賛同いたします。
最後に、超音波検査ですけれども、患者さんへの侵襲も少なくて、臨床的な価値も高い検査であることから、通常診療で広く用いられております。
CTやMRIは専門医による読影が可能であって、より高い診断精度を確保することができます。
今後も、国民に必要な医療が提供されないようなことがないように留意しながら検討をすることが必要と考えています。以上です。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
ほか、いかがでございましょう。
では吉森委員、お願いいたします。
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[吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)]
はい、ありがとうございます。
今の18ページの「論点」で議論する前にですね、このCT、MRの共同利用をさらに進めていくっていう、これを「論点」にするんであれば、
やはり12ページのアンケートの結果とか、6ページ、7ページの諸外国との比較とか、各県の状況とかっていう、この資料提示だけではやはり、課題抽出、論点整理に対する材料が、ちょっとやはり乏しいんじゃないかっていうふうに思いますんで、
もう少し、その具体的、詳細的な材料提示、分析が必要じゃないかというふうに考えます。
そこで、1つ教えていただきたいのは、6ページ、7ページの国別CT、MRI使用状況。
これを拝見したときに、確かにアメリカは多いんですけれども、近年、検査数がそれぞれ人口当たりとか、1台当たりで減少傾向にあるんですけれども、この状況の理由っていうのは、何かつかんでいらっしゃいますか。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
では企画官、お願いいたします。
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[厚労省保険局医療課・古元重和企画官]
はい。国によりましては、伸びているところ、あとは減少傾向のところも幾つかございますが、その詳細な原因についてはですね、申し訳ございませんが、把握はしておりません。
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[吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)]
そのへんも今後、共同利用をすべきなのか、本当に、こういうトレンドが実態に合っているかってことも踏まえて、やはり、
先ほど松本委員(から)も(「診療報酬ではなく医療部会のマターのように見える」との意見が)ありましたけれども、CT、MRIの共同利用を推進するのか、もっと別の所でやるのかっていうのもあると思いますんで、ぜひそのへんをよろしくお願いしたいと思います。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
ほかはいかがでございましょう。
では幸野委員、お願いいたします。
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[幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)]
(前略) 医療機器の効率(的)な活用については、これは診療報酬でやるべきことと、
もう1つは16ページに書いてあるように、今は外来医療の協議の場で検討されようとしてるので、この2つにおいてやっていくべきだなというふうに思ってます。
で、1つ確認したいんですけど、この外来医療の協議の場で、共同利用を推進していくっていうことなんですが、
これ、地域ごとに、性、年齢別構成による調整人口当たりの台数指標を作成して、多い県、少ない県というのを見える化していくっていうことで、
それを基に、これから、協議の場、地域医療調整会議等でやっていくっていうことなんでけど、
これがどの程度、今は進捗してるのかっていうふうな、これ、医政局の所管になるかとは思うんですけど、お聞かせいただきたいのと。
あと、公的・公立病院については、地域医療構想、今、診療実績に応じて、ある程度、強制力を働かせるということも検討されているんですが、
この医療機器の共同利用については、公的・公立病院について何か強制力が発揮できるのかっていうふうなところをちょっとお教えいただきたいというふうに思います。
あと、診療報酬上の対応でするんであれば、平成28年度の改定で、一部、加算が行われましたが、やはり、共同利用する場合と、しない場合のメリハリを付けて充実と適正化を図っていくということで対応するのが必要じゃないかというふうに思います。以上です。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
では医療課長、お願いいたします。
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[厚労省保険局医療課・森光敬子課長]
はい。外来の医療に関わる医療提供体制のところで、16ページにありますガイドラインの話ですけれども、これ、3月にガイドラインが出ておりまして、今年の。
で、今年度は、県で、まず検討するということでございまして、来年、各病院との協議に入る、各病院の人が調整会議の協議に入るというふうに伺っております。
それから、公的病院に対する強制力ということでございますが、ちょっと、この機器の設置等に関してまで入るのかということに関しては、ちょっと私どものほうで情報を今は持っておりませんので、また、次回でも、ご説明をさせていただきたいというふうに思います。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
では幸野委員、どうぞ。
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[幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)]
地域医療構想のように、もし公的・公立病院について何らかの対応ができるんであれば、そこを最優先してやっていくのも1つの手かなと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
では猪口委員、お願いいたします。
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[猪口雄二委員(全日本病院協会会長)]
共同利用に関しまして、別に反対もしないし、進めるべきだと思ってるんですけれども、
1点、病院の立場で言わさせていただきますと、急性期とか救急をやってる病院に来る救急患者で、例えば、脳梗塞が疑われたときに、MRIで診断しないと薬が使い始められないとかですね、
例えば、腰痛、座骨神経痛で全く歩けない患者さんが来て、これもMRIでちゃんと見ないと、椎間板ヘルニアとか狭さく症の状態が分からない、
そういう動かせない患者さんが来たときって、やっぱり自分の所で、ある程度、診断、治療をやるためにはですね、どうしても、今や、もうCT、MRIがないと始まらないということも実情としてある。
それがゆえに、多少、無理してでも、やはり急性期、救急を名乗る場合には、自分の所で整備しなきゃいけないというような事情があるということを少し考慮していただかないとですね、
「共同利用が駄目」とか言ってるわけでは全然ないんですけれども、そういうことも事情があるということは理解していただきたいと思います。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
ほかはいかがでございましょう。
では城守委員、お願いいたします。
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[城守国斗委員(日本医師会常任理事)]
今、猪口先生がおっしゃられたことと同じになるわけですが、
基本的にですね、この共同利用ということに関して、その病院だけではなくて、診療所レベル等におきましても、やはり、このCT、MRIというものがですね、その診断力において、大変大きな意味を持ちますし、
で、それによってですね、初期の段階から、中小の診療所、ないしは病院で医療をしっかりと手当てできる(かどうか)ということが重症化につながってる部分もあると思います。
で、それとですね、もう1つ、これは診療報酬上の話等ではないわけですが、医療安全という点においてですね、やはりこの、検査をしていないがために医療トラブルになったりした場合がございます。
で、その場合はですね、やはりこれ、「してない」ということで、「CTを撮ってない」「MRIを撮ってない」ということで、訴訟的に駄目になるということが一般的でございます。
ですので、チュージング・ワイズリー(Choosing Wisely)というのは、非常に概念としてはいいわけですが、これは医療の不確実性というものがあるんだということを分かっている国民の方々の国と言いますかですね、そういう所では一定程度のいい効果を発揮すると思うんですが、
やはりこう、徹底的にですね、医療安全を求めるという現状、わが国においては、なかなか、まあその、CT、MRIというものをですね、現状から共同利用に持っていくというのは難しいのではないかなというふうに思いますので、
まあ、松本委員がおっしゃったように、いわゆるポジトロンとかですね、そういう重粒子線等、そういうものに限定して、まずは行っていくということがよかろうというふうに思います。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
では、ご質問等もないようでございますので、本件につきましては中医協として承認するということでよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。
それでは、説明のあった件につきましては、中医協として承認したいと存じます。
(後略)