「薬の業界は久しぶりに安堵できる年の瀬になったのではないか。ジェネリック(業界)を除けば・・・」
24年度診療報酬改定に伴う薬価制度改革について、自民党の厚生労働幹部議員はそんな感想を漏らす。新薬メーカーにとっては、イノベーションを評価するメニューが数多く並ぶことから、喜ばしい制度改革になったという意味だろう。【本根優】
医薬品業界と言えば、18年度の薬価制度抜本改革以降、6年連続の薬価改定が行われ、その度に薬価引き下げが財源確保の「調整弁」とされたため、痛手を被ってきた。しかし、再び起こったドラッグ・ラグ、そして日本に新薬が入ってこない「ドラッグ・ロス」の深刻さが増し、潮目が変わった。
厚労省も重い腰を上げ、イノベーション評価に対する充実方向の制度対応を図った。
例えば、新薬創出・適応外薬解消促進加算の企業指標に基づく加算額減額が廃止されることになった。また、既にある先駆加算に準じて、欧米に遅れることなく日本に革新的新薬を早期導入した品目の評価として「迅速導入加算」を新設。小児用医薬品への評価としては、新薬創出加算の対象への追加、成人と同時開発時の加算率引き上げに踏み切る。
製薬団体トップからは「ドラッグ・ラグ/ロスの解消に資する。日本への革新的新薬の早期導入に極めて大きな意義を持つ」「日本市場の魅力を世界と遜色なレベルに引き上げるための第一歩」と、相次いで歓迎のコメントが出された。
ただ、業界全体を見渡せば、後発品を中心とする、終わりの見えない「不安定供給問題」が横たわる。厚労省は、新薬創出加算の企業指標を廃止するのと対照的に、後発品に関しては企業指標を導入し、薬価上の評価も試行的に導入する。
だが、医薬品業界の関係者でさえも「大手3社のうち(不正発覚により)日医工がダメ、沢井(製薬)がダメという状況で、企業指標と言われても、業界がどう改善していくのか全くイメージが湧かない」と首を傾げる。
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